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2019年6月14日 (金)

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(うんちくあり)

評価:B+

公式サイトはこちら

まずは映画レビューを集計する北米のサイトRotten Tomatoes(腐ったトマト)をご覧頂きたい。

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プロの評論家の肯定的意見が40%しかなく、「腐った(Rotten)」評価を与えられているが、一般観客の評価は85%と極めて高い。これだけ両者で差異が出ることは希少である(「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」の場合、評論家の評価が91%で「新鮮(Fresh)」、一般客が44%で真逆の結果になっている)。

プロット・脚本に疵があることは確かである。「どうしてそうなるの?」と登場人物たちの行動原理に首を傾げてしまう場面も多々ある。しかし本作の主眼はあくまで〈怪獣プロレス〉〈怪獣バトル〉であり、はっきり言ってしまえば人間ドラマなんて二の次だ(どうでもいい)。日本では到底成しえないVXF技術の効果も抜群で、当初の目的は見事に達成出来ていると言えるだろう。そもそも本家・東宝のゴジラ・シリーズですら、1954年の第1作は掛け値なしの傑作だが、キングギドラのデビュー作「三大怪獣 地球最大の決戦」(64)だって、「怪獣大戦争」(65)だって、本多猪四郎(監督)×円谷英二(特技監督)のコンビは変わらないものの、脚本はグダグダである。

本作に於けるゴジラ・モスラ・ラドン・キングギドラの大乱闘には童心に帰ってワクワクさせられた。怪獣たちは神々しいまでに美しい。マイケル・ドハティ監督の怪獣愛が作品から滲み出ており、どうしても評価に下駄を履かせざるを得ない。伊福部昭のテーマは勿論のこと、古関裕而が作曲し、ザ・ピーナッツが歌った「モスラの歌」まで流れてきたのには心底びっくりした。おまけに(何の意味もなく)チャン・ツィイーが双子という設定になっているではないか!!さらに第1作へのオマージュとしてオキシジェン・デストロイヤーは登場するし、芹沢博士(渡辺謙)はあんなこと(←ネタバレ回避)するしで、いやはや参りました。あとラドンが飛び立つところで、ラドンの影が街並みを横切る場面は「(怪獣オタクの心を)わかってるぅ〜」と嬉しくなった。

ここでうんちくを傾けておくと、「モスラ」の原作小説「発光妖精とモスラ」を執筆したのは中村真一郎・福永武彦・堀田善衛という錚々たる文学者たちである。福永の息子が芥川賞作家の池澤夏樹。蛾を意味する英語のMothを名称に取り入れた。元祖ラドンは阿蘇山の火口に生息しており、朱雀(火の鳥)のイメージが重ねられていると思われる。

またキングギドラの原型は「古事記」「日本書紀」に記載されたヤマタノオロチ(八岐大蛇である。円谷英二は八岐大蛇が登場する「日本誕生」(1959)で培った技術をキングギドラ開発に投入した。そして庵野秀明(総監督・脚本)による 「シン・ゴジラ」で決行されたヤシオリ作戦は、スサノオ(須佐之男)が八岐大蛇を退治する際に酔わせるために用いた酒「八塩折之酒(やしおりのさけ)」に由来する。

モンスターやSF映画にはしばしばマッドサイエンティスト mad scientist(常軌を逸した科学者)が登場する。その原型であり、最も有名なのはメアリー・シェリーの小説「フランケンシュタイン」のヴィクター・フランケンシュタインだろう。他に「博士の異常な愛情」のストレンジラブ博士、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のエメット・ブラウン博士(通称ドク)がいる。「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」にもマッドサイエンティストが登場するのだが、極めてユニークなのは女性だということである。これは僕が知る限り、映画史上初なのではなかろうか?新機軸を打ち出したと言っても過言ではなかろう。

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