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デュメイが弾くコルンゴルト!!「終の棲家、アメリカ」関西フィル定期(余談:テルミン秘話)

4月29日(日)ザ・シンフォニーホールへ。関西フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会を聴く。

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指揮はインドネシアに生まれ、ハノーファー高等音楽院で大植英次に師事したアドリアン・プラバーヴァ。アムステルダム・ロイヤル・コンセルトヘボウ管ではベルナルト・ハイティンクの副指揮者を務めた。ヴァイオリン独奏はオーギュスタン・デュメイ(関西フィル音楽監督)で、プラバーヴァの招聘はデュメイの指名だという

  • ミクロス・ローザ:映画「深夜の告白」組曲
  • コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲
  • バルトーク:管弦楽のための協奏曲(オケコン)

ミクロス・ローザはハンガリー出身で(ハンガリー式読みはロージャ・ミクローシュ)、映画「白い恐怖」「二重生活」「ベン・ハー」で3度アカデミー作曲賞を受賞している。

大指揮者ブルーノ・ワルター(ベルリンに生まれたユダヤ人)はロージャの「主題と変奏、フィナーレ」をしばしば演奏会で取り上げており、レナード・バーンスタインがワルターの代役でニューヨーク・フィルに華々しいデビューを飾った折も、この曲を振った。

「深夜の告白」(1944)はビリー・ワイルダー監督の映画で、ワイルダーの「シャーロック・ホームズの冒険」(1970)ではハイフェッツが初演したロージャのヴァイオリン協奏曲 第2番が流用されている(ホームズの趣味はヴァイオリン演奏なので)。二人の最後の共同作業は78年の「悲愁」Fedora。「サンセット大通り」の焼き直しであり、ウィリアム・ホールデンも出演している。僕はロージャ晩年の「針の目」(1981)の音楽が大好きで、15歳の時にサントラのLPレコードを買った。後にCDで買い直そうと血眼になって探したのだが結局手に入らず、漸く昨年、iTunes Storeで発見し、早速ダウンロードして聴いた。感無量だった。

「深夜の告白」の”前奏曲”は重々しく感じるが、続く”面会”になると甘美な音楽となり、チェロのソロがこよなく美しい。「白い恐怖」を彷彿とさせる。余談だがここで面白いエピソードをご紹介しよう。

映画音楽に電子楽器テルミンを使用したのはロージャが史上初だった。

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で、テルミンが登場するのが北米で1945年11月16日に公開されたビリー・ワイルダー監督「失われた週末」(アル中が主人公)と同年12月28日に公開されたアルフレッド・ヒッチコック監督「白い恐怖」の2作品である。「白い恐怖」のプロデューサーは「風と共に去りぬ」や「レベッカ」で知られるデヴィッド・O・セルズニック。「失われた週末」公開直後にロージャのもとにセルズニックの秘書から電話がかかってきたそうだ。曰く「セルズニック氏は自分の作品より先にテルミンが使用された別の映画が公開されたと聞き、大変怒っておられます」どうやら作品の完成自体は「白い恐怖」の方が先だったようである。

驚かされたのはプラバーヴァが「深夜の告白」とオケコンを暗譜で振ったこと。演奏頻度が高いバルトークは理解できるが、ロージャまでとは恐れ入った。新作でも暗譜で振る大植イズムが弟子にも浸透しているのか!?

21世紀に入り、漸くコルンゴルトの時代が到来した。

東京に遅れた関西だが、コルンゴルトのコンチェルトは大阪交響楽団、大フィルに続いて関西フィルでも遂に取り上げられた。しかも名手デュメイで!!10月には日本センチュリー交響楽団の定期で演奏される。

デュメイはたっぷりと豊かに歌う。繊細だが決して甘過ぎない。第2楽章は硬質な抒情があった。pp(最弱音)、ハーモニクス(倍音)の美しさが際立つ。最後は澄み切った青空に、音がスーッと消えていった。ロンド形式の第3楽章はキレッキレ。カミソリのような鋭さがあった。オケはリズミカルで弾け、間奏でデュメイが金管に向い満足そうに頷く姿も見られた。特にヴァイオリンとフルート・ソロとの掛け合いは最高!圧巻の演奏だった。嘗てデュメイはEMIや独グラモフォンから沢山のアルバムをリリースしていたが、最近はとんと音沙汰がない。是非コルンゴルトはレコーディングして貰いたいものだ。

オケコンも切れ味鋭く、緊張とその緩和のメリハリ、コントラストが鮮烈だった。第3楽章「エレジー」は夜の静寂(しじま)を切り裂く悲痛な鳥の叫び。正直、師匠である大植さんのオケコンより良かった。さすがデュメイが見込んだ男だけのことはある。プラバーヴァ、恐るべき才能だ。

この演奏会の直後、福島駅からJR環状線に飛び乗って京橋駅まで大阪桐蔭高等学校吹奏楽部を聴きに行ったのだが、それはまた、別の話。

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