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2018年1月28日 (日)

#クラシック名曲マイベスト10

Twitterのハッシュタグで #クラシック名曲マイベスト10 というのがあって、これを眺めているだけでもすこぶる愉しい。多種多様。書き手の「人となり」が窺い知れる。

ある種の傾向も見えてくる。オーケストラ曲(協奏曲含む)やピアノ曲ばかり聴いている人が結構多い(室内楽少なっ!)とか、メンデルスゾーンやサン=サーンスが不人気とか。

ぶっちゃけ星の数ほどある名曲の中から10選ぶなんて不可能。無茶振りだ。しかし話の種としては面白い。「へーそんなに良いんだ。一度聴いてみよう」という切っ掛けになるかも知れない。よって僕も参戦することにした。

これはお遊び、ゲームだ。そしてゲームには規則が要る。僕がこういうときに重視するのはバランス感覚である。偏らないこと。そこで2つのルールを設定した。

  1. 一作曲家一作品とする。
  2. 交響曲・管弦楽曲・協奏曲・室内楽・器楽・歌劇・歌曲・音楽史(ルネサンス〜バロック期)とすべてのジャンルを網羅する。

その結果、次のようなラインナップとなった。

  • コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲
  • フランツ・シュミット:交響曲第4番
  • J.S.バッハ:マタイ受難曲
  • ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第14番
  • プーランク:フルート・ソナタ
  • 武満徹:系図 ―若い人たちのための音楽詩―
  • ディーリアス:夏の夕べ(「3つの小さな音詩」より)
  • ワーグナー:楽劇「ニーベルングの指環」
    (または「トリスタンとイゾルデ」
  • ドビュッシー:2つのアラベスク
  • シューベルト:歌曲集「冬の旅」
    (または歌曲「魔王」「水の上で歌う」「影法師Doppelgänger

コルンゴルトフランツ・シュミットについては下記事をお読みください。

J.S.バッハに関してはマタイ受難曲をゴルトベルク変奏曲無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ、あるいは無伴奏チェロ組曲に置換可。

ベートーヴェンの最高傑作も、弦楽四重奏曲第14,15番大フーガ後期ビアノ・ソナタ第30−32番のどれにするか決めかねる。

プーランクピアノ協奏曲もとても美しくて好き。

武満徹系図( Family Tree )は少女の語り手とオーケストラのための作品である。テキストは谷川俊太郎の詩集「はだか」。僕は日本初演を果たした遠野凪子(当時15歳)の語りが一番好き。上白石萌歌とかも演じており、異色なところでは京都市交響楽団定期演奏会の吉行和子!!あのぉ、少女じゃないんですけれど……。

夏になると無性に聴きたくなるのがディーリアスの音詩(Tone Poem)。「夏の歌」「夏の庭園で」にも置換可。

ニーベルングの指環」の歴史的意義/後世への多大な影響については下記事で詳しく述べた。

印象派を代表して、玻璃のように繊細なドビュッシーのピアノ曲を。「」とか「月の光」に置換可。オーケストラ曲「牧神の午後への前奏曲」や、無伴奏フルート独奏曲「シランクス(パンの笛)」もいいね。

シューベルトは当初、後期ピアノ・ソナタ第19−21番を挙げようと計画していた。しかしふと、思い直した。シューベルトと言えば「歌曲王」。それを避けて通るのはいくらなんでも失礼、外道の所業だろう。「冬の旅」は暗く、悲痛である。若くして梅毒に感染し、死の恐怖に怯えながら生き、(当時の治療法だった)水銀中毒により31歳の若さで亡くなった作曲家の人生と、「冬の旅」の主人公はピタッと重なる。

魔王」は18歳の時に作曲された劇的な傑作。「水の上で歌う」は映画「バトル・ロワイヤル」で印象的に使われていた。また「ドッペルゲンガー(二重身)」をテーマにベルイマン監督の映画「仮面/ペルソナ」やデヴィッド・フィンチャー「ファイト・クラブ」、ドゥニ・ヴィルヌーヴ「複製された男」が創られた。

続いてMore 10 (Another version)を挙げよう。

  • シベリウス:交響曲第7番
  • ヴェルディ:歌劇「シモン・ボッカネグラ」
  • ドヴォルザーク:ピアノ三重奏曲第4番「ドゥムキー」
  • チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の思い出に」
  • モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番
    (またはアダージョとフーガ K.546、交響曲第25番
  • マーラー:交響曲第9番
  • サティ:ジムノペディ(または「あんたが欲しいのジュ・トゥ・
  • ブラームス:弦楽五重奏曲第2番
  • フランク:ヴァイオリン・ソナタ
  • ベルク:ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」

シベリウスは後期交響曲第4,5,6番のどれもいいなぁ。迷う。

ヴェルディのオペラは「椿姫」「ドン・カルロ」「アイーダ」「仮面舞踏会」「オテロ」など傑作が数多(あまた)あるが、僕は「シモン・ボッカネグラ」にとどめを刺す。指揮者クラウディオ・アバドがこよなく愛した作品でもある。

ドヴォルザークからは民族色に溢れた、またチャイコフスキーからは哀しみに満ちた室内楽を選んだ。

モーツァルトピアノ・ソナタは第3楽章「トルコ行進曲」で有名だが、はっきり言ってどうでもいい。このソナタの白眉は第1楽章 変奏曲である。何ともInnnocent(無垢)な気持ちになる。僕が小学校4年生の頃、母に買ってもらったイングリット・ヘブラーが弾くLPレコードに収録されており(併録はソナタ8番と9番)、繰り返し聴いた。モーツァルトの真髄は長調から短調に転調する瞬間にある。そこに神が宿る。

マーラー第9番にはこの世への執着/未練を示した「大地の歌」を経て、諦念と浄化がある。最後にはひたすら青い空が広がり、清々しい気持ちになれる。未完に終わった第10番も良い。

ブラームス交響曲第4番も迷ったけれど、ここは室内楽の名手を讃えて。ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」も捨てがたい魅力がある。

裏ベスト

  • アレグリ:ミゼレーレ(無伴奏合唱曲)
  • テレマン:フルートとリコーダーのための協奏曲
  • ブルックナー:交響曲第7番
  • レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ:交響曲第3番(または第5番)
  • ラヴェル:序奏とアレグロ(七重奏曲)
  • エルガー:チェロ協奏曲
    (または
    弦楽四重奏×弦楽合奏による序奏とアレグロ
  • メシアン:世の終わりのための四重奏曲
  • グラナドス:スペイン舞曲集より「オリエンタル」「アンダルーサ」
  • バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第2番
    (または弦楽四重奏曲第4,5番
  • ヤナーチェク:歌劇「利口な女狐の物語」
    (または弦楽四重奏曲第1,2番

ローマのシスティーナ礼拝堂で歌われ、楽譜が門外不出の秘曲だった「ミゼレーレ」を14歳だったモーツァルトが二度聴いただけで正確に採譜したというのは余りにも有名なエピソードである。透明感あふれるタリス・スコラーズの合唱でどうぞ。

ヴォーン・ウィリアムズについては下記記事をお読みください。

ラヴェル序奏とアレグロはNHK BS プレミアム「クラシック倶楽部」のオープニングテーマに採用されている。

エルガーのチェロ協奏曲はデュプレ×バルビローリの、火の玉と化した壮絶な演奏をお聴きあれ。

グラナドスオリエンタル」「アンダルーサ」は勿論オリジナルのピアノも良いのだが、是非ギター編曲版も聴いて欲しい。あと映画「エル・スール」は必見。

バルトークコンチェルトは冒頭のヴァイオリン独奏を聴くと、否応なく「嗚呼、ハンガリーだなぁ」としみじみ想う。

ヤナーチェクは色っぽいね。弦楽四重奏曲第2番「ないしょの手紙」は不倫音楽だ。

次点

  • ベルリオーズ:幻想交響曲
  • フォーレ:レクイエム
  • シューマン:子供の情景
    (またはノヴェレッテ第1番
  • メンデルスゾーン:劇付随音楽「夏の夜の夢」
    (またはピアノ三重奏曲第1番
  • ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」
  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第8番
    (またはヴァイオリン/ヴィオラ・ソナタ
  • プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」
    (または交響曲第7番
  • ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー
  • ハワード・ハンソン:交響曲第2番「ロマンティック」
  • モンポウ「内なる印象」(特に第8曲「秘密」が白眉)

オイストラフ60歳の誕生日のために作曲されたショスタコーヴィチヴァイオリン・ソナタと、遺作となったヴィオラ・ソナタは無機質というか、空恐ろしい虚無の音楽である。殆どの聴き手は拒絶反応を示すのではないだろうか?でも作曲家の心の深淵を覗き込むような体験が出来る、稀有な作品と言えるだろう。

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