スペイン再発見〜古楽最前線!ー躍動するバロック@いずみホール
11月11日(日)いずみホールへ。
に続くシリーズ第3弾、今回はファミ・アルカイ(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、アカデミア・デル・ピアチェーレを聴く。
曲目は、
- 作者不詳(16世紀頃):ディ、ペーラ・モラ
- カベソン&アルカイ:ラ・ダマ・レ・デマンダ
- イザーク&アルカイ:ラ・スパーニャに基づくグロサーダ
- アルカデルト、オルティス&アルカイ:「おお幸福な私の目」
- アルカイ:「牛を見張れ」によるディフェレンシアス
- カベソン:第1旋法によるティエント 第3番
- アルカイ:ジョスカンの「はかりしれぬ悲しさ」によるグロサ
- ムルシア:ファンダンゴ
- カベソン&アルカイ:グロサーダ「ある日シュザンヌが」
- 作曲家不詳&アルカイ:ハカラス&フォリアス
- サンス&アルカイ:パッサカリア、マリオナス、カナリオス
アルカイはスペイン生まれだが、父はシリア人で母はパレスチナ人だそう。
彼はジミ・ヘンドリックスの楽曲をカヴァーしたり、スタジオにはなんとエレキ・ヴィオラ・ダ・ガンバを所持しているという!型破りというか、規格外の人だ。
一旦は滅んで、1970年以降にヴィーラント・クイケン、ジョルディ・サヴァールらの尽力により復活した古楽器ヴィオラ・ダ・ガンバの概念を根底からひっくり返す、革新的演奏であった。特にガンバを横向きに倒し膝に載せ、ギターのように撥弦(はつげん)楽器として扱う手法には心底驚かされた。そしてカッケー!
ヴィオラ・ダ・ガンバ3丁とギター、チェンバロという五重奏を聴きながら、僕が真っ先に想起したのはアストル・ピアソラが率いるキンテート・タンゴ・ヌエヴォ( New Tango Quintet )だ。両者には迸る情熱がある。
ピアソラは生涯に八重奏団、六重奏団なども結成したが、バンドネオン奏者として頂点を極めたのがキンテート(五重奏団)時代だったことは論を俟(ま)たない。バンドネオン(ピアソラ)、ピアノ(パブロ・シーグレル)、ヴァイオリン、ギター、コントラバスという編成で、日本のバンドネオン奏者・三浦一馬もこのキンテート・スタイルを踏襲している。
- 三浦一馬クインテット ガーシュウィン&ピアソラ(2015.07.02)
今回のコンサートを聴き、確信を持ったのは、〈アルゼンチン・タンゴとスペイン音楽は密接に繋がっている〉ということ。16世紀以降、アルゼンチンはスペインの植民地となり、現在も公用語はスペイン語である。スペインとアルゼンチンの音楽は互いに影響し合い、共鳴している。それはアフリカ音楽とアメリカで誕生したジャズの関係に近い。
あと僕の脳裏に蘇った映像はアマゾン奥地でゴム園を開拓してオペラハウス建設の資金を作ろうとする1人の男を主人公とするヴェルナー・
ファミ・アルカイとアストル・ピアソラに共通するもの。それは一つの音楽ジャンルの境界線を越えようとする強靭な意志である。ふたりは革命家なのだ。そして彼らはフィツカラルドとアギーレの姿に二重写しになる。
物凄い音楽を聴いた。
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