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2019年7月19日 (金)

新海誠監督「天気の子」は反キリスト映画である。(速攻レビュー)

評価:AAA

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7月19日午前9時、「天気の子」公開初日全国一斉初回上映を鑑賞。今更僕が言うまでもないことだが、文句なし、大傑作である。今度こそ、米アカデミー外国語映画賞を受賞出来るんじゃないかな?「トイ・ストーリー4」なんか目じゃないね。世界へはばたけ!「天気の子」。

ただ、これほどダークな世界観だなんて、想像以上だった。そういう意味で賛否は真っ二つに分かれるだろう。正に世も末、末法である。

「君の名は。」ではキラキラと光り輝く東京が描かれていたが、一転して「天気の子」では大都会の深い闇が描かれる。「ブレードランナー」のように。カメラの目はどんどん東京の路地に潜り込んでゆく。

絶望的な世界だけれど大丈夫、なんとかなるさ、きみさえいれば。と、そっと背中を押してくれる映画である。

新海誠はぶれない。〈きみとぼく〉の関係性が、〈世界の危機〉〈この世の終わり〉に直結しているセカイ系構造は処女作「ほしのこえ」から「天気の子」まで一貫して不変である。しかし、ぐんぐん深化している。

本作の主題を一言で表現するなら〈自己犠牲の否定〉であろう。誰かの犠牲の上でしか成り立たない世界なんか要らない、と新海は高らかに宣言する。実に小気味好い。

そもそもキリスト教はイエスの自己犠牲に立脚した宗教である。その象徴が十字架だ。欧米文化において自己犠牲のテーマは繰り返したち現れた。例えばアンドレ・ジッドの小説「狭き門」、そしてワーグナーのオペラ「さまよえるオランダ人」。僕が大嫌いなラース・フォン・トリアー監督の映画「奇跡の海」(カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリ受賞)もそう。我が国に於いても大巨匠・宮崎駿の「風の谷のナウシカ」や「天空の城ラピュタ」だって、基本的に自己犠牲の物語である。結果的にナウシカやパズー、シータは助かるが、それはたまたま。子どもたちの為の漫画映画だから取って付けたようなハッピー・エンドに無理矢理しているわけで、所詮大人の事情である。ナウシカ、パズー、シータは死を覚悟していたのだから。彼らに対して「天気の子」の帆高は全身全霊No!を突きつける。そこが新しい。正に21世紀の映画である。

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