2019年 アカデミー賞大予想!
恒例の第91回アカデミー賞受賞予想である。相当自信がある(鉄板)部門には◎を付けた。
- 作品賞:ROMA/ローマ
- 監督賞:アルフォンソ・キュアロン(ROMA/ローマ)◎
- 主演女優賞:グレン・クローズ(天才作家の妻 40年目の真実)
- 主演男優賞:ラミ・マレック(ボヘミアン・ラプソディ)◎
- 助演女優賞:レジーナ・キング(ビール・ストリートの恋人たち)
- 助演男優賞:マハーシャラ・アリ(グリーンブック)◎
- 脚本賞(オリジナル):女王陛下のお気に入り
- 脚色賞(原作あり):ブラック・クランズマン◎
- 視覚効果賞:ファースト・マン
- 美術賞:女王陛下のお気に入り
- 衣装デザイン賞:サンディ・パウエル(女王陛下のお気に入り)◎
- 撮影賞:アルフォンソ・キュアロン(ROMA/ローマ)
- 長編ドキュメンタリー賞:Free Solo
- 短編ドキュメンタリー:Black Sheep
- 編集賞:ボヘミアン・ラプソディ
- 外国語映画賞:ROMA/ローマ◎
- 音響編集賞(Sound Editing):ファースト・マン
- 録音賞(Sound Mixing):ボヘミアン・ラプソディ◎
- メイクアップ賞: バイス◎
- 作曲賞:ルドウィグ・ゴランソン(ブラックパンサー)
- 歌曲賞:Shallow(アリー/スター誕生)◎
- 長編アニメーション賞:スパイダーマン:スパイダーバース◎
- 短編アニメーション賞:Bao
- 短編実写映画賞:マルグリット
今年のアカデミー賞授賞式最大の課題となるのは、ズバリ〈Diversity(多様性)〉である。異物(非白人,LGBT, ect.)を排除する時代は終わった。どこまでお互いの違い(肌の色、性癖、宗教、価値観)を認め合えるのか?それは今のアメリカ合衆国が真剣に向き合わなければならないテーマでもある。
だから作品賞を、今更「ドライビング Miss デイジー」(1989)もどきの、「グリーンブック」が獲っちゃ絶対にいけないのだ。我々はもっと先に進まなければならない。今年与えられるべき作品は「ROMA/ローマ」か、「ブラックパンサー」しかない。
メキシコ映画「ROMA/ローマ」の受賞は新時代の夜明けを告げることになる。
- 外国語の映画が作品賞を受賞するのは史上初
(「アーティスト」はフランス映画だがほぼ無声。最後に英語で喋る) - 外国語映画賞と作品賞のダブル受賞は史上初
- 配信系(Netflix)作品の受賞も史上初
つまり「ROMA/ローマ」受賞はアカデミー賞が英語圏の映画人たちのためだけの祭典ではなくなったことを高らかに宣言し、同時に「映画を映画館で観る時代の終焉」を告げるものとなる。それだけの覚悟がアカデミー会員にあるのか、しっかりと見届けたい。
「ROMA/ローマ」がオスカーを攫うと、直ちにその影響はカンヌ国際映画祭に波及することになる。フランスでは、劇場公開された作品は公開から3年経たなければストリーミング配信できないという独自のルールがあり、Netflixのコンペ参加を拒んできた。しかし今後、名監督が次々とNetflixで撮り、他の映画祭を席巻する状況になれば、相対的にカンヌのコンペに参加する作品の質が低下するという事態に直面することになる。時代の潮流を押し止めることは出来ない。遅かれ早かれカンヌは必ず、Netflixに門戸を開かざるを得ない状況に追い込まれる。勝敗は決した。
実は今年、一番注目すべき部門は美術賞と衣装デザイン賞なのである。いずれも「女王陛下のお気に入り」と「ブラックパンサー」が拮抗しており、どちらに転ぶか分からない状況なのだ。アメリカ人は昔からヨーロッパ文化に対して強い劣等感を抱えており、アカデミー会員はコスチューム・プレイに弱い。「恐れ入りました、歴史の浅い我々には到底敵いません」と萎縮し、容易に平伏しちゃうんだよね。だから従来の法則に従えば「女王陛下のお気に入り」が圧倒的に有利な筈なのだけど、もし「ブラックパンサー」が受賞したら、これは画期的事件だ。
主演女優賞は個人的にレディ・ガガにあげたい。しかしグレン・クローズは7回目のノミネートで未だ無冠だし、現在71歳なので多分これが最後のチャンス。だから功労賞として彼女にオスカーは行くだろう。ポール・ニューマンが「ハスラー2」で、アル・パチーノが「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」で主演男優賞を受賞したときと同じ。誰にあげるか(人)が重要であり、(受賞)対象作品自体に意味はないのだ。「天才作家の妻 40年目の真実」を観たけれど、正直僕は彼女の演技を卓越したものだとは思わなかった。通常運転レベルかな。それより彼女主演のミュージカル映画「サンセット大通り」の企画は現在も生きているのかどうかを知りたい。
それから僕は「ボヘミアン・ラプソディ」におけるラミ・マレックの演技が大嫌いだ。あの口に綿を含んだような喋り方が我慢ならない。お前は「ゴットファーザー」のマーロン・ブランドか!?本当は「バイス」のクリスチャン・ベールに獲って欲しい。
演技部門でもし波乱があるとしたら、助演女優賞のレイチェル・ワイズ(女王陛下のお気に入り)くらいかな。
撮影賞は「ROMA/ローマ」か、ポーランド映画「COLD WAR あの歌、2つの心」。
編集賞は「ボヘミアン・ラフソディ」か「バイス」のどちらか。
「ボヘミアン・ラプソディ」は勢いがあるので、もしかしたら音響編集賞と録音賞の両方獲っちゃうかも。でも「ファースト・マン」の〈音〉の演出は圧巻だった。
実は今回の予想で最大の博打は視覚効果賞である。当初は「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」にしていたが、昨日「ファースト・マン」を観て、土壇場でこちらに変更した。はっきり言って「ファースト・マン」の特撮は地味で、素人の僕たちにはその凄さがよく分からない。ところが2015年の大波乱のことを想い出したのである。「スター・ウォーズ フォースの覚醒」を押しのけて、地味な「エクス・マキナ」が受賞した。これは当てた人は世界的に見てもほぼ皆無だった。どうもアカデミー会員はCGを多用する作品を評価しない傾向にある。だから、巨大なLEDフロントスクリーンを背景に宇宙を合成するなどアナログ的手法を用いた「ファースト・マン」の方が好印象なのでは?と考えたのである。この無謀な選択が、吉と出るか凶と出るかは神のみぞ知る。
しかしこれで「グリーンブック」が作品賞を受賞したら、最悪だな……。
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コメント
こんにちは、ご無沙汰してます!
お疲れ様でした!
雅哉さんとしては珍しく波乱の作品賞でしたね。
でも◎ついてなかった所はさすがです‼️
Queenは学生時代からのコアなファンで、初回観た時は『違う』と思ってしまったのですが、それはついついノンフィクションと混同してしまった事と、ファン故のFreddieのイメージの違いでした。(ラミもよく演じたと思いますが、あの癖は確かに気になります(p_-))
LIVEAIDの編集技術は驚愕に値し、実映像との切り替えは最後まで謎でしたが、この映画のentertaiment 性に引き込まれて8回ほど参戦してしまいました。
投稿: jupiter_mimi | 2019年2月25日 (月) 13時56分
jupiterさん、お久しぶりです。
嘗て好敵手と考えていた人たちが次々とブログ更新を止めてしまい、近頃は張り合いがなく寂しい限りです。
上にも書きましたが、僕はラミ・マレックの喋り方に生理的嫌悪感を覚えます。勿論、フレディ・マーキュリーは好きですよ。QueenのライヴBlu-rayも持っています。
で授賞式会場でラミの隣に「ボヘミアン・ラプソディ」でフレディの恋人を演じたルーシー・ボイントンが座っていて、僕は彼女が凄く美人だなと好感を持っているのですが(「ライ麦畑の反逆児/ひとりぼっちのサリンジャー」の彼女も良かったです)、主演男優賞でラミの名前が呼ばれると、彼奴(きゃつ)がルーシーに長々とキスをしたので「何だこいつ!図々しい」とムカつきました。後で調べてみると二人はプライベートでも恋人だったんですね。ますますラミが嫌いになりました。
投稿: 雅哉 | 2019年2月26日 (火) 12時29分