映画「三度目の殺人」の哲学的問い
評価:A
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「そして父になる」の是枝裕和が原案・脚本・編集・監督を担当した「三度目の殺人」には哲学的問いがある。ひとつは【人が人を裁くことは可能なのか?(法廷で真実は明かされるのか?)】、もうひとつは【生まれてこなかった方が良かった人間はいるか?】である。僕は後者に対してYes.と答える。アドルフ・ヒトラー、ポル・ポト、ヨシフ・スターリンらがその代表格であろう。しかし反面、ナチス・ドイツは人類に大きな問いを残した。それは【人はどこまで残酷になり得るのか?】ということ。我々は生涯をかけて、この問いを自問し続けなければならない。
真相は最後まで藪の中。そういう意味で本作は「羅生門」形式と言える。面白いのは加害者(役所広司)も被害者も、そして弁護士(福山雅治)も一人娘がいるという設定である。このことから同情や共感、共犯関係が生まれる。弁護士は当初真実には何の興味もなく、依頼人(被告)の減刑しか考えていない。ところが……予想外の展開が観客を待ち構えている。役所広司が怪演。レクター博士並みの不気味さで秀逸だ。広瀬すずのキャスティングもドンピシャ!
本来、検察官(検事)と弁護士は敵対関係にあり、裁判官は中立の立場の筈。しかし三者には阿吽(あ・うん)の呼吸があり、以心伝心で共謀することもあるという皮肉。裁判制度に一石を投じる奥深い映画だ。
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