続・終物語
今まで長らく封印してきたのだが、遂にそれを解き、西尾維新原作の〈物語〉シリーズについて語ることにしよう。
僕が最初に観たのは2016年1月から17年1月にかけて東宝で公開された三部作の劇場アニメ「傷物語」(I 鉄血篇、 II 熱血篇、 III 冷血編)だ。時系列で言えば〈物語〉の発端に位置する。正直、これだけではどうもピンとこなかったので当ブログでは取り扱わなかった。
映画館に足を運んだきっかけは、「魔法少女まどか☆マギカ」に打ちのめされたからである。
- 「魔法少女まどか☆マギカ」を語ろう!(2012年3月に書いた記事)
- 反転する物語~「魔法少女まどか☆マギカ」の魅力 2013.11.19
- 劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語 2013.10.27
「まどマギ」の新房昭之が〈物語〉シリーズの総監督を務めており、シャフトが制作したアニメをもっと観たいと思った。また「まどマギ」で異空間設計(プロダクションデザイン)を担当した劇団イヌカレーも参加している。
その後、AmazonプライムやNetflix、Huluで配信されたものを断続的に観た。アニメが製作された順番に列記すると、
- 化物語(全十五話)
- 偽物語(十一話)
- 猫物語〈黒〉(四話)
- 〈物語〉シリーズ セカンドシーズン(二十八話)←「猫物語〈白〉」含む
- 憑物語(四話)
- 終物語 (二十話)
となる。結局合計すると八十五話!他にもiOS,Android向けにリリースされたアプリにて配信された「暦物語」(十二話)があるらしい。時期的には「終物語」上・中巻(2015年10-12月に地上波で放送)と下巻(2017年8月12・13日にBS11で放送)の間。沢山の〈物語〉の集合体であり、時系列がバラバラなので、こうやって書いていてもややこしくて頭が混乱する。ま、そこがこのシリーズの醍醐味でもあるのだが。
〈物語〉シリーズを一言で評すなら、〈ハーレム〉のお話ということになるだろう。高校三年生の主人公・阿良々木暦はありとあらゆるタイプの女性たちからモテモテになる。ツンデレ(戦場ヶ原ひたぎ)、メガネっ子・巨乳(羽川翼)、ロン毛の妖女(キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード)、幼女(忍野忍)、小学生少女(八九寺真宵)、ロリ系中学生(千石撫子)、ボーイッシュでBL好きの後輩高校生(神原駿河)、妹系ていうか正真正銘の妹!(阿良々木火憐/月火)、能面・影(忍野扇)、ツインテール・学級委員長で攻撃的性格(老倉育)、はんなり京都弁(影縫余弦)、童女・人形(斧乃木余接)、「何でも知っている」自信家(臥煙伊豆湖)等々。
わかりやすく言えば1994年に発売され、一世を風靡した「ときめきメモリアル(ときメモ)」みたいな感じかな。つまり恋愛シュミレーションゲームだ。ここで声を大にして言っておくが、僕自身は「ときメモ」をしたことは一切ないし、興味もなかった。プレステ自体持っていないしね(こういう言い訳を一々しないといけないので、〈物語〉シリーズを語るのは気が重い)。余談だが「ときめきメモリアル」は97年にフジテレビ制作で実写映画化された。その時ヒロイン・藤崎詩織を演じたのが吹石一恵で、今は福山雅治の奥さんね(僕は映画版も未見)。
恐らくこのハーレム状態がヲタクたちの妄想を膨らませ(王様気分)、絶大な支持を得て息の長い作品となっているのだろう。女性たちにとっては何が面白いんだかさっぱり理解出来ないかも知れないが、逆ハーレムの少女漫画「王家の紋章」を想い出して欲しい(プリンセス気分)。両者は鏡像の関係で全く同じ構造なのだ。「王家の紋章」も1976年10月の連載開始から未だに続いている(42年間!)。
キャラクター・デザイン:渡辺明夫が描く女の子たちは「萌え」というヲタクの心をくすぐる。東宝の川村元気プロデューサーが岩井俊二の「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」のアニメ映画化を企画した際、新房昭之に監督を依頼すると同時に「キャラクター・デザインは是非、渡辺明夫さんで」と指名したのは、〈物語〉シリーズのことが頭にあったからである。
また〈物語〉シリーズは恋愛シュミレーション+怪異仕様となっている。怪異とは妖怪変化や幽霊のこと。つまり水木しげる「ゲゲゲの鬼太郎」や手塚治虫「どろろ」の雰囲気を兼ね備えている。
で僕が一番好きなキャラクターは貝木泥舟(かいきでいしゅう)。詐欺師(悪役)として登場するのだが、どこか憎めない屈折したキャラクター。一筋縄ではいかず、人間に深み(闇)がある。特にセカンドシーズン「恋物語」の彼は最高だね。あとネーミング・センスが上方落語「狼講釈」「べかこ」「深山隠れ」に登場する泥丹坊堅丸(どろたんぼうかたまる)みたい。因みに江戸時代の画家・鳥山石燕の「今昔百鬼拾遺」には泥田坊(どろたぼう)という妖怪が登場する。
「まどマギ」もそうだが、新房昭之の演出は極めてスタイリッシュ。画面を横溢する無数の縦線と横線。そして時折アクセントとして登場する円。カッケー!首を曲げる独特なポーズ「シャフ度(シャフト角度)」のこともこのシリーズを通して学んだ(「まどマギ」や「打ち上げ花火」にも出てくる)。
で「終物語」で完結したと思わせておいて、「続・終物語」って一体どういうこと!?と狐につままれたような気分である。
評価:B+
TOHOシネマズでイベント上映を鑑賞。公式サイトはこちら。上映時間は148分。はじめにテレビ放送ありきの企画であり、それを劇場公開用につなげたものなので長め。導入部は「鏡の国のアリス」を彷彿とさせる。つまり今までの〈物語〉シリーズに登場したキャラクターの反転した姿であり、裏返しの世界が描かれる。だから多分、本編を知らないと意味不明だろう。
まぁ、それなりに面白かった。おまけみたいなものだから。
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コメント
こんにちは、私はリアルタイム「うる星やつら」世代なので、毎エピソード新しい女性キャラが出てくるという展開は「うる星やつら」みたいだなと思ってました。
投稿: ふじき78 | 2018年12月13日 (木) 00時46分