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アカデミー作品賞ノミネート/ゲイ映画「君の名前で僕を呼んで」にラヴェルの音楽が流れる理由(わけ)

評価:B

Callme

アカデミー賞で脚色賞(ジェームズ・アイヴォリー)を受賞、ほか作品賞・主演男優賞(ティモシー・シャラメ)・歌曲賞の計4部門にノミネートされた。監督はイタリア人ルカ・グァダニーノ。映画公式サイトはこちら

ジェームズ・アイヴォリーといえば「眺めのいい部屋」(1986)、ハワーズ・エンド(92)、そして(ノーベル文学賞を受賞した)カズオ・イシグロ原作「日の名残り」(93)など文芸映画を撮らせたら超一級の監督という印象があった。しかし最近、名前を聞かないなぁと思っていたら久々の復活である。なんと現在89歳、アカデミー賞史上最年長での受賞(全部門)となった。企画初期の段階ではアイヴォリーも共同監督を務める予定だったが、フランスの出資者から(2人が撮影現場で対立するんじゃないかと)懸念が出て、結局身を引いたという。

本作の話題で初めて知ったのだが、アイヴォリー自身がゲイだったそう。ところが公私にわたり長年パートナーだった映画プロデューサーのイスマイル・マーチャントが2005年に亡くなってしまった(1961年にMerchant Ivory Productionsを設立)。それで意気消沈し、すっかり創作意欲を失っていたということらしい。

考えてみればE.M.フォースター原作「モーリス」(87)もバリバリのゲイ映画であった。

英ガーディアン紙のインタビュー記事でアイヴォリーは、「君の名前で僕を呼んで」に下半身を露出したヌードシーンがないことに不満を持っていると述べている。シャラメ君とアーミー・ハマーの出演契約にフルヌードが禁止条項として盛り込まれていたためだという。

本作を観た率直な感想を言えば、結局同性愛という設定を男女に変換してみれば、割とありきたりな恋愛(はつ恋の)映画だな、と。それは同様のテーマを持つ「キャロル」とか、アン・リーがアカデミー監督賞を受賞した「ブロークバック・マウンテン」にも感じたことである。

シャラメ君演じる主人公エリオは17歳であり、女の子にも興味があって、同性愛者というよりは、思春期特有の両性愛的感情のように僕には思われた。

舞台が北イタリアなので、イギリスの令嬢がイタリアのフィレンツェを訪れ、そこで恋に落ちるアイヴォリー監督「眺めのいい部屋」のことを想い出した。そういう意味でアイヴォリー色が色濃い。

物語の設定は1983年。街にダスティン・ホフマン主演、映画「トッツィー」のポスターが張ってあり、映画「フラッシュダンス」の挿入歌"Lady,Lady,Lady"(作曲はイタリア生まれのジョルジオ・モロダー)に乗って踊る場面もある。当時僕は高校生だったが「トッツィー」も「フラッシュダンス」も映画館で観ているので、なんだか懐かしかった。

本作は全編に渡ってピアノ曲に彩られている。冒頭シャラメ君が弾いているのはJ.S.バッハのカンタータ「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」。そして彼が次第に恋に落ちると、フランス印象派の作曲家モーリス・ラヴェルのピアノ組曲「鏡」より”海原の小舟”が断片的に流れ始める。そして同じラヴェルの「マ・メール・ロワ」から”妖精の庭”も使用されている。何故ラヴェルなのか?実は既に10年前、拙ブログ記事にその答えを書いていた。

”海原の小舟”は高速アルベジオ(分散和音)が水の煌めきを巧みに表現しており、正に「ときめく」感情にピッタリと寄り添っている。

2020年に続編製作が予定されており、グァダニーノの構想ではリチャード・リンクレイター監督のビフォア・シリーズ(Before Sunrise、Before Sunset、Before Midnight )のようにしたいとのこと。

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受信: 2018年5月29日 (火) 22時24分

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