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ヒュー・ジャックマンの知られざる軌跡と映画「グレイテスト・ショーマン」

評価:A

Tgs

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ミュージカル映画「グレイテスト・ショーマン」を語るために、まずはヒュー・ジャックマンの(日本では)知られざる来歴から紐解いていく必要があるだろう。

シドニー生まれのヒューはオーストラリアで、舞台ミュージカルの役者としてキャリアを積んだ。演じたのはディズニー・ミュージカル「美女と野獣」のガストンや、ロイド・ウェバーが作曲した「サンセット大通り」の主役ジョー・ギリス(映画脚本家)など。同時期にテレビにも出演していた。イギリスではオスカー・ハマースタイン2世&リチャード・ロジャースのコンビによる名作ミュージカル「オクラホマ!」に出演、好評を博した。演出は「レ・ミゼラブル」のトレヴァー・ナン。これが1998年のことである。幸いなことに映像が残されており、NHKで放送され、DVDも発売されている。「オクラホマ!」公演中に映画「X-メン」のオーディションを受け、見事ウルヴァリン役に抜擢された。「X-メン」は2000年に公開され、一躍スターダムにのし上がった。ウルヴァリン役は長期に渡りスピンオフ作品にまで律儀に付き合ったが、ハリウッドへの道を開いてくれたという恩義を感じてもいたのだろう。

ヒューはバズ・ラーマン監督の映画「ムーラン・ルージュ」(2001)のオーディションを受けたが、ユアン・マクレガーに敗れた。これは恐らく知名度の問題だったろう。その時点で「X-メン」は公開されていなかったのだから(ユアンは「スター・ウォーズ」でオビ=ワンを演じた後)。しかしいつの日か、「こういう映画に出たい!」という強い思いが残った(インタビュー記事はこちら)。結局彼はバズ・ラーマンの「オーストラリア」(2008)でニコール・キッドマンと共演するが、残念なことにこちらはミュージカルでなく(しかも駄作)、自慢の美声を映画の観客に披露する機会は中々巡ってこなかった。

ヒューは2004年ブロードウェイ・ミュージカル「ザ・ボーイ・フロム・オズ」に出演し、見事トニー賞のミュージカル主演男優賞を受賞。またトニー賞の司会を4回、2009年にはアカデミー賞の司会も務め、舞台上で歌って踊った。僕は彼のパフォーマンスを見て「この人はタキシード姿でステッキを持ったら最高に輝くんだなぁ」と理解した。

「グレイテスト・ショーマン」の企画は7年前からスタートした。ヒューが映画「レ・ミゼラブル」に出演するよりも前の話だ。「レ・ミゼ」でゴールデン・グローブ賞を受賞し、アカデミー賞の主演男優賞にもノミネートされたが、僕は彼の持ち味を十分生かせていないと感じた。ジャン・バルジャンは踊らいないし、ヒューはもっと明るい役がよく似合う。そういう意味で「グレイテスト・ショーマン」のP・T・バーナムは彼にピッタリ!

P・T・バーナムは実在する19世紀アメリカの興行師。山師(やまし)とも言える胡散臭さがあり、それは「疚(やま)しい」に通じている。しかし何と言っても魅力的なのはPositive Thinker(前向き思考の人)であることだ。

作詞・作曲はベンジ・パセック&ジャスティン・ポールのコンビ。彼らは「ラ・ラ・ランド」の作詞を担当したが(こちらの作曲はジャスティン・ハーウィッツ)、プロジェクトに参加したのは「グレイテスト・ショーマン」の方が先である。そして2017年にはブロードウェイ・ミュージカル"Dear Evan Hansen"でトニー賞の楽曲賞も受賞した。つまり「グレイテスト・ショーマン」の楽曲を書き始めた時点では全く無名だった。

昔とは違い、現在ミュージカル映画はリスクが高く、ハリウッドのスタジオも敬遠していた。しかも「シカゴ」とか「レ・ミゼラブル」のようにブロードウェイで上演された知名度のある作品ではなく、映画オリジナルである。この無謀とも言える企画を通すのは並大抵のことではなかっただろう。それをヒューはやり遂げた。

ぶっちゃけ客観的に見て本作の評価はB程度である。洗練されていないし、そもそもミュージカル・ナンバーが9曲もあるのは多すぎ。映画的に些か間延びする。1950年代に黄金期を迎えたMGMミュージカルですら、こんなに沢山歌う場面はなかった。しかし僕はヒュー・ジャックマンの溢れんばかりのミュージカル愛に気圧された。出血大サーヴィス、ご祝儀だ。ヒュー、夢が実現できて本当に良かったね。僕も何だかとっても幸せな気持ちになれた。心から「ありがとう」と言いたい。

バックステージものという点ではフレッド・アステア主演「バンド・ワゴン」を彷彿とさせるし、サーカスという点ではジーン・ケリー&ジュディー・ガーランドの「踊る海賊」だ。どちらもヴィンセント・ミネリが撮ったMGMミュージカル映画である。

アメリカのサイトRotten Tomatoes(腐ったトマト)では面白い現象が見られる。

Showman

203人のプロの評論家による肯定的意見を集計すると55%で「腐った」認定をされた。ところが一般観客の89%は肯定しており、34%もの乖離が見られる。実に珍しい。

これは評論家の評価が92%で一般客の評価が52%だった「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」と真逆である。

アメリカではSNSなどを通して口コミで評判が拡散され、興行成績がグングン伸びている。つまり「君の名は。」現象が起きた。そして日本ではぶっちぎりのロケット・スタートを切った。「レ・ミゼ」超えもありそう。

本作を一言で評すなら「見世物小屋映画」であろう。サーカスの世界であり、シルク・ドゥ・ソレイユを見ている感覚。フェデリコ・フェリーニの映画「8 1/2」の名台詞「人生は祭りだ!共に過ごそう」を想起させる。フェリーニもサーカスをこよなく愛し、「フェリーニの道化師」という作品を残している。多種多様な人がいていいんだ。「グレイテスト・ショーマン」とは、イコール a "celebration of humanity"である。

兎に角、タキシードを着たヒュー・ジャックマンが格好良すぎ!惚れ惚れする。真のエンターテイナーだ。ザック・エフロンも○。そして何より楽曲の魅力。特に"This Is Me"には打ちのめされた、バブリーダンスでも話題の大阪府立登美丘高校ダンス部によるパフォーマンスでどうぞ→こちら!!

今後ヒュー・ジャックマン主演で観たい映画。まずは何といってもミュージカル版「サンセット大通り」。そしてロジャーズ&ハマースタイン2世の「回転木馬」である(→2006年のニュース記事)。

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受信: 2018年3月 9日 (金) 10時44分

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