魂のゆくえ
評価:B
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マーティン・スコセッシが監督した映画「タクシードライバー」の脚本家として知られるポール・シュレイダーの脚本・監督作品。アカデミー脚本賞(オリジナル)にノミネートされた。構想を50年間温めていたのだそうである。原題は"First Reformed"。物語の舞台となる創立250周年を迎える教会の名前である。アメリカの独立宣言が1776年だから、それ以前ということになる。
結論から先に述べる。(「タクシードライバー」+「冬の光」)÷2=「魂のゆくえ」 以上。
以下「魂のゆくえ」↔イングマール・ベルイマン監督「冬の光」(1962年)との類似点を列挙しよう。
- シュレイダーは厳格なカルヴァン主義(プロテスタント改革派教会Reformed Churchの教理)を実践する家庭で育ち、カルヴァン大学に進学した。彼は17歳になるまで映画を観ることを許されなかった。↔ベルイマンの父は厳格な牧師だった。彼は父への反発心から〈神の沈黙〉三部作を撮った。
- 映画の主人公は牧師である。【両者完全一致】
- 主人公はある日、礼拝の後で信者の女性から「夫が悩んでいる(ノイローゼ気味)なので相談に乗って欲しい」と話しかけられる。彼女は妊娠している。【両者完全一致】
- 「魂のゆくえ」の信者(夫)は地球温暖化が進む未来に絶望している(生まれてくる子供が可愛そうだ)。↔「冬の光」の信者(夫)は中国が核兵器を開発していることに絶望している(核戦争の恐怖)。
- ある日、信者(夫)は森で猟銃自殺する。【両者完全一致】
というわけで、余りにも「冬の光」そっくりなのでびっくりした。パクリというか、原作:イングマール・ベルイマンと表記しなければ、倫理上許されないレベルである。
次に過去作「タクシードライバー」(1976)との共通点を列記する。
- 主人公は孤独である。
- 「タクシードライバー」のトラヴィスはベトナム戦争帰りの元海兵隊員で心を病んでいる。↔「魂のゆくえ」の牧師は息子を従軍牧師として入隊させ、イラク戦争で戦死させてしまい、その罪悪感に苛まれている。
- 主人公は別れた妻が現在働いている職場にテロを仕掛けるが、未遂に終わる。【両者完全一致】
いやはやである。
結局、オリジナリティー0の本作を高く評価する映画評論家やアカデミー会員たちは、そもそもベルイマンの「冬の光」を観ていないんじゃないか?彼らの無知蒙昧には呆れ果てるしかない。映画のいろはでしょ?
「魂のゆくえ」を観ながら思ったのは、演出家としてスコセッシの方が一枚も二枚も上手だなということ。そして「監督」ポール・シュレイダーの最高傑作は、やはり緒形拳が三島由紀夫を演じた「Mishima」(日本未公開!)であろう。これは文句なしに素晴らしい。
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