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映画「ロケットマン」公開記念!エルトン・ジョンとバーニー・トーピンの世界 その2

「黄昏のレンガ道」(Goodbye Yellow Brick Road,1973)を翻訳する上での最大のポイントはYellow Brick Roadとは何か?に尽きる。これが分らないとちんぷんかんぷんだろう。黄色いレンガ道は「オズの魔法使い」に出てくるので、最低限ジュディ・ガーランド主演のMGM映画を観ておくか、ライマン・フランク・ボームの原作小説を読んでいることが必須である。つまり、リスナーの教養が問われている。 アルバムの表紙でも明らか。

Yellow

ドロシーは南の良い魔女グリンダに"Follow the yellow brick road"と言われ、

Y1

その結果、オズの魔法使いが居るエメラルド・シティにたどり着く。

Y2

「黄昏のレンガ道」はエルトン・ジョンに愛想を尽かしたバーニー・トーピンが彼に三下り半を突きつける歌詞である。それをエルトンが歌っているのが何とも皮肉な話だ(後にふたりは和解する)。なおバーニーはイングランド東部にあるリンカンシャー州スリーフォード出身。田舎町である。一方、歌の中で(黄色いレンガ道の終着地)エメラルド・シティは虚飾の都・ロンドンの暗喩になっている。

"Goodbye Yellow Brick Road"

When are you gonna come down?
When are you going to land?
I should have stayed on the farm
I should have listened to my old man

いつ都会(ロンドン)を離れるんだ?
いつ田舎に戻る?
僕は農場に留まるべきだった
おやじの言うことを聞いておけばよかった

You know you can't hold me forever
I didn't sign up with you
I'm not a present for your friends to open
This boy's too young to be singing, the blues

ねえ、君は僕のことを永遠に繋ぎ留めることは出来ないよ
僕は君と契約していないし
君の友だちに包装紙を開かせるための贈り物でもない
この少年(僕)がブルースを歌うには若すぎる

So goodbye yellow brick road
Where the dogs of society howl
You can't plant me in your penthouse
I'm going back to my plough

だから黄色いレンガ道にサヨナラさ
社交界の犬が吠える
君は僕を高級マンションの植木(お飾り)には出来ない
僕は農場(耕作地)に帰る

Back to the howling old owl in the woods
Hunting the horny back toad
Oh I've finally decided my future lies
Beyond the yellow brick road

年老いたフクロウが鳴く森へ戻り
ツノガエルを捕まえるんだ
ああ、漸く決心がついた。僕の未来は
黄色いレンガ道の、さらにその先にあるんだ

What do you think you'll do then?
I bet that'll shoot down your plane
It'll take you a couple of vodka and tonics
To set you on your feet again

それで君はこれからどうするつもり?
賭けてもいいが、君の自家用飛行機は撃ち落とされるね
ウォッカのソーダ割りが二杯必要になるさ
君が再び立ち直るためにはね

Maybe you'll get a replacement
There's plenty like me to be found
Mongrels who ain't got a penny
Sniffing for tidbits like you on the ground

多分君は代わりの人間(作詞家)を見つけるさ
探せば僕みたいなのはごまんといる
一文無しの野良犬たちが
君みたいな餌が地べたに転がっていないか嗅ぎ回っているからね

(以下繰り返し)

So goodbye yellow brick road
Where the dogs of society howl
You can't plant me in your penthouse
I'm going back to my plough

Back to the howling old owl in the woods
Hunting the horny back toad
Oh I've finally decided my future lies
Beyond the yellow brick road

強烈な歌詞である。

次に映画「ロケットマン」には登場しないが、バーニー・トーピンの傑作中の傑作をご紹介したい。これは衝撃的。"Ticking"、日本語タイトルは「母さんの言葉」1974年の作品だ。

ローリング・ストーン誌の読者が選んだ、「エルトン・ジョンの隠れた名曲ベスト10」で第2位に輝いた(第1位は「モナ・リザ・アンド・マッド・ハッター」)。14人の死者を出したニューヨーク・クイーンズ区のバーで起こった銃乱射事件を題材にした意欲作である。現在まで続くアメリカの病理に大胆に切り込んでいる。

"Ticking"

"An extremely quiet child" they called you in your school report
"He's always taken interest in the subjects that he's taught"
So what was it that brought the squad car screaming up your drive
To notify your parents of the manner in which you died

「極めて静かな子どもだった」と君の学校の報告書に書かれている
「彼は常に教えられた教科に興味を示した」
だからパトカーがサイレンを鳴らしながら君の家(の私道)に駆けつけ
君がどんな風に死んだか両親に知らせたあれは、一体何だったのか?

At St. Patrick's every Sunday, Father Fletcher heard your sins
"Oh, he's unconcerned with competition he never cares to win"
But blood stained a young hand that never held a gun
And his parents never thought of him as their troubled son

セント・パトリックで毎日曜日、フレッチャー神父は君の懺悔を聞いた
「ああ、彼は競争に関わらない。勝つことに全く興味がないのです」
しかし、それまで銃を持ったことがなかった若者の手は血で染まった
両親は決して彼を問題を起こすような息子だと考えたことがなかった

"Now you'll never get to Heaven" Mama said
Remember Mama said
Ticking, ticking
"Grow up straight and true blue
Run along to bed"
Hear it, hear it, ticking, ticking

「そんなことじゃ天国へ行けないよ」と母さんは言った
母さんが言ったことを思い出して
「真っ直ぐ育って志操堅固な人におなり
さぁ、さっさとベッドに行っておやすみ」
お聞き、お聞き。チクタク、チクタク

They had you holed up in a downtown bar screaming for a priest
Some gook said "His brain's just snapped" then someone called the police
You'd knifed a Negro waiter who had tried to calm you down
Oh you'd pulled a gun and told them all to lay still on the ground

君は繁華街のバーに引きこもり、神父を求めて叫んだ
ある東洋人が言った「彼の脳みそはパチンとはじけ飛んだ」そして誰かが警察を呼んだ
君のことを落ち着かせようとした黒人ウェイターを君はナイフで刺した
ああ君は銃を引っ張り出し、彼ら全員に地面に伏せるよう指図した

Promising to hurt no one, providing they were still
A young man tried to make a break, with tear-filled eyes you killed
That gun butt felt so smooth and warm cradled in your palm
Oh your childhood cried out in your head "they mean to do you harm"

もしじっと動かなければ、誰も傷つけないからと約束した
逃走を図った若者を、目に涙をいっぱい浮かべながら君は殺した
君の手のひらにそっと包まれた銃床は滑らかで暖かく感じられた
君の幼年期は頭の中で叫んだ「僕は悪くない、彼らが僕を傷つけようとしたんだ」

"Don't ever ride on the devil's knee" Mama said
Remember mama said
Ticking, ticking
"Pay your penance well, my child
Fear where angels tread"

「悪魔の膝に乗っちゃ駄目よ」母さんは言った
母さんが言ったことを思い出して
チクタク、チクタク
「しっかり神様に懺悔なさい、私の坊や
天使が足を踏み入れる場所を恐れなさい」

Hear it, hear it, ticking, ticking

お聞き、お聞き。チクタク、チクタク

Within an hour the news had reached the media machine
A male Caucasian with a gun had gone berserk in Queens
The area had been sealed off, the kids sent home from school
Fourteen people lying dead in a bar they called the Kicking Mule

1時間以内にそのニュースはマスコミに伝わった
銃を持った白人男性がクイーンズで暴れている
その地区は封鎖され、子どもたちは学校から帰宅させられた
「ラバの蹴り」と呼ばれるバーで14人の遺体が転がっている

Oh they pleaded to your sanity for the sake of those inside
"Throw out your gun, walk out slow just keep your hands held high"
But they pumped you full of rifle shells as you stepped out the door
Oh you danced in death like a marionette on the vengeance of the law

警官はバーの店内に残っている人達のために、君の正気に訴えた
「銃を捨てなさい。両手を高く上げてゆっくり歩いて出てきなさい」
でも君がドアから歩み出ると、彼らは一斉にライフル銃全弾を浴びせた
ああ君は法のもとに復讐され、操り人形のように死の舞踏を踊った

"You've slept too long in silence" Mama said
Remember Mama said
Ticking, ticking
"Crazy boy, you'll only wind up with strange notions in your head"
Hear it, hear it, ticking, ticking

「お前は長い間静かに眠りすぎたのよ」母さんは言った
母さんが言ったことを思い出して
チクタク、チクタク
「困った子。お前の頭はおかしな考えに取り憑かれてしまっただけなの」
お聞き、お聞き。チクタク、チクタク

Kicking Muleは直訳すると「ラバの蹴り」。キックはカクテルのアルコール度数の強烈さを表す表現。 「キックがある」「キックが強い」とはアルコール度数の高い強烈なカクテルである、という意味。アルコール抜きで作ることを「ウィズアウト・キック」とも言う。モスコー・ミュール(モスクワのラバ)はウォッカによるキックの強烈さをラバの蹴りに例えてつけられた。

なお、ローリング・ストーン誌で第1位になった「モナ・リザ・アンド・マッド・ハッター」もニューヨークの闇を描いており、Mona Lisaは微笑まない美人、Mad Hatter(気が触れた帽子屋)は「不思議の国のアリス」の登場人物だが、ここではドラッグ売人のスラング。歌詞の中に出てくる「スパニッシュ・ハーレム」はBen.E.Kingの名曲"Spanish Harlem"に触発されている。

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