トロイ戦争は起こらない@兵庫芸文
10月26日(木)兵庫県立芸術文化センターにて「トロイ戦争は起こらない」を観劇。
作:ジャン・ジロドゥ/演出:栗山民也/出演:鈴木亮平、一路真輝、鈴木杏、谷田歩ほか。新国立劇場のプロダクションである。
ジロドゥ(1882-1944)は劇作家であると同時にフランスの外交官でもあった。1939年に第二次世界大戦が勃発した時にはダラディエ首相に請われ情報局長となり、ラジオ放送でナチスと対峙。しかし40年にドイツ軍が侵入し、内閣の退陣とともに辞職した。その後はレジスタンスに身を投じた。
「トロイ戦争は起こらない」は1935年に初演。日本では浅利慶太演出で57年に劇団四季が初演している。ちなみに劇団四季が初演したジロドゥの戯曲は「オンディーヌ」「テッサ」など9作品に及ぶ。アドルフ・ヒトラーが首相に任命されるのは33年。同年に早速、ドイツでナチ党以外の政党の存続・結成が禁止された。ベルリン・オリンピックが36年。風雲急を告げる時代に本作は産声をあげた。
上演時間2時間25分。一瞬たりとも退屈することなく、夢中になって目を凝らした。テーマは〈果たして戦争は回避できるのか?〉という問いに集約される。そこに劇の背景にあるファシズムの台頭、外交官としてのジロドゥの苦悩が滲み込む。この二重構造は薬師丸ひろ子が舞台の新人女優を演じた映画「Wの悲劇」(演出家役で蜷川幸雄が出演している)に重なるところがある。
ミュージカル「デスノート」と本作で栗山民也の演出にほとほと感心したので、ジャン・アヌイ作、蒼井優・生瀬勝久 主演の「アンチゴーヌ」をロームシアター京都に観に行くことに決めた!ちなみち「アンチゴーヌ」も劇団四季が上演している。
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コメント
この作品をだいぶ前、四季が上演した時、京都劇場で見ました。流石に四季、こういうものをやらせると素晴らしいものでした。四季の役者は朗唱をと言うのが出来ていますから。
ところで、今回の上演での役名はどうなっていましたか?僕の見た四季の上演ではフランス語読みでしたが。
投稿: 最後のダンス | 2017年11月30日 (木) 22時52分
最後のダンスさん
エクトール、エレーヌ、アンドロマック、カッサンドル。ジロドゥの作品ですから、言わずもがなフランス語読みです。むしろ質問の意図が解せません。
劇団四季は元々、ジロドゥ、アヌイなど20世紀フランス演劇をやりたくて浅利慶太、日下武史らが立ち上げた学生演劇集団が母体ですから気合が違いますよね。浅利は「劇団員を食わせるためにミュージカルを始めた」と公言して憚らない人ですから、ミュージカルをカラオケ上演してもへっちゃらというスタンスなわけで……。
投稿: 雅哉 | 2017年11月30日 (木) 23時22分
四季でこの芝居を見たとき、いちいち「エレーヌ→トロイのヘレネ」「ユリス→オデゥッセウス」「エクトール→ヘクトール」と頭の中で「翻訳」していたのですが、だんだん面倒になってきました。それで、登場人物の名前はは元のままと言うような「親切」な上演ではなかったのか、と思って聞いてみました。
僕はこの上演には食指が動いたのですが、このキャストでは「朗唱」ができるか不安だったので止めました。でも、僕の不安は杞憂に終わったようですね。四季で見た時、ジロドゥはドイツと戦いたくないのだと思いました。
投稿: 最後のダンス | 2017年12月 2日 (土) 09時50分
最後のダンスさん
例えばドニゼッティのオペラ「マリア・ストゥアルダ」の役名はエリザベッタ(エリザベス)、マリア・ストゥアルダ(メアリー・スチュアート)ですが、英国で上演される時もドニゼッティのリブレットを尊重して上演されます。アヌイの「アンチゴーヌ」もアンチゴーヌ(アンチゴネー)、クレオン(クレオーン)ですよね。初演された国の読み方を尊重するのが演劇の基本だと思います。
投稿: 雅哉 | 2017年12月 3日 (日) 18時32分