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映画「羊と鋼の森」

評価:A

Iron

原作小説については下記事で詳しく語った。

小説がお気に入りだとその映画化に裏切られることが多いが、本作ではそんなことが全く無かった。公式サイトはこちら

映画序盤、主人公がピアノ調律師見習いとして先輩に同行した家庭でふたごの姉妹に出会う。最初に姉の和音(かずね=ハーモニー)が弾くのがラヴェル「水の戯れ」、続いて妹・由仁(ゆに=ユニゾン)がショパン「エチュード op25-9 蝶々」を暗譜で演奏する。これ、原作で妹の方は「ショパンのエチュード」とだけ言及されているが、姉の方は「たぶん、指を動かすための練習曲」としか書かれていないので何を弾くのだろうと興味津々だった。音楽で見事に二人の性格の違いを描き分けており、舌を巻いた。ラヴェルは後に「亡き王女のためのパヴァーヌ」も流れる。

また、ふたごが連弾する曲も原作では指定されていないのだが、モーツァルト「きらきら星変奏曲」がとっても物語の雰囲気にあっていた。

本作は非常に繊細にを描写している。ピアノのだけじゃない。ハンマーフェルトを削る、体育館に響き渡る靴、深々(しんしん)と雪が降り積もる、靴が雪を踏みしめる、等々。そして無音の張り詰めた緊張感も大変魅力的。卓越した音の映画である。

真面目で誠実な主人公を山崎賢人が好演。三浦友和の調律師もはまり役だ。上白石萌音・萌歌姉妹は背丈も、顔の大きさも顔の形も違うので「ふたご」からかけ離れているというか、実の姉妹にすら見えないのだが、ちゃんと作品世界に寄り添っていて○。

あと、If もしも....この小説が1990年代に映画化されていたとしたら(そもそも出版すらされていないのだが)、ふたごのキャスティングは石田ゆり子・ひかり姉妹が演じていたのではないかと夢想した。上白石萌音がベートーヴェン「熱情」を弾く場面が、僕には大林宣彦監督「ふたり」(1991)でシューマンのノヴェレッテを弾く石田ひかりの残像にピタリと重なったのである。ちなみに吉行和子は「ふたり」にも、「羊と鋼の森」にも出演している。

仄暗い森の中を手探りで模索しながらも、しっかりと人生の第一歩を踏み出す若い人たちの物語が、映画「羊と鋼の森」でくっきり輪郭を表した。

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