アカデミー賞を30年後退させた映画「グリーンブック」!
評価:A-
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「グリーンブック」の作品賞受賞に「ブラック・クランズマン」のスパイク・リー監督が激怒し、アカデミー賞授賞式の会場から退席しようとしたのも宜なるかな。やはり作品賞を受賞した1989年の映画「ドライビング Miss デイジー」を彷彿とさせる仕様になっている。Netflix憎さのあまり、アカデミー賞は30年後退した。
非常に良く出来た、well-made movieではある。しかし〈とりたてて欠点がないところが欠点〉とも言える。つまり作家性・個性がない。「ドライビング Miss デイジー」は黒人運転手と白人の老婦人との友情を描く作品だが、「グリーンブック」はその白人と黒人の役回りを変換しただけ。そこにロードムービーのエッセンスを加味しているが、それも「手錠のまゝの脱獄」(1958)や「ペーパー・ムーン」(1973)が描いた世界の範疇から一歩も出るものではない。さらに最後は〈クリスマスの奇跡〉みたいな雰囲気で終わるのだが、まるでフランク・キャプラの「素晴らしき哉、人生!」(1946)そっくりなのである。つまりオーソドックス、old-fashionedなのだ。こんな代物にオスカー与えちゃあかんわ。脚本家と監督が白人というのも何だかなぁ。胡散臭いんよ。
2年前の「ムーンライト」に続いて2回目のアカデミー助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリ(アフリカ系アメリカ人)よりも、運転主役ヴィゴ・モーテンセンの方が良かった。「ロード・オブ・ザ・リング」のアラゴルンと同一人物だとは到底思えない。
あと本作はジャズピアニストであるドン・シャーリーの実話が元になっているが、映画を観ながら僕が想い出したのはナット・キング・コールのことだった。彼も「ナット・キング・コール・トリオ」を結成していたし、劇中にコールが南部で受けた差別について言及され、最後には彼が歌う"The Christmas Song"が流れるといった具合。因みにコールの歌う"The Christmas Song"はイルミネーションのアニメ「グリンチ」のラストシーンにも登場した。
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