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2019年1月18日 (金)

新演出!東宝ミュージカル「マリー・アントワネット」ダブルキャスト観劇記

梅田芸術劇場でミュージカル「マリー・アントワネット」を2度、観劇。

1月9日(水)ソワレのキャスト、

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14日(月・祝日)ソワレのキャストは、

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僕は東宝が製作したこのミュージカルの初演を2007年に梅芸で観ている。原作は遠藤周作の小説「王妃 マリー・アントワネット」で、演出は栗山民也。作詞・作曲は「エリザベート」「モーツァルト!」「レベッカ」のクンツェ&リーヴァイ。その時の配役は、

  • マリー・アントワネット:涼風真世
  • マルグリット・アルノー:新妻聖子/笹本玲奈(ダブルキャスト)
  • アニエス・デュシャン:土居裕子
  • フェルセン伯爵:井上芳雄
  • ルイ16世:石川禅
  • オルレアン公:高嶋政宏
  • カリオストロ:山口祐一郎

新妻と笹本両方の出演回に足を運んだ。栗山民也はその後、ドイツ・ブレーメン(09年)公演でも演出家として招聘された。また本作は韓国(14年)やハンガリー(16年)でも上演された。

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今回はロバート・ヨハンソンによる新演出版となり、台本も大幅に改訂された。カリオストロという役も消滅した。どうやらロバート・ヨハンソンは韓国で活躍している人らしく、韓国バージョンを逆輸入したというのが真相らしい。

  • ローズ・ベルタン:彩吹真央
  • ジャック・エベール:坂元健児
  • オルレアン公:吉原光夫
  • ランバル公爵夫人:彩乃かなみ

〈遠い稲妻〉〈孤独のドレス〉〈私たちは泣かない〉等、新曲がふんだんに追加され、第1幕冒頭フェルセンのソロ〈マリー・アントワネット〉や、第2幕フィナーレで全員が歌う〈どうすれば世界は〉も初演版にはなかった。

旧演出版はギロチンで次々と人の首がはねられるし、民衆は理性を欠いた単なる暴徒だし、「なんて血なまぐさいミュージカルなんだ!」と思った。容赦のない異色作。ただ僕はそれを面白がったが、当然後味は悪く、繰り返し観ようという気にはなれなかった。

ところが新演出版はガラリと雰囲気が変わり、王妃とフェルセンの悲恋にフォーカスが当てられてロマンティックな作品になった。宝塚歌劇「ベルサイユのばら ーフェルゼンとマリー・アントワネット編ー」に接近した、と言えば分かり易いかも知れない。

というわけで、とっても見やすい、王道を征くミュージカルに生まれ変わった。但し、復讐の連鎖で成立する世界を憂う終曲〈どうすれば世界は〉の内容が、木村信司作による宝塚歌劇「王家に捧ぐ歌」に類似している点は些か気になった。

元々、本作のタイトルは「MA」だった。

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MAはマリー・アントワネット( Marie Antoinette )のイニシャルであると同時に、 掃き溜め生まれのマルグリット・アルノー( Marguerite Arno )も意味している。つまり〈ふたりでひとり〉、一人の女性の分身光と影を描いていると解釈出来る。言い換えるならばドッペルゲンガー二重身)であり、ミュージカル「モーツァルト!」に於けるヴォルフガングとアマデの関係にそっくりである。同じ遺伝子を持つ人間でも、環境により全く違った性格に育つというわけだ。

僕は花總まり演じるマリー・アントワネットを都合3回観ている。

  • 「ベルサイユのばら2001」@宝塚大劇場、2001年
  • 「1789 -バスティーユの恋人たち-」@梅芸、2016年
  • 「マリー・アントワネット」@梅芸、2019年

マリーの没年が37歳であり、花ちゃんは現在45歳。流石に最初は「この役には年を取りすぎでは?」と感じたが、追い詰められてゆく物語の後半に進むに従いどんどん良くなっていくので驚嘆した。「ベルばら」時代より演技に深みを増し、断然素晴らしい!〈女であること〉ゆえの哀しみ。気品があり、「やっぱりコスチューム・プレイで彼女の右に出るものはいないなぁ」と改めて確信した。笹本玲奈は歌が上手いし特に欠点はないのだけれど(若さという利点もある)、やっぱり庶民のマルグリット・アルノーの方が似合っていた。

今回のマルグリットについては目力(めぢから)があってパワフルなソニンに軍配を上げる。昆夏美も決して悪くないんだ。しかし、花總まり✕ソニンのコンビの方が強烈過ぎた。圧巻だった。

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