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君たちはどう生きるか?

将来、当ブログを読むであろう息子(現在小学校1年生)に向けてこの文章を書く。僕が今まで生きてきた過程で学び、培ってきたフィロソフィー(哲学/哲理)を語ろう。

① 生成変化しない者に価値はない。

生成変化とは、20世紀フランスの哲学者ジル・ドゥルーズが打ち立てた概念である。2018年、秋元康が作詞した乃木坂46の"Against"(卒業する生駒里奈に贈った楽曲)が生成変化とは何かを教えてくれる(視聴はこちらから)。

僕らは変わらなきゃいけない
永遠なんか信じるな!
昨日の自分とは決別して
生まれ変われ!

このままここに居続けるのは
誰のためにもならない
新しい道を切り拓いて
立ち向かうんだ
アゲインスト (秋元康 詞)

僕は10代の頃から「昔は良かった」と言うような大人には絶対になりたくない!と決意していた。そして幸いなことにならなかった。「今」が一番楽しいし、「今」が一番充実していて、濃密な時間を生きている(現在進行形)と胸を張って言い切れる。20歳の自分より「今」の自分の方が絶対に賢い。昔の映画の方が面白かった?そんなの嘘っぱちだ。ただ感性が衰えただけ。

《生きながら死んでいる、化石のような大人》にはなるな!そのためには本を読み続けること。新しいもの(音楽・映画・演劇など)を貪るように吸収し、感性を磨くこと。生涯が学びの場だ。そのことを肝に銘じるべく、次の詩を紹介しよう。

ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

(中略)

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ

(茨木のり子/詩集「自分の感受性くらい」所収)

② 境界を超えろ。自分の周囲にあるを壊せ!

漫画「進撃の巨人」のを思い出してくれたらいい。

「新世紀エヴァンゲリオン(ヱヴァンゲリヲン新劇場版)」で言えばA.T.フィールドね。境界を超えるとはつまり、生成変化に繋がる。更に言い換えるなら《トリックスター(遊戯的撹乱者)になれ!》ということ。

対立する二つの陣営があったら、どちらにも組みすることなく、両者を仲介し、循環する存在になれ。思いっ切り混ぜっ返せ。それがトリックスター(遊戯的撹乱者)だ。循環をニーチェ哲学の言葉で言い表すなら永劫回帰となる。

行動せよ。考えるだけではなく体を動かせ。

③ 欲望に忠実に生きなさい。但し、他人の迷惑にならない範囲で。

「禁欲」は美徳ではない。愚かなだけ。履き違えるな。折角この世に生を得たんだ、チャンスは二度とない。せいぜい限りある人生を楽しまなくちゃ勿体ない。しかし新しい土地を得たいからと戦争して他国を侵略しちゃいけないし、性欲を満たしたいからと強姦するのも駄目。他人の犠牲の上に自分の幸福を築くな。これが最低限のルール(抑止力)だ。

立川談志「現代落語論」の言葉を借りるなら、「人間の業(ごう)」を肯定するということ。彼の著書「あなたも落語家になれる」から以下引用する。

 落語というものを、みなさんはどう解釈しているのか……、おそらく落語家を"笑わせ屋"とお思いになってるでしょう。(中略)
 でも、私の惚れている落語は、決して「笑わせ屋」だけではないのです。お客様を笑わせるというのは手段であって、目的は別にあるのです。なかには笑わせることが目的だと思っている落語家もいますが、私にとって落語とは、「人間の業」を肯定してるということにあります。「人間の業」の肯定とは、非常に抽象的な言い方ですが、具体的に言いますと、人間、本当に眠くなると、"寝ちまうものなんだ"といってるのです。分別のある大の大人が若い娘に惚れ、メロメロになることもよくあるし、飲んではいけないと解っていながら酒を飲み、"これだけはしてはいけない"ということをやってしまうものが、人間なのであります。
 こういうことを八っつぁん、熊さん、横丁の隠居さんに語らせているのが落語なのであります。
落語をお聴きなさい。

④ 矛盾を恐れるな。首尾一貫しなくていい。

矛盾していていいんだということはアニメーション作家(引退詐欺師!)・宮崎駿の生き様から学んだ。

将来を見据えた、理路整然とした人生設計なんか要らない。「予定通りいかない。番狂わせが面白い(ミュージカル「エリザベート」より死神トートの台詞)」出たとこ勝負だ!

若い頃僕は、例えば海外旅行に行く時に第1日目はここへ行って、次はあそこ、と時間刻みの綿密な計画を立てていた。でもある日、旅の醍醐味って想定外の出会いにあることに気が付いたんだ。事前の計画は大雑把でいい。後は現地で得る自分の感(臭覚・触覚 etc.)を信じるのみ。

野生の思考
を絶えず研ぎ澄まし、その場にあるありあわせのものでブリコラージュ(器用仕事/寄せ集め細工)すること。為せば成る。なんとかなるさ。

⑤ 行き詰まったらその場で踏ん張らず、直ちに「全力で」逃げなさい。逃げるは恥でも役に立つ。

学校でいじめられて、どうしようもなくなったら転校すればいい。それだけのこと。ジル・ドゥルーズの提唱する概念で語るなら、皆が当たり前と思って歩く道を逸れ、逃走線を描け!ノマド(遊牧民)として生きよ。ということになる。君が今いるそこだけが世界じゃない。失敗したら新天地で何度でもやり直せばいい。もっと視野を広げてごらん。追い詰められて、思い詰めて、自殺するなんて馬鹿げている。徹底的に自分を肯定すること

⑥ 生きる意味を考えるのは構わない。でも答えを求めるな。正解なんかないんだ。

人間というのは自分が生きる意味をどうしても考えてしまう生き物だ。余り思いつめると新興宗教にはまり、地下鉄でサリンをばらまいたりする羽目になる。マルクス思想に絡め取られ、銃を握りしめて浅間山荘に立てこもった若者たちもいたな。でもね、人は誰しも、いつかは必ず死ぬ。金持ちも、貧困層も、頭が良かろうが悪かろうが皆平等だ。そして息を引き取る最後の瞬間まで自分は何故いまここにいるのか、その意味を考え続ける。多分それ自体が「生きる」ということなんだ。つまり答えのない質問(The Unanswered Question)を問い続けること。人生には「目的」も、「神の計画」もない。「過程」が全てだ。

神は死んだ(by ニーチェ)。万物は流転する。

もしも僕の生に何らかの意味があるのだとしたら、それは「つなぐ」ことなのだろう。僕の人生の中で得たものを次世代に伝える。そうすれば君たちはさらに「その先に」進める筈だ。人類の歴史はその繰り返し(経験と知識の集積)だった。だから僕は今、ブログを書いている。君たちもリレーに参加し、つなぎなさい。但しゴールはないんだ。

⑦ 正義とか悪、不変の真理を説く者を信じるな。徹底的に疑え!

「正義」を騙(かた)る者の胡散臭さをまざまざと見せつけたのはジョージ・W・ブッシュ元アメリカ大統領である。イラクのフセイン大統領を「悪の枢軸」と決めつけ、大量破壊兵器があると主張して侵略戦争を実行した。しかし結局、大量破壊兵器は影も形も見つからなかった。2001年9月11日に勃発した同時多発テロの直後にブッシュの支持率は92%に達し、「史上最高」を記録した。ブッシュもどうかと思うが、熱狂的に彼を讃え、信じたアメリカ国民も救いようがない。アドルフ・ヒトラーを支持した当時のドイツ国民と大した違いはない(ナチス党は普通選挙で第一党となった)。どうして人はこんなに騙されやすいのだろう?暗澹たる気持ちになった。

大学生の頃、手塚治虫の漫画「アドルフに告ぐ」を読んで衝撃を受けた。そこには【戦争に「正義の側」と「悪の側」などというものは存在しない】ことが明確に書かれていたのである。ナチス・ドイツに迫害されイスラエルを建国したユダヤ人は結局、4度にわたる中東戦争を通じてパレスチナ人を虐殺している。そこまで手塚は描いている(後にポール・バーホーベン監督「ブラックブラック」にこのテーマは継承された)。結局「正義」とか「悪」という価値観はあくまで相対的なものであって、絶対的なものではないのだ。時代や場所によって変わるし、戦争では勝った者が「正義」であり、勝者が敗者を一方的に裁くことになる(ジャンヌ・ダルク処刑裁判/ニュルンベルク裁判/東京裁判)。「勝てば官軍、負ければ賊軍」とは言い得て妙だ。故に「永遠に不変(普遍)の真理」など存在しない。そういうものを説く教祖・司祭の言葉は眉唾ものと思い、化かされないようご用心なさい。

⑧ 世の中、言ったもん勝ち。

これは本当に大切なことだ。きっちり自己主張すること。遠慮しては駄目、勿体ない。控えめにして出しゃばらないことが美徳だと考えている日本人は多いが、絶対に間違い。結局自分が損をする。間違っていてもいい、とにかく声に出す勇気を持つこと。それで失敗したら修正して言い直せばいい。それだけ。疑問があったら必ず手を挙げて質問してごらん。きっと世界が広がるから。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥だ。

人間の条件はコミュニケーションを取ること。これに尽きる。そのためにはまず自分の意志を相手に伝えなければ始まらない。勿論言いっぱなしでは駄目で、相手の言葉にも耳を傾けよう。僕が敬愛してやまない大林宣彦監督の言葉を紹介する。「人は傷つきあって、許しあって、愛を覚える」(原文こちら)ーこれこそ数々の映画たちが今まで語ってきたことである。

⑨ くよくよ悩まず、結論を出すのは明日に延ばせ!

アメリカ合衆国の政治家ベンジャミン・フランクリンの格言で「今日できることをあしたにのばすな(Never put off till tomorrow what you can do today.)」がある。これは行動(Act)の話。僕が言っているのは思考(Thinking)のこと。僕が今まで出会った中で、最も影響を受けた(心に響いた)小説はマーガレット・ミッチェルの「風と共に去りぬ」とレフ・トルストイの「戦争と平和」である。どちらも中学生の時に読んだ。以下「風と共に去りぬ」のヒロイン、スカーレット・オハラの名台詞を引用する。

"I'll think about that tomorrow. (中略)Tara! Home. I'll go home. And I'll think of some way to get him back. After all... tomorrow is another day."
「そのことはまた明日考えましょう。タラ!そうよ、我が家。お家に帰ろう。そして彼(=レット・バトラー)を取り戻す方策を練るのよ。だって結局、明日は明日の風が吹くのだもの」

よい考え、ひらめきは、ひょんなことから生まれることがある。例えば秋の虫や鳥の歌声に耳を傾けながら散歩している時、あるいは空に浮かぶ雲をボーッと眺めている時。それは不意にやって来る。だから焦らず、まずはゆっくり睡眠時間を取ろう。懸案事項は一晩寝かせることも大事。すると新たに見えてくるものもある。このブログ記事だって実は毎日少しずつ書き足しながら、1ヶ月ほどじっくり熟成させた成果なんだ。

最後に、フェデリコ・フェリーニ監督の映画「8 1/2」の名台詞を、未来を生きる君たちへの餞の言葉としたい。

⑩ "È una festa la vita, viviamola insieme."
  「人生は祭りだ!一緒に過ごそう」

さあ踊れ、そして騒げーっ!!

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