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2019年2月27日 (水)

"Do the right thing !" - 検証 オスカー2019、宴のあと

心底がっかりした。「グリーンブック」の第91回アカデミー作品賞受賞は「ドライビング Miss デイジー」(1989)時代への逆戻りだ。この愚行に対して「ブラック・クランズマン」のスパイク・リー監督が激怒した(記事はこちら)!!当然だ。1989年は彼の最高傑作「ドゥ・ザ・ライト・シング」が公開された年。スパイク・リーは脚本賞にノミネートされるも受賞を逃し、しかも作品賞・監督賞にはノミネートすらされなかった。監督賞にはズラリ、白人の名前ばかりが並んだ。本来なら作品賞も監督賞も「ドゥ・ザ・ライト・シング」が受賞すべきだった。監督賞にノミネートされなかった映画が作品賞を受賞するという今年の珍事も「ドライビング Miss デイジー」という悪夢の再現である

答え合わせをしよう。僕の予想で的中したのは監督・助演女優・主演男優・助演男優・脚色・視覚効果・撮影・長編ドキュメンタリー・編集・外国語映画・録音・メイクアップ・作曲・歌曲・長編アニメーション・短編アニメーションの計16部門。過去最多的中数は20部門なので、トホホな結果となった。

そこで他の人がどれくらい当たったか調べてみた。映画評論家・清水節氏の的中が14部門、TBSラジオ「アフター6ジャンクション」 #アトロク #utamaru に出演している、アカデミー賞予想がライフワークというメラニーさんが15部門、総合映画情報サイト オスカーユクエさんがたった11部門だったので、意外にもまずまずの成績かな。読者の皆さん、僕より沢山予想が的中した日本人がもしいたら、是非ご教示ください。

さて、「女王陛下のお気に入り」が本命と思われていた衣装デザイン・美術・脚本の各賞で受賞を逃したので、「ははん、今年はイギリス勢にオスカーを与えないつもりだな」と思っていたらまさかの終盤、主演女優賞でオリヴィア・コールマンの名が告げられたので「ここかよ!」と驚愕した。会場もそんな雰囲気だった。グレン・クローズが可哀想。果たして彼女にもう一度、チャンスは訪れるのか!?もしミュージカル映画「サンセット大通り」が実現すれば、可能性は高いと思うのだが……。

映画評論家・町山智浩氏をはじめとして多くの人が「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」を本命に挙げていた視覚効果賞で「ファースト・マン」を当てた時は鼻高々だった。しかし落とし穴は作品賞で待ち構えていた。

今から3年前、第88回アカデミー賞で俳優部門にノミネートされた20人が全て白人だったことで、「白すぎるオスカー」に対して抗議運動が起こり、映画芸術科学アカデミーの会長(当時)シェリル・ブーン・アイザックスは多様性(Diversity)を受け入れるため、新規アカデミー会員を大量に増やした。それは〈女性・非白人・アメリカ国外の映画人〉を中心とするものだった。シェリル自身がアフリカ系アメリカ人である。だから例えば「未来のミライ」の細田守監督も既にアカデミー会員で、今回投票している。

お陰で今年の受賞者は随分様変わりした。アフリカンな「ブラックパンサー」が衣装デザイン賞と美術賞を受賞したことがそれを象徴している。また短編実写・短編ドキュメンタリー賞はどちらも女性が受賞した。シェリルが撒いた種=多様性(Diversity)はしっかりと実を結んだのである。だからスパイク・リーは受賞スピーチで彼女に謝辞を述べた。

授賞式のオーケストラを指揮したのは黒人で、In Memoriam(追悼)場面でジョン・ウィリアムズ作曲の音楽を演奏したロサンゼルス・フィルを振ったグスターボ・ドゥダメルはベネズエラ人。きめ細やかな配慮が行き届いていた。

今年のハイライトは脚色賞のプレゼンターとしてサミュエル ・L・ジャクソンが登場し、スパイク・リーの名を読み上げた時だろう。二人は固く抱擁を交わした。余りにも遅すぎた初受賞であった。サミュエルは当然「ドゥ・ザ・ライト・シング」にも出演しており、オバマ前大統領が夫人のミシェルと初デートで観た映画が本作なのである。そしてスパイク・リーは高らかに"Do the right thing !"と叫び、スピーチを締めくくった。

監督賞のプレゼンターに「シェイプ・オブ・ウォーター」のギレルモ・デル・トロが登場し、同じメキシコの朋友アルフォンソ・キュアロンに渡したのも良かった。受賞者が記載されたカードの入った封筒を開いて、「発音が難しいな」と呟いたのは、お約束とはいえ愉しかった。例えばデル・トロの「パンズ・ラビリンス」にはキュアロンがプロデューサーとして名を連ねている。

しかし撮影・外国語映画・監督賞と3部門をキュアロンに与えておいて、大トリの作品賞で「ROMA/ローマ」を外すとは、やはりNetflix(配信系)だけには絶対に最後の牙城を明け渡さないぞという強い意思表明であり、アカデミー会員の保守性が顕になった。そこまでして映画館主たちを守りたいのか!?実に残念だが、城が攻め落とされるのはもう時間の問題。首を洗って待っておれ。

主演男優賞を受賞したラミ・マレックは両親がエジプト人ということで、アラブ系俳優として初受賞だそうである。それで思い出したが、本来なら「アラビアのロレンス」(1962)でオマー・シャリフ(エジプト出身)が助演男優賞を受賞すべきだったんだよなー。偏見に満ちた歴史的なミス・ジャッジだった。なおオマー・シャリフは後に「ドクトル・ジバゴ」「ファニー・ガール」などに主演した。

またラミをはじめ今年は「ボヘミアン・ラプソディ」が最多4部門を受賞したが、受賞者の誰一人として、スピーチで「監督」にクレジットされたブライアン・シンガーへ謝辞を述べなかったことは、予想されたこととはいえ極めて異常な事態だった。

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