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2018年5月 2日 (水)

大阪桐蔭高等学校吹奏楽部フラワーコンサート 2018と「ノートルダムの鐘」構造分析

はじめに。ここを訪れた方は吹奏楽をこよなく愛している人だと信じている。故に是非、下記事も併せてお読み頂ければ幸いである。僕からの「小さな願い」です。(I say a little prayer for you.)

さて、4月29日(日)大阪ビジネスパーク TWIN21アトリウムへ。新1年生も加わった大阪桐蔭高等学校吹奏楽部のフラワーコンサートを聴く。指揮は梅田隆司先生。僕はこの直前の16時05分までザ・シンフォニーホール@大阪市福島で関西フィルの定期演奏会(ミクロス・ローザの映画音楽やエーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲ほか)を聴いていたので、途中からの来場となった。

☆3rd Stage(16:30-17:10) マーチング

  • ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」
  • ジョン・ウィリアムズ:「スター・ウォーズ」メドレー
  • ミシェル・ルグラン:「キャラバンの到着(ロシュフォールの恋人たち)」
  • アラン・メンケン:「美女と野獣」メドレー

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Jazzyで躍動感溢れる桐蔭の「キャラバンの到着」は最高だね!胸がスカッとする。至福の時。

続いて座奏で、

  • We Are The World(歌付き)
  • リクエストコーナー:EXILEメドレー

リクエストコーナーは梅田先生がバットで打ったボールを掴んだ観客がスライドに写された50曲の中から選ぶ方式。

☆4th Stage(18:00-18:40)

  • ジャスティン・ハーウィッツ:ミュージカル「ラ・ラ・ランド」ハイライト

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映画の一場面を彷彿とさせるキャンディー・カラーの衣装がとっても素敵。

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Magic Hour(カタワレ時)にエマ・ストーン(アカデミー主演女優賞受賞)とライアン・ゴズリングがハリウッドの都(=ラ・ラ・ランド)を見下ろす丘の上で対峙するダンス・ナンバー"A Lovely Night"はアルト・サックスとユーフォニアムの対話(デュオ)に置き換えられている。

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ステージ前面に設置されたタップ板(タップボード)で男子生徒が華麗にタップ・ダンスを披露。

そしてフィナーレ。音楽がミシェル・ルグランの「シェルブールの雨傘」と完全に一体化するヴォカリーズの合唱は極上の美しさ!天国的というか、ハーモニーに宇宙的広がりを感じた(映画でも無数の煌めく星々の下でふたりがデュエットダンスする場面だ)。僕が今まで聴いてきた桐蔭サウンドの中でも間違いなくベストの瞬間であった。これは是非とも全国の人々にも聴いて貰いたい。

続いてリクエストコーナー。

  • 名探偵コナン
  • アラン・メンケン:「リトル・マーメイド」メドレー
  • 甲子園応援歌〜「グレイテスト・ショーマン」ほか

若い人は知らないと思うけれど「名探偵コナン」の音楽は「太陽にほえろ!」のテーマと瓜二つなんだ→こちらで試聴!作曲はどちらも大野克夫。つまり自己模倣ね。続けて演奏すると→こうなる

舞台ミュージカル「リトル・マーメイド」は2018年10月13日(土)より大阪四季劇場で上演される。でも海中に於けるアリエルの髪型が酷すぎて絶句した→プロモーションVTR。ありえる?否、あり得ない!

「グレイテスト・ショーマン」は映画冒頭の曲。これが野球応援歌にピッタリでびっくりした。

☆5th Stage(19:30-20:10)

  • アラン・メンケン:ミュージカル「ノートルダムの鐘」ハイライト

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ヴィクトル・ユゴーの小説「ノートルダム・ド・パリ」(ノートルダムのせむし男/ノートルダムの鐘)を社会人類学者レヴィ=ストロースの手法を用いて構造分析してみよう。

なおフロローの職業は原作で司祭だが、ディズニー版では最高裁判事に変更されている。

まず本作に認められる二項対立を挙げよう。

  • 鐘つき男カジモド(醜い、非対称)↔ノートルダム寺院(美の殿堂、ステンドグラスを含め全てが対称)/エスメラルダ(美貌)
    *これはミュージカル「オペラ座の怪人」におけるファントム(怪人)とクリスティーヌ(歌姫)の対立に相当する。
  • フロロー(聖職者、禁欲)↔エスメラルダ(ロマ〘ジプシー〙、欲望に従う)
    *ミュージカル「キャッツ」における〈長老オールド・デュトロノミー↔犯罪王マキャヴィティ〉に相当。エスメラルダはフロローの謀略により捕らえられ、魔女裁判で死刑宣告を受ける。一方、オールド・デュトロノミーはマキャヴィティに誘拐される。【逆転の変換】
  • フロロー(年寄り)↔大聖堂警備隊長フィーバス(若い)
    *「オペラ座の怪人」における〈ファントム↔ラウル・シャニュイ子爵〉の対立に相当。「キャッツ」では〈年老いた娼婦猫グリザベラ↔生まれたばかりの子猫シラバブ〉
  • ノートルダム大聖堂の鐘楼↔ジプシーの隠れ家「奇跡の法廷」【垂直方向の差異】
    *「オペラ座の怪人」における〈照明の当たる華やかな舞台(光)↔怪人が棲む地下湖(影)〉、「キャッツ」では〈天上↔地上のゴミ捨て場(夜)〉

では二項対立を結び/還流し、両者を仲介融和しようとする第三項は何か?

  • クロパン(道化でありトリックスター。境界を超え神出鬼没で、価値を転倒する者。きれいはきたない、きたないはきれい)。道化師は世界の反転を象徴するだんだら縞の衣装を着ている。
    *「キャッツ」では魔術師ミスター・ミストフェリーズ。「オペラ座の怪人」では仮面ペルソナ)。仮面を着けたファントムもマジシャンであり、神出鬼没のトリックスターだ。しかし仮面を外すと一転、その素顔は醜い老人に変わる。つまり彼には二重性があり、仮面はスイッチの役割を果たす。
  • トプシー・ターヴィー(愚者の祭り。規則を破って良い日。逆さま、無礼講。異教徒の「デュオニソスの祭り」を彷彿とさせる。デュオニソスとは豊穣と葡萄酒、酩酊の神。フローラン・シュミットが作曲した同名の吹奏楽の名曲がある
    *「オペラ座の怪人」ではマスカレード(仮面舞踏会)が相当。「キャッツ」ではジェリクル舞踏会。
  • 大聖堂の鐘の響き。それは天から地まで貫く。
    *「オペラ座の怪人」では”音楽の天使”クリスティーヌの歌声が相当。「キャッツ」ではグリザベラが歌う"Memory"。途中からシラバブが加わりハーモニーとなる。因みにシラバブはロンドン公演版でジェミマと名付けられており、そのオリジナル・キャストがサラ・ブライトマンだった(サラは後にクリスティーヌに抜擢される)。
  • 陽射し:歌詞に"Out there/Living in the sun"(太陽の光を浴びる あそこへ行きたい)とある。日光も天から地まで貫く。
    *「キャッツ」では冒頭のシラバブ誕生と最後のグリザベラ昇天で、垂直方向の一筋の光が天と地を結ぶ。

こうして分析を進めていくと、「ノートルダム・ド・パリ」「オペラ座の怪人」「キャッツ」の三者は全く同じ構造であることがご理解頂けるだろう。これが神話の構造、神話的思考である。

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続いてリクエストコーナー。

  • 美空ひばりメドレー(愛燦燦〜川の流れのように)

アンコールはご存知の定番、

  • 銀河鉄道999
  • 星に願いを

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「スリーナイン」のない桐蔭のコンサートなんて、星のない夜空のようなものだ。今回も音楽の愉しさを堪能させてもらった。

次回はそろそろ「メリー・ポピンズ」メドレーが聴けるんじゃないかと期待している。因みにロブ・マーシャル監督、エミリー・ブラント主演の映画「メリー・ポピンズ・リターンズ」北米公開は2018年12月25日。予告編はこちら

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