尾高忠明の武満とエルガー〜大阪フィル定期
関西フィルの首席指揮者・藤岡幸夫のシベリウスとヴォーン=ウィリアムズは超一級品である。同様に、大フィルの音楽監督に就任した尾高忠明と言えば、武満徹とエルガーを振らせたら(現役指揮者では)右に出る者がいない(出演キャンセルが続く小澤征爾は現役として認めない)。彼は英エルガー協会からエルガー・メダルを授与された唯一の日本人である。
1月17日(木)フェスティバルホールへ。
尾高忠明/大阪フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会を聴く。ヴァイオリン独奏は神尾真由子。
- 武満 徹/トゥイル・バイ・トワイライト
- ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲 第1番
- エルガー/交響曲 第1番
twilとは「あや織り」のことでtwilightは「薄明/黄昏時」。移ろいゆくもの、ゆらぎが、きめ細やかな音のパレットで捉えられる。ぼんやりして焦点が定まらない世界。
武満には夢とか、水(雨・海)をテーマにした作品が非常に多い。「夢の時」「夢の引用」「夢の縁へ」「夢見る雨」「ウォーター・ドリーミング」「雨の樹」「雨の庭」「雨ぞふる」「海へ」「星・島」「From me flows what you call time(私から”夢”と呼ばれるものが流れ出す)」等々。夢も水も形が定まらない曖昧な存在、ゆらぎである。それは黄昏(「君の名は。」の”かたわれ時”)とか、虹も同じだろう。「虹へ向かって、パルマ」という作品もある。
ブルッフの神尾は野太い音を奏で、張りのある演奏だった。
尾高のエルガーは骨太である。第1楽章はNoble(気高い)、第2楽章のスケルツォは勇ましい。叙情的な第3楽章アダージョでもしっかりと一本の芯が通っている。そして闘争的な終楽章。アスリートのようにしなやかな筋肉を持った、男臭い演奏だった。僕は「う〜ん、マンダム」のCM(演出は大林宣彦)で有名な俳優チャールズ・ブロンソンを思い出した。動画はこちらとか、こちら。現役のスターならさしずめ、ベネチオ・デル・トロかな。
最後に、尾高さんに今後どうしても取り上げてほしい曲を挙げておく。
- 武満徹:系図 ―若い人たちのための音楽詩―
(ナレーターは絶対に10代の若い女の子で!上白石萌音・萌歌姉妹を推薦) - 武満徹:夢の時 Dreamtime
- エルガー:オラトリオ「ゲロンティアスの夢」
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