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【考察】映画「ペンギン・ハイウェイ」と宮沢賢治「銀河鉄道の夜」

評価:AA (最高はAAA)

P

大傑作!暫定今年のベスト・ワン(邦画・洋画併せて)。公式サイトはこちら。監督はこれが長編デビュー作となる石田祐康。

森見登美彦の原作は日本SF大賞を受賞している。仕掛けは本格的だ。

森見の小説は「四畳半神話大系」「有頂天家族」「夜は短し歩けよ乙女」が既にアニメ化されており、実にアニメーションとの親和性が高い。

そして脚色を担当した劇団「ヨーロッパ企画」@京都の上田誠と森見が組むのは「四畳半神話大系」「夜は短し歩けよ乙女」に続いて今回が3度目。抜群の相性の良さを示している。パーフェクトだ。

この物語のヒロインである〈お姉さん〉の姿に二重写しになって見えた人物が二人いる。松本零士「銀河鉄道999」のメーテルと、岩井俊二監督「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」の及川なずな(奥菜恵)である。「銀河鉄道999」は勿論、宮沢賢治「銀河鉄道の夜」を下敷きにしており、岩井が執筆した「打ち上げ花火」の原作小説「少年たちは花火を横から見たかった」もまた、「銀河鉄道の夜」の冒頭部を読み上げる場面から始まる。つまり〈お姉さん〉≒メーテル≒なずな≒カムパネルラであり、「ペンギン・ハイウエイ」における小学校4年生の主人公アオヤマくん≒ジョバンニという図式が成立する。孤独な少年ジョバンニは友人カムパネルラとふたりきりで銀河鉄道に乗り込んで旅をするが、それは「銀河鉄道999」の星野鉄郎とメーテルも同様であり、「打ち上げ花火」の島田典道となずなは”かけおち”するために電車に乗ろうとするが、果たせない(後のアニメ版ではふたりきりで乗り込むことに成功する)。そして「ペンギン・ハイウエイ」のアオヤマくんと〈お姉さん〉も電車に乗って街を離れようと試みる。

「銀河鉄道の夜」「銀河鉄道999」「ペンギン・ハイウエイ」にもう一つ共通するのは死の匂いである。一見関係なさそうな「打ち上げ花火」にも、”かけおち”を持ちかけられた典道が、なずなと次のような会話を交わす場面がある。

典道「二人で・・・死ぬの?」
なずな「それは心中でしょ」

そしてアニメ版でなずなの母と”かけおち”し、サーフショップを開いた父は海で溺死している。

「ペンギン・ハイウエイ」に登場する〈海〉という概念はとても魅力的だ。映画「コンタクト」「インターステラー」における〈ワームホール〉みたいなものだろう(この二作品を監修したキップ・ソーンは2017年ノーベル物理学賞を受賞した)。また僕は〈真空崩壊〉も連想した(詳しくはこちら)。

ここで宮沢賢治が書いた絵をご覧いただこう。

Kenji

背景に宇宙が在り、空間の裂け目からいくつもの手が伸びる。「ペンギン・ハイウエイ」の 〈海〉に、どこか似ていませんか?

アオヤマくんは〈お姉さん〉と一緒に体験した冒険を通じて、宇宙とか世界の果てについて思惟する。ジョバンニのように。そして初めて死を身近に意識し、大人への階段を一歩登る。少年期の終わり。哲学的であり、秀逸なジュブナイル映画である。

また〈お姉さん〉の声を当てた蒼井優が素晴らしかったことも特筆に値する。

ー 最後にネタバレでもう一言 ー

Are you ready ?

銀河鉄道に乗ったカムパネルラは生者ではなく、既に死んでいる。メーテルが生身の人間なのか、機械人間なのかは未だに意見が別れており、結論は出ていない(松本零士は「メーテルは”人間”です」と言っているが、それでは説明がつかない点が多々ある。作家とは信頼できない語り手である)。また「打ち上げ花火」のなずなの正体は人魚(セイレーン)なのではないかと僕は考えている。最後は水のきらめきの中に消えてゆくし、岩井俊二は「ウォーレスの人魚」という小説を書いているくらいだからね。そして「ペンギン・ハイウエイ」のアオヤマくんは最後に「お姉さんは人間ではない」という結論に達する。やはりこれら4作品は繋がっているのである。

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