アカデミー外国語映画賞候補作「ラブレス」(ロシア)
評価:A
米アカデミー外国語映画賞にノミネートされたロシア映画である。カンヌ国際映画祭では審査員賞を受賞した。公式サイトはこちら。原題の「Нелюбовь」は翻訳すると「嫌いな」という意味だそうで、英題が"Loveless"。
監督はアンドレイ・ズビャギンツェフ。「ロシア映画は久しぶりだな!」と気付き、よくよく考えてみると最後に観たのは2004年に日本で公開された「父、帰る」。これもズビャギンツェフの監督作であった。何と14年ぶり!
はっきり言うが外国語映画賞を受賞したチリの「ナチュラルウーマン」より断然本作のほうが良かった。
痛ましいお話である。両親から愛されない12歳の少年という設定はフランソワ・トリュフォー監督の自伝的名作「大人は判ってくれない」(1959)を彷彿とさせる。いやしかし、アントワーヌ・ドワネル少年の境遇の方がよっぽどマシという気がする。だって母親は家にいてもず〜っとスマホの画面ばかり見ていて、少年には一瞥すらしないんだぜ?「中絶しておけばよかった」と平気で言い放つし、この家庭は地獄だね。
あと"Loveless"という英題でも判る通り、愛の不毛を描くミケランジェロ・アントニオーニ監督作品に非常に近い雰囲気をひしひしと感じた。帰宅して調べてみるとビンゴ!!ズビャギンツェフはアントニオーニの「情事」(1960)に衝撃を受け、映画監督を志したとインタビューで語っている(こちら)。また失踪した少年を探して、捜索隊が廃墟に足を踏み入れる場面では天上から水が滴り落ちていて、明らかにタルコフスキーの「ストーカー」(1981)そのものであった。
それにしてもロシアの現実には驚かされた。警察は失踪者の捜査を一切してくれず、「ボランティアで探してくれる市民グループがあるからインターネットで頼んだら?」とか言うんだ。信じられる??
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