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シリーズ《映画音楽の巨匠たち》第7回/ミクロス・ローザ(ロージャ・ミクローシュ)篇

まず最初に、シリーズ《映画音楽の巨匠たち》過去記事をご紹介しよう。

今回ご紹介したいのはハンガリー出身の作曲家ミクロス・ローザ。ハンガリー読みでは日本語同様に姓・名の順で表記するのでロージャ・ミクローシュとなる。アカデミー作曲賞に17回ノミネートされ、「白い恐怖」「二重生活」「ベン・ハー」で3度受賞した。

ローザといえば泣く子も黙る《史劇の達人》である。「ベン・ハー」「エル・シド」「クォ・ヴァディス」「ジュリアス・シーザー」「ヤング・ベス」「黒騎士」「円卓の騎士」「キング・オブ・キングス」「ソドムとゴモラ」など枚挙に暇がない。ローマ帝国時代の音楽の雰囲気を巧みに醸し出しながらも、しっかりとハンガリー民謡の節回しを仕込んでいるところがさすが匠の技である。

僕の考えるローザの映画音楽ベストを挙げる。

  1. ボヴァリー夫人(1949)
  2. 白い恐怖(1945)
  3. ベン・ハー(1959)
  4. 針の眼(1981)
  5. 炎の人ゴッホ(1956)
  6. キング・オブ・キングス(1961)
  7. エル・シド(1961)
  8. 失われた週末(1945)
  9. シャーロック・ホームズの冒険(1970)
  10. ヤング・ベス(1953)
  11. 悲愁(1979)
  12. ジャングル・ブック(1942)
  13. リディアと四人の恋人(1941)
  14. シンドバッド黄金の航海(1973)
  15. プロビデンス(1979)

「ボヴァリー夫人」は、ミュージカル映画「巴里のアメリカ人」「バンド・ワゴン」「恋の手ほどき」で知られるヴィンセント・ミネリ監督作品だが、僕はミネリの最高傑作だと信じて疑わない。本作についてはフランスの哲学者ジル・ドゥルーズによる卓越した分析があるので、そちらを是非ともお読み頂きたい。下記事に引用している。

ローザの音楽も実に素晴らしい。特に圧巻なのが舞踏会シーンで流れるワルツ。狂気が疾走する。ミネリはこの音楽をThe "Neurotic Waltz"(神経症的円舞曲)と呼んだ。途轍もない渦の中に呑み込まれる印象。ヒロイン(ジェニファー・ジョーンズ)が夢に貪り喰われる瞬間が描かれる。お勧めはエルマー・バーンスタイン/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏(ステレオ録音。オリジナル音源はモノラル)。iTune Storesで「Madame Bovary」「バーンスタイン」というキーワードを入力し検索すれば購入出来る。また映画のDVDはAmazonで入手可能。

ボヴァリー夫人」が公開された1940年代、ハリウッドでは映画にフロイトの精神分析を絡めることが流行っていた。アルフレッド・ヒッチコック監督の「白い恐怖」もその一つである。幻想シーンのイメージはシュルレアリスムの画家サルバドール・ダリが起用された。この映画のテーマもズバリNeurosis(神経症)である。「白い恐怖」は電子楽器テルミンが使用された。映画でテルミンを初めて使用したのはローザである。これに関しては面白いエピソードがあるので下記事で紹介した。

There

一方で「白い恐怖」の音楽はとてもロマンティックだ。映画を元に再構成した、華麗なピアノ協奏曲版もあるのでお聴きあれ。

ローザの遺作は「スティーブ・マーティンの四つ数えろ」(1982)だが、「針の眼」はその一つ前、晩年の大傑作である。スパイ・スリラーとして映画の出来もよく、これを観たジョージ・ルーカスは監督のリチャード・マーカンドを「スター・ウォーズ ジェダイの帰還」に抜擢した。高校生の時、僕は「針の眼」のサウンドトラックLPレコードを購入し、繰り返し聴いた(その時点で映画は未見だった)。成人してCDで買い直そうと考え、輸入CDショップ(タワーレコードかHMV)で見つけたのだが、何と値段が5,000円以上もした!多分、限定版(limited edition)だったのだろう。迷いに迷った挙げ句、断念した。結局その後一切お目にかかることは出来なかった。四半世紀探し求め続けた……そして今ではiTune Storesでダウンロード出来るようになった。良い時代になったものである。

イエス・キリストの生涯を描く「キング・オブ・キングス」はもう冒頭の「ホザンナ」の合唱からその荘厳さに圧倒される。

「エル・シド」は中世スペイン地方のムード満点。

「シャーロック・ホームズの冒険」はヤッシャ・ハイフェッツが初演したローザのヴァイオリン協奏曲 第2番が流用されている。ホームズは趣味でヴァイオリンを弾くので。ハイフェッツの演奏はCDで聴くことが出来る。

「ヤング・ベス(悲恋の王女エリザベス)」は若き日のエリザベス一世を描く。後日《Fantasy on Themes from "Young Bess "》(「ヤング・ベス」の主題による幻想曲)というコンサート・ピースに再構成された。パイプ・オルガンが前面に押し出され、重厚な金管アンサンブルに対峙する。また映画半ばでグレゴリオ聖歌「怒りの日」が立ち現れる。

ビリー・ワイルダー監督「悲愁(Fedora)」は、もうひとつの「サンセット大通り」。どちらもウィリアム・ホールデンが出演している。

「ジャングル・ブック」の魅力は野性味。

「リディアと四人の恋人」は「舞踏会の手帖」「パリの空の下セーヌは流れる」などで知られるフランスの巨匠ジュリアン・デュヴィヴィエ監督が第2次世界大戦勃発により、アメリカに疎開している際に撮った作品。同時期に彼は「運命の饗宴」も製作した。ピアノ協奏曲仕立てなのが素敵。

「シンドバッド黄金の航海」は「シンドバッド七回目の航海」(1958)の続編で、前者の音楽を担当したのはヒッチコック映画で名高いバーナード・ハーマン。両者を聴き比べてみるのも一興だろう。

というわけで次回《映画音楽の巨匠たち》はバーナード・ハーマンか、エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト、あるいは久石譲を取り上げたいと考えている。誰がいい?リクエストお待ちしています。

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