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2017年10月

藤岡幸夫✕松田華音:グリーグとシベリウスの世界〜関西フィル定期

10月19日(木)ザ・シンフォニーホールへ。

Kan

藤岡幸夫/関西フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会を聴く。

  • 大島ミチル:《Sama》空から、そして空へ 世界初演
  • グリーグ:ピアノ協奏曲
  • シベリウス:交響曲 第5番

独奏は日本人ピアニストとして初めて名門レーベル・グラモフォンからデビューした松田華音。彼女は6歳の時にモスクワに渡り、以来そこで研鑽を積んでいる。

大島ミチルは長崎県出身、フランス在住。「失楽園」、平成「ゴジラ」シリーズ、「阿修羅のごとく」「明日の記憶」など映画音楽の作曲家として知られている。Samaとはアラビア語で「空」の意味。イラク出身の少女が「イラクに住んでいた時は戦闘機が飛び爆弾が落ちてくるので空を見上げることができなかった」と書いているのを読み、霊感を得たという。

3楽章構成で第1楽章「空から」は金管が叫び声を上げる。激しく打ち鳴らされるティンパニ。何処かで聴いたことがある雰囲気の曲だなと想っていたが、途中で気が付いた。レナード・バーンスタインが映画「波止場」(エリア・カザン監督)のために書いた音楽だ(特にティンパニの連打)。全体として悪くはないが、もう一度聴きたいとは想わないな。

松田華音がグリーグを弾くのはこれが初めてだそう。力強くダイナミック、完璧なテクニック。

シベリウスが日記に書いた16羽の白鳥(銀色のリボン)との邂逅については既に下記事に引用したのでここでは繰り返さない。

藤岡/関西フィルの《シベリウス・ツィクルス》は毎年聴いてきたが、今回も世界最高レベルの演奏に魅了された。やはり藤岡が故・渡邉暁雄(母がフィンランド人でシベリウスを得意とした)の薫陶を受けたことは大きいのだが、それだけではなく、このコンビにはジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団からの流れを汲む側面も毎回強く感じる。ハレ管も関西フィル同様、一地方オケ(マンチェスターに本拠地を置く)だし、藤岡は英国で学び、ハレ管にもしばしば客演している。故にバルビローリの”気配”が間違いなく音楽に漂っているのだ。

交響曲第5番は4楽章構成で1915年に初演された。その後も推敲を重ね、19年に第3稿改訂版が完成した。第3稿では第1,2楽章を融合し、3楽章構成に変更されている。初稿版はヴァンスカ/ラハティ交響楽団がBISにレコーディングしており、僕もCDを所有している。こちらのバージョンも決して悪くない。

さて第1楽章は清冽で、音楽はのびやかに滔々と流れる。(初稿の第2楽章に当たる)後半はリズミカルになり、推進力をグングン増す。

朴訥な第2楽章を聴きながら、低弦が第3楽章に登場する【白鳥の動機】を密やかに予告していることに今回初めて気が付いた!!

そしてフィンランドの森と湖が眼前に広がる第3楽章は躍動し、生の歓びに満ちていた。感無量である。

今後、藤岡/関西フィルで是非聴きたい曲を最後にリクエストしておく。

  • シベリウス:クレルヴォ交響曲
  • シベリウス:レンミンカイネン組曲
  • シベリウス:交響詩「タピオラ」
  • エルガー:(弦楽四重奏を伴う弦楽合奏のための)「序奏とアレグロ」
  • ディーリアス:幻想曲「夏の庭で」「夏の歌」
  • ディーリアス:歌劇「村のロメオとジュリエット」
          (演奏会形式/全曲)

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映画「ドリーム」レビューと、邦題が起爆剤となった大炎上について

評価:A

Hiddenfigures

映画公式サイトはこちら

原題は"Hidden Figures"つまり「隠された姿」という意味で、NASAでアポロ計画に先立つマーキュリー(有人宇宙飛行)計画に携わった3人の黒人女性にスポットライトを当てる。アメリカ本国で興行収入は「ラ・ラ・ランド」を上回ったという。アカデミー作品賞ノミネート。また全米俳優組合賞では作品賞に該当するキャスト(アンサンブル演技)賞を受賞した。

元々日本の映画宣伝部が考案したのは「ドリーム 私たちのアポロ計画」だった。

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ところがこの邦題を巡ってSNSで大炎上!「マーキュリー計画」なのに「アポロ計画」は変じゃないかと抗議が殺到したのである。「マーキュリー計画」は日本人に馴染みがないというのが宣伝部の言い分だった。事態は一向に収まる気配がなく、結局タイトルはシンプルに「ドリーム」に変更となったのである。ネット民の一方的勝利であった。しかし「ドリーム」じゃ全く意味不明だな。まぁ一時期は日本公開も危ぶまれていただけに、たとえ炎上商法であろうが話題になることは良いことだ。やはりアカデミー作品賞にノミネートされたデンゼル・ワシントン製作・監督・主演「フェンス」は本邦で劇場未公開のままビデオ(DVD)スルーとなってしまったのだから。

「マーキュリー計画」を描いた映画では「ライトスタッフ」(1983)という不朽の名作があるので、未見の方には是非是非ご覧になることをお勧めしたい。

「ドリーム」は兎に角、痛快な実話である。胸がスカッとする。女性映画として極めて上等といえるだろう。

ケビン・コスナーを本当に久しぶりに見た!調べてみると僕が最後に観た彼の映画が1994年の「ワイアット・アープ」だから、実に23年ぶり。昔は嫌いだったけど、脇に回って味が出てきた。

本作の男たちは「前例がない」と口々に言い、女性・黒人に対する差別を平然と続ける。しかし「前例」は自分たちで作り、歴史に名を刻めばいいと映画の作者たちは力強く語るのだ。カッケー!

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