映画「否定と肯定」
評価:B+
原題はDenial、「否定」。公式サイトはこちら。
1996年に起こった実話である。「ホロコースト否定論」を主張するイギリスの歴史家デビッド・アービングが、彼を非難したアメリカ在住のユダヤ人歴史学者デボラ・E・リップシュタットを名誉毀損で訴えた裁判の顛末を描いている。歴史の真実を裁判で争うという点で大変興味深い事例である。
イギリスでの裁判には莫大な費用がかかるので、93年に「シンドラーのリスト」を撮ったスティーブン・スピルバーグは彼女に資金援助したという。そのエピソードも劇中に出てくる。
日本の左翼の連中がこの映画に勢い付いて「それ見たことか!(いわゆる)従軍慰安婦問題における日本の主張も、ホロコーストは無かったと言う歴史修正主義者と同じじゃないか」と得意げに主張しているのだが、片腹痛い。(いわゆる)従軍慰安婦問題について日本政府は韓国人の慰安婦がいたことを否定していない。韓国側と日本側の争点は、【日本軍が慰安婦を強制連行したのか、それとも(本人には知らせずこっそり)親が金で売ったのか】の一点に絞られている。ここを見失ってはいけない。そして現在、彼女たちが強制連行されたという証拠は一切ないのである。歴史修正主義者とはむしろ、虚偽の報道をして国際問題にまで発展させた朝日新聞社のことであろう(後に過ちを認め紙面で謝罪。しかし時既に遅し)。
レイチェル・ワイズ演じる主人公は正直、いけ好かない女で全く共感出来なかったが、原告と被告のどちらに立証責任があるかという米国と英国における司法制度の違いも分かり、すこぶる面白かった。弁護士役のトム・ウィルキンソン、アービング役のティモシー・スポールらベテランが重厚で味わい深い演技を見せてくれた。
しかし裁判よりも印象深かったのは、リップシュタットと彼女の弁護団がアウシュヴィッツ強制収容所を訪れる場面である。魂が吸い込まれそうな、寂寞として空恐ろしい風景であった。
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