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2017年8月26日 (土)

【考察】アニメ映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」最後に何が起こったか?

要注意!!ネタバレあります。

アニメーション映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」の巷での評判が散々だ。特に「どういうこと!?」「意味が判らない!!」と罵詈雑言を浴びせられているのがラストシーンである。シナリオを書いた大根仁が自らノベライゼーションした小説版を読んでも、結末が違う(海の場面で終わり)。そこでどういう可能性が考えられるか、僕なりにいくつか挙げていこう。

仮説1)典道はなずなのもとに向かい、本当に駆け落ちした。

つまり【もしも玉】が粉々になった時写っていた、東京でのふたりの【(if)もしも】を実行したのである。

仮説2)典道はなずなが【もしも玉】を拾い、彼とキスをした浜辺に行き、彼女との想い出に耽っている。

綺麗な終わり方だけれど、何だか凡庸だ。

仮説3)典道はなずなに籠絡され、今でも延々とループを繰返している(新学期という時間に到達していない)。

この物語を表面的に眺めると、典道の意志で【(if)もしも】を繰返しているように見える。しかし果たしてそうだろうか?そもそも典道に【もしも玉】を渡したのはなずなである。プールの場面も不自然だ。どうしてなずなはスクール水着を来てプールサイドに横たわっていたのか?事前に掃除当番が誰かは把握していた筈だ。つまり端から典道(か祐介)を誘惑する気だったのではないか?そうすると彼女の台詞「私にはママのbitchな血が流れている」が意味深に響いてくる。典道は傀儡(操り人形)に過ぎず、全て主導権はなずなが握っているのだ。なずな=魔女witchbitchと一字違い)なら、【もしも玉】=ソウルジェム(グリーフシード)だ。詳しくは新房昭之監督の「魔法少女まどか☆マギカ」をご参照あれ。最後に【もしも玉】は粉々になってしまったがソウルジェム(グリーフシード)なら複数個あっても不自然じゃない。「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」は登場人物全員がラムの夢に翻弄される物語だった。「まどマギ」の場合は暁美ほむら。ループする物語はいつも、女性が主導権を握っている。

仮説4)結果的に映画の冒頭で暗示されているように典道は海で溺死したが、そのことはなずな以外誰も知らない。

最も悪魔的解釈である。ここで、

典道「ふたりで死ぬの?」
なずな「それは心中でしょ。か・け・お・ち」

という会話が生きてくる。終盤でなずなが先に海に入り、視線で典道を誘う。ローレライ伝説を想い出して欲しい。水の精となった彼女の声は漁師を誘惑し、破滅へと導く。またギリシャ神話に登場する海の怪物セイレーンは岩礁から美しい歌声で航行中の人を惑わし、遭難や難破に遭わせるのだ。セイレーンは鳥の姿をしている。そしてなずなの衣装にも羽がある

Sirene

また浜辺に打ち上げられたなずなの父親の溺死体が【もしも玉】を持っていたことが、この説に信憑性を与えている。 つまり【(if)もしも】の世界は、人が死の間際に見る、走馬灯のように巡る風景とも解釈出来るだろう(走馬灯もループする)。

仮説5)【もしも玉】の力で、なずなが転校しない世界にたどり着いた。二人は授業を抜け出し、校舎の周りを駆けている(教室内のシーンの直前にふたりの人影が映る)。

これはインターネット上で見かけた説だが、ぼくは賛同しかねる。何故なら及川(おいかわ)なずな→島田典道(しまだのりみち)。つまり三浦先生が出席を取る際に、あいうえお順で典道の前になずなの名前が呼ばれる筈だからである。

Q.E.D. 考察は以上で終了。

この度2回目の鑑賞をし、1回目より更に深く感銘を受けた。特に「〈物語〉シリーズ」も担当した神前暁(こうさきさとる)の音楽。典道が初めて【もしも玉】を投げる直前だけ、ミニマル・ミュージック(パターン化された非常に短い音型を反復させる音楽)になるのである。つまり、その後に展開されるループする物語を予告しているわけだ。

上記事でループものはニーチェが「ツァラトゥストラはかく語りき」で論じた永劫回帰(えいごうかいき)に繋がっているのではないかと書いた。典道は駅でなずなに「跳ぶぞ!」と言う。そしてふたりは電車の中で踊る。

ツァラトゥストラは、ダンスをする。ツァラトゥストラは、軽い。翼で合図をする。飛ぶ準備ができている。すべての鳥に合図して、いつでも飛び立てる。至福で軽く仕上がっているのだから。 (丘沢静也訳「ツァラトゥストラ」光文社古典新訳文庫より)

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コメント

こんばんは、コメントありがとうございました。
この種の映画は作り手からの謎かけのようなもので、色々考えたくなりますよね。
コメント欄に返信を書いておきました。
まあ、一般受けはしそうにない映画だとは思いますが、見えるものだけ受け取って「意味不明」って感想が多すぎるのには、もうちょっとリテラシーを高めなさいと思っちゃいます。

投稿: ノラネコ | 2017年8月27日 (日) 17時54分

ノラネコさん、コメントありがとうございます。「桐島、部活やめるってよ」が公開された時も、高校生を中心に「わけわからん!」と散々言われました。キューブリックの「2001年宇宙の旅」が公開された当時もこんな感じだったのではないでしょうか?「2001年」はキューブリックがわざと正解を隠すためにナレーション/インタビューなどによる説明を徹底的に省いていったわけですが、芸術ってそれで良いんじゃないかなって想います。1つしか答えがないなんて、詰まらないじゃないですか。

投稿: 雅哉 | 2017年8月27日 (日) 19時03分

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青春は、何度でもループする。 なるほど、こう来たか。 オリジナルは、1993年にフジテレビのオムニバス形式のTVドラマ「if もしも」の一編として放送された作品だが、好評すぎて2年後の95年には劇場公開され、”映画監督”岩井俊二の出世作となった伝説的な名作だ。 「if もしも」は、人生の分岐点でもしも別の選択をしたら?という所から、枝分かれした2つの物語がそれぞれ描かれるのが番組の...... [続きを読む]

受信: 2017年8月27日 (日) 17時49分

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