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映画「ロケットマン」公開記念!エルトン・ジョンとバーニー・トーピンの世界 その1

エルトン・ジョンの半生を描く映画「ロケットマン」が間もなく公開される。監督は「ボヘミアン・ラプソディ」でブライアン・シンガーが撮影現場に来なくなり、その後を引き継いだデクスター・フレッチャー。「ボヘミアン」でクイーンの音楽はライヴやレコーディング・シーンに流れるが、「ロケットマン」ではエルトンのまわりの人も歌って踊り出すミュージカル映画仕立てになっている。

Rocketman

昨年は大阪桐蔭高等学校吹奏楽部(指揮:梅田隆司先生)が演奏するクイーン・メドレーが話題を席巻した(映画「ボヘミアン・ラプソディ」公式MVになった)。

今後、エルトン・ジョンの曲を演奏する吹奏楽団も沢山あるだろう。

今回ご紹介したいのはエルトンと組み数々の歌を作詞したバーニー・トーピンだ。ふたりが出会ったのは1967年7月。エルトンが20歳、バーニーは17歳だった。そして間もなく名曲「僕の歌は君の歌」(Your Song)が生まれた。エルトンはゲイ(LGBT)だが、バーニーはストレート(ノン気/異性愛者)である。

しかし残念なことにトーピンの詞のまともな日本語訳が殆ど無い。意味不明。これは長年に渡りエルトン・ジョンのアルバムのライナーノーツを書いてきた今野雄二(映画・音楽評論家。2010年に自宅で首吊り自殺した)の責任でもあるだろう。そこで僕なりに、きちんと意味が通るよう訳し直してみた。何かの参考になれば幸いである。まずは映画のタイトル曲から。

「ロケットマン」

She packed my bags last night pre-flight
Zero hour nine a.m.
And I'm gonna be high as a kite by then
I miss the earth so much I miss my wife
It's lonely out in space
On such a timeless flight

昨夜、飛び立つ前に妻は荷造りしてくれた
ロケット発射時刻は午前9時きっかり
その頃、僕は凧みたいに上空に舞い上がっているだろう
地球がとても恋しい、妻にも会いたい
宇宙ではひとりぼっち
こんな終わりのないフライトでは

And I think it's gonna be a long long time
Till touch down brings me round again to find
I'm not the man they think I am at home
Oh no no no I'm a rocket man
Rocket man burning out his fuse up here alone

まだずっと、ずっと先のことだけど
着陸して無事帰宅すれば
地球にいた頃の僕とは別人だって判るさ
いやいや全然違うさ、僕は宇宙飛行士
ヒューズは燃え尽き宇宙飛行士はひとりぼっちで虚空を漂っている

Mars ain't the kind of place to raise your kids
In fact it's cold as hell
And there's no one there to raise them if you did
And all this science I don't understand
It's just my job five days a week
A rocket man, a rocket man

火星は子供を育てるような場所じゃない
実際、地獄のように寒い
もし育てようとしたって上手くいかない
科学のことなんか全く判らない
僕は週5日仕事をこなす
宇宙飛行士、宇宙飛行士なのさ

And I think it's gonna be a long long time...

一番問題となるポイントは"Rocket man burning out his fuse up here alone"である。つまり、ロケットは停電し機能停止状態になり、宇宙飛行士は漆黒の闇を一人あてどなく漂っている。無事地球に帰還出来る望みは薄い。絶望的状況。ただ彼が船内に留まっているのか、船外に放り出されたのかははっきりしない。映画「ゼロ・グラビティ」(2013)でサンドラ・ブロックが陥った状態に近いと言えるのではないだろうか。

続いて「僕を救ったプリマドンナ」(Someone Saved My Life Tonight )に行ってみよう。そもそも邦題から間違っている。無茶苦茶だ。「今宵、誰かが僕の命を(プリマドンナから)救った」のであり、その誰かとは〈シュガーベア〉という渾名を持つ髭面のブルース歌手、ロング・ジョン・ボルドリーだ。エルトンは下積み時代にロング・ジョンの後ろで演奏していた。〈プリマドンナ〉とは当時まだ音楽家として食えなかった彼がロンドン・イーストエンドのアパートをシェアして住んでいたリンダという3歳年上の女性で、偽装結婚しなければならないと思い詰めていたエルトンは彼女と婚約していた(当時イギリスでゲイであることは罪であり、逮捕されたり投薬による矯正治療を強いられた。詳しくは映画「イミテーション・ゲーム」を参照されたし)。〈女王様(気取り)〉もリンダを指す。そんな彼にロング・ジョンは「自分を偽るな。そんなことをしたらミュージシャンとしても駄目になる」とバーで説得した。この頃、エルトンは自殺未遂もしたそうだ。ゲイの作曲家チャイコフスキーが追い込まれた精神状態に似ている。

"Someone Saved My Life Tonight"

When I think of those east end lights, muggy nights
The curtains drawn in the little room downstairs
Prima donna lord you really should have been there
Sitting like a princess perched in her electric chair
And it’s one more beer and I don’t hear you anymore
We’ve all gone crazy lately
My friends out there rolling round the basement floor

イーストエンドの街の灯、蒸し暑い夜を思う
階下の小部屋のカーテンは閉じていた
気難しいプリマドンナ様、君はそこにいるんだろ
光瞬く電飾の椅子にお姫様みたいにお高くとまって
ビールをもう一杯飲んだら、僕はもう君の言葉が耳に入らない
僕らは最近、どうかしていた
僕の友達は地下の床を転がっている
(恐らく地下のバーで酔いつぶれているシュガーベアたちのこと)

And someone saved my life tonight sugar bear
You almost had your hooks in me didn’t you dear
You nearly had me roped and tied
Altar-bound, hypnotized
Sweet freedom whispered in my ear
You’re a butterfly
And butterflies are free to fly
Fly away, high away, bye bye

今夜、ある人が僕の命を救ってくれた。シュガーベアのことさ
君は僕をフックに引っ掛けたままにしたね
僕をロープで縛り付け
結婚式の祭壇に拘束し、催眠術をかけた
ところが僕の耳に甘美な自由が囁かれた
「君は蝶々だ
蝶々は自由に飛び
高く舞い上がり、飛び去る。じゃぁね、バイバイ」

I never realised the passing hours of evening showers
A slip noose hanging in my darkest dreams
I’m strangled by your haunted social scene
Just a pawn out-played by a dominating queen
It’s four o’clock in the morning
Damn it listen to me good
I’m sleeping with myself tonight
Saved in time, thank God my music’s still alive

昨日の夕立には気付かなかった
漆黒の夢の中で、ロープで作られた首吊用の輪がぶら下がっていた
君が言う忌まわしい世間体のために絞め殺される寸前だった
僕は支配者然と振る舞う女王様に操られるチェスの駒に過ぎなかった
今は朝の4時
畜生!いいか、僕の言うことをよく聞け
今日は僕一人で寝る
すんでのところで救われた。神よ感謝します、僕の音楽はまだ生きている

And I would have walked head on into the deep end of the river
Clinging to your stocks and bonds
Paying your h.p. demands forever
They’re coming in the morning with a truck to take me home
Someone saved my life tonight, someone saved my life tonight
Someone saved my life tonight, someone saved my life tonight
Someone saved my life tonight
So save your strength and run the field you play alone

僕は川の深みに足を取られ、頭まで水に浸かる(溺死する)ところだった
君の株や債権にがんじがらめにされ
君のローンを永遠に払い続けさせられて
でも朝になれば家族がトラックで迎えに来て僕を実家に連れ帰ってくれる
今夜、ある人が僕の命を救ってくれた
だから君はこれからも横暴なまま、一人で好き勝手に振る舞えばいいさ

(h.p. demandsとは【Hire Purchase:分割払い式購入】の請求)

なお、「ライオンキング」やディズニー版「アイーダ」(舞台)などのミュージカルでエルトン・ジョンと組んだ作詞家は「ジーザス・クライスト・スーパースター」「エビータ」のティム・ライスである。

To Be Continued...

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