井上道義/大フィルのショスタコ第2・3交響曲
3月9日(金)フェスティバルホールへ。
井上道義(ミッキー)/大阪フィルハーモニー交響楽団・合唱団による定期演奏会を聴く。
- バーバー:ピアノ協奏曲
(独奏 アレクサンデル・ガジェヴ)
ラフマニノフ:エチュード「音の絵」Op.39-5(ソリスト・アンコール) - ショスタコーヴィチ:交響曲第2番「十月革命に捧げる」
- ショスタコーヴィチ:交響曲第3番「メーデー」
アレクサンデル・ガジェヴはイタリア生まれの33歳。達者な演奏だった。バーバーのコンチェルトは初めて聴いたが、JAZZっぽい語法満載の面白い曲。
1927年に初演されたショスタコの交響曲第2番は作曲家が20歳の作品。第3番が23歳である。
オペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」がプラウダ批判を浴びるのが1936年、29歳の時。生命の危険を感じた彼は交響曲第4番初演を凍結し、25年間封印。代わりに用意周到に準備した第5番が熱狂的に歓迎され、名誉を回復する。
単純明快な第5番と比較すると、第2・3番はアヴァンギャルド(前衛的)で、顕著なモダニズムを示している。僕が想い出したのはその頃(大正末期から昭和初期に)日本で流行った「モボ/モガ」という言葉。モダン・ボーイとモダン・ガールの略称である。つまり若き日のショスタコは正真正銘モボだったのだ。そして後に自分に降り懸ってくる災厄など夢にも知らず、脳天気に共産主義の正義と明るい未来を信じていたことが楽曲から窺い知れる。才気煥発、過剰な音楽で、青春は爆発だ!!
「アホでも分かる」ようにするため第5番で多用されるユニゾンも、この初期の交響曲では影を潜めている。
結局プラウダ批判、そして1948年のジダーノフ批判を経て、ショスタコの音楽はどんどん変質してゆく。明るさは消え、アイロニー(皮肉)と自嘲、苦渋と諦念に満ちたものになり、最終的に晩年のヴァイオリン・ソナタとか、遺作のヴィオラ・ソナタでは感情すら喪失し、虚無だけが支配する空恐ろしい世界になる。そして音符は灰となり、雲散霧消する。
ショスタコがもしスターリン時代のソ連に生きていなければ、全然違った作曲家になったのではないか?そんなことどもを夢想しながら音楽に聴き入った。
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