当ブログはアニメーション映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」を全身全霊で応援します!
岩井俊二(脚本・監督)「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」はフジテレビ「If もしも」シリーズの一つとして1993年8月19日に放送された。そして岩井監督はテレビドラマとしては異例の日本映画監督協会新人賞に選ばれた。僕は再構成され劇場公開されたバージョンを95年に岡山のミニシアター「シネマ・クレール」で観た。その時の衝撃は鮮烈に憶えているのだが、同時上映で別の岩井映画を観た筈なのに、全く記憶から吹き飛んでいた。調べてみると「undo」らしい……「undo」?何それ??……出演者の欄を見ると山口智子と豊川悦司とある。そこで朧気にトヨエツが山口をロープで縛る画面が浮かび上がってきた。そうか、確かに観たっけ……。
それくらい「打ち上げ花火」に打ちのめされ、後は夢うつつ(トランス状態)だったということだ。
その後、岩井俊二を最新作「リップヴァンウィンクルの花嫁」まで追いかけてきたが、未だに「打ち上げ花火」を超える作品にめぐり逢えていない。唯一無二、紛れもなく彼の最高傑作である。
- 我が生涯、最愛の映画(オールタイム・ベスト)について語ろう。(その1) 2014.10.29
僕にとって「打ち上げ花火」は聖なる映画だ。奥菜恵が眩いばかりの閃光を発したのは後にも先にもこれしかない。それは「LOVE LETTER」の酒井美紀、「花とアリス」の蒼井優にも言えること。岩井俊二は少女が最高に輝く瞬間を捉え、フィルムに永遠に封印する能力に長けた映画作家である。「20世紀ノスタルジア」の原将人監督が「広末涼子は女優菩薩である」と絶賛しているのを聞いて笑っちゃったのだが、「打ち上げ花火」の奥菜恵(限定)にも同じことが言えるだろう(人のことは笑えない)。
REMEDIOSの歌「Forever Friends」も忘れ難い。プールの水面に浮かび上がった奥菜恵が最初は深刻な表情をしているのだが、ふっと笑顔になる。その瞬間にこの曲が掛かるのだ。冴え渡る岩井演出。そしてオキメグは水の煌めきの中に消えてゆく。まるで人魚かセイレーン、ウンディーネ(水の精)のように。岩井俊二が「ウォーレスの人魚」という小説(映画「ACRI」原作)を書いているのは決して偶然ではない。
この時オキメグは主人公の少年に「今度会えるの2学期だね。楽しみだね」と言う(しかしその日は来ない)。これは新海誠のアニメ映画「秒速5センチメートル」(2007)で明里が踏切で言う「隆貴くん、来年も一緒に桜、見れるといいね」に呼応する(しかしその日はやはり来ない)。「秒速5センチメートル」には岩井映画へのオマージュが散りばめられていて、図書館の場面なんか、もろに「LOVE LETTER」である。近年、岩井と新海は急接近し、岩井のアニメ「花とアリス殺人事件」にはspecial thanksとして新海が、また「君の名は。」には岩井の名前がエンドロールでクレジットされている。
月日は流れ2010年、テレビ東京でドラマ「モテキ」が放送された。脚本・監督は大根仁。その第2話で森山未來と満島ひかりが「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」の聖地巡礼をする。当然「Forever Friends」も流れる。ロケ地の千葉県飯岡町まで行きキャメラを持ちはしゃぐ満島を見ながら僕は腹を抱えて笑い転げ、「君は僕だ!」と画面に向かって叫んだ。大林宣彦監督「尾道三部作」のロケ地巡りをした自分自身の姿が彼女に重なったのである。この回を見たスタッフから岩井監督に話が伝わり、後に岩井監督と大根監督の対談が実現。ふたりは意気投合し、「打ち上げ花火」アニメーション化の企画が持ち上がった時に岩井監督はシナリオライターとして大根を指名した。そのアニメ版は今年8月18日に公開される。公式サイトはこちら。
「君の名は。」を大ヒットさせた敏腕プロデューサー川村元気はアニメ「化物語」「魔法少女まどか☆マギカ」を観て、 新房昭之監督と是非いつか組みたいと考えていたという。しかし手ぶらで会いに行くわけには行かないので「打ち上げ花火」アニメ化というアイディアを携えて懇請すると、快諾を得た。それにしても岩井俊二・大根仁・新房昭之という3人の鬼才が一同に会すとは壮観である。その仕掛け人・川村元気に対し、快哉を叫びたい(川村と大根は既に「モテキ」「バクマン。」で組んでいる)。
岩井版の上映時間は45分。今回の尺は少なくとも倍以上になる筈であり、大根仁の腕の見せ所である。どうも予告編を見るとオリジナル版では時間を遡行しパラレルワールド(並行世界)に入り込むのが1回なのに対し、アニメ版ではそれが繰り返されるようだ。もしかしたら映画「恋はデジャ・ブ(原題:Groundhog Day)」みたいな感じかも!?
- 「魔法少女まどか☆マギカ」を語ろう! 2012.03.14
- 劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 【前編】 始まりの物語 2012.10.09
- 劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 【後編】 永遠の物語 2012.10.16
- 劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語 2013.10.27
- 反転する物語~「魔法少女まどか☆マギカ」の魅力 2013.11.19
世紀の大傑作「まどマギ」については上記事で語り尽くしたのでもう十分だろう。ついでに新房監督の〈物語〉シリーズについても触れておこう。「化物語」から始まる〈物語〉シリーズの原作は西尾維新。「化」は現在、Amazonのプライム・ビデオやNetflixで観ることが出来るので、是非お勧めしたい。ただ物語の順番としては劇場公開された「傷物語」の方が先なので、「傷」からが良いかも。「傷物語」→「化物語」→「偽物語」→「猫物語(黒)」の順で観るのがベスト。新房演出の真骨頂は画面に交錯する縦と横(と斜め)の直線。そして円・楕円・四角形・菱形などシンボリックな記号の横溢である。スタイリッシュなのだ。
〈物語〉シリーズは一言で評すならハーレムの話である。主人公の阿良々木暦はモテモテ男子で、メガネっ娘・巨乳・ツンデレ・ボーイッシュ(百合系)・ロリ少女・(文字通りの)妹など、ありとあらゆるタイプの女子から愛される。ヲタクの夢がここでは実体化している。まぁそんな内容だから女性ファンが皆無に等しい作品でもある(逆ハーレムの少女漫画「王家の紋章」が男子に人気がないのと同じこと)。
アニメ版「打ち上げ花火」製作発表では広瀬すずが声を当てた「なずなはエロい」という発言が相次いだが、〈物語〉シリーズも相当エロい。エロスを描かせると新房昭之の右に出るものはいないだろう。因みにアニメ版「打ち上げ花火」のキャラクターデザインは〈物語〉シリーズの渡辺明夫。そして「化物語」のツンデレ女子・戦場ヶ原ひたぎとなずなの容姿はよく似ている。
なお新房昭之は2002-4年に南澤十八という秘密のペンネームで「アンバランス」など5作品のアダルト・アニメ(18禁)を演出している。そして2004年に監督した「月詠」からアニメーション制作会社シャフトに拠点を移した。
最後に。アニメ版で「Forever Friends」が流れなかった嫌だなぁと思っていたら、どうやらDAOKOがカヴァーして歌っているようだ(岩井俊二が飯岡町で撮ったMVはこちら)。またREMEDIOSの「Forever Friends」は伴奏がギターとトライアングル以外シンセサイザーなのだが、今回のアニメ版は本物の弦楽器が演奏している。音に厚みが増した。至れり尽くせりだ。川村プロデューサー、本当にありがとう!そしてどうか、映画が大ヒットしますように。
| 固定リンク | 0
「Cinema Paradiso」カテゴリの記事
- 石原さとみの熱い叫びを聴け! 映画「ミッシング」(+上坂あゆ美の短歌)(2024.06.10)
- 映画「オッペンハイマー」と、湯川秀樹が詠んだ短歌(2024.06.15)
- デューン 砂の惑星PART2(2024.04.02)
- 大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会2024(「サウンド・オブ・ミュージック」「オペラ座の怪人」のおもひでぽろぽろ)(2024.04.01)
- 2024年 アカデミー賞総括(宴のあとで)(2024.03.15)
コメント