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2018年1月16日 (火)

ハンス・ロットの日本初演とマーラー「巨人」ハンブルク稿〜大響定期

1月12日(金)ザ・シンフォニーホールへ。

寺岡清高/大阪交響楽団で、

  • ロット:ハムレット序曲(日本初演)
  • ロット:「管弦楽のための組曲 変ロ長調」からの二章(日本初演)
  • ロット:「管弦楽のための組曲 ホ長調」からの二章
  • マーラー:交響形式による二部の音詩「巨人」(ハンブルク稿)

ハンス・ロットは交響曲第1番をこのコンビで二度聴いている。

25年という作曲家の短い生涯については上記事で詳しく語ったのでここで繰り返さない。

交響曲第1番は級友マーラーに多大な影響を与えた点でも見逃せないし、聴き応えのある佳曲だと想う。このシンフォニーは2019年2月9日、10日にパーヴォ・ヤルヴィ/NHK交響楽団が、2019年2月9日に川瀬賢太郎/神奈川フィルハーモニー管弦楽団が定期演奏会で取り上げるということで巷で話題騒然となっている。なんと同じ日に競演!!ハンス・ロット再評価(いや、新発見?)の機運は大いに高まっている(パーヴォは既にフランクフルト放送交響楽団と同曲をレコーディング済み)。

だが今回取り上げられたハムレット序曲は作曲家18歳、管弦楽のための組曲は19−20歳の頃の作品であり、習作の域を出ていない。ワーグナーやリスト(前奏曲)の影響がモロに出ており、はっきり言って駄曲。図書館規模で網羅されているナクソス・ミュージック・ライブラリーですら収録されていない有様だから、推して知るべし。

マーラー「巨人」ハンブルク稿は、楽譜が失われたブタペスト初演稿に続く、第2稿である。次のような副題が付いている。

第1部青春の日々から】 第1楽章「終わりのない春」 第2楽章「花の章」 第3楽章「順風に帆を上げて」

第2部人間喜劇】 第4楽章「カロ風の葬送行進曲」 第5楽章「地獄から天国へ」

カロ風の葬送行進曲は下の版画に触発されたもの。

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森に棲む動物たちが、(本来は自分たちを殺す存在である)狩人を埋葬しようとしているという倒錯した情景が描かれている。

第3(決定)稿との一番大きな違いは「花の章」がカットされたことだろう。勿論「花の章」がオマケとして付いた「巨人」のCDは持っているし、大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏で実演を(アンコールとして)聴いたこともある。しかしラトル/バーミンガム市響のCDなどは「巨人」とは別枠で「花の章」が収録されており、第2楽章という中に組み込まれた形で聴くのは今回が初めて。今までとは全く違った景色が見えてきた。甘い香り。青春の儚さ、その光と影といったものがより鮮明に浮かび上がってきたのである。僕は決定稿よりハンブルク稿の方が好きかも。

ただ演奏の方は粗さが目立った(特に終楽章)。児玉宏が大響の音楽監督を務めていた時は定期会員になり毎月足を運んでいたが(夢のような時代)、外山雄三がミュージック・アドバイザーに就任して以降はプログラムの内容といい全く魅力のないオケに成り下がってしまった。今やデュメイ音楽監督の下で弦楽アンサンブルを鍛えられた関西フィルの方が実力が上ではないだろうか?大響もそろそろ目を覚ました方がいい。

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