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ループする物語〜アニメーション映画「打ち上げ花火、横から見るか?下から見るか?」

評価:A

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Fire

先ずはこちらからご一読を。

結論から言えばアニメ版は岩井俊二(監督)の実写オリジナル版を超えることが出来なかったし、「〈物語〉シリーズ」の渡辺明夫がキャラクターデザインを担当したなずなはたしかにエロくて魅力的だが、奥菜恵の神々しいまでの輝きには到底敵わない。そして虚淵玄(脚本)新房昭之(監督)「魔法少女まどか☆マギカ」ほどの衝撃もない。それでも僕はこの作品が好きだ。愛おしい。

それにしてもアニメ版のポスターを見たときからなずなが「〈物語〉シリーズ」のツンデレ女子・戦場ヶ原ひたぎによく似ているなぁと想っていたのだが、クラス担任の三浦先生が想定外の巨乳で、「〈物語〉シリーズ」の羽川翼そっくりだったから驚いた。ちなみに三浦先生の声を担当する花澤香菜は、新海誠監督「君の名は。」でも先生役だったが、「〈物語〉シリーズ」ではロリ系美少女・千石撫子を担当している。そのギャップが凄い。また三浦先生の彼氏を演じる櫻井孝宏は「〈物語〉シリーズ」で怪異の専門家・忍野メメの声を当てている。

オリジナル版(45分)で時間を逆戻りするのは1回。しかしアニメ版(90分)は岩井のアイディアで「もしも玉」というガジェット(小道具・仕掛け)を新たに登場させ、主人公・典道は何度も時間を遡行する。

映画史的に言えば、時間ループのアイディアを発明したのは押井守監督「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」(1984)である。SF小説で有名なのはケン・グリムウッドの「リプレイ」だが、こちらの出版は1987年。「ビューティフル・ドリーマー」の方が先なのだ。実写映画ではビル・マーレイ主演「恋はデジャ・ブ Groundhog Day」(1993)が名作中の名作。「ビューティフル・ドリーマー」以降、アニメで時間ループものは一つの確固としたジャンルとなり、京都アニメーション制作の「涼宮ハルヒの憂鬱」の"エンドレスエイト"では何と同一エピソードが計8回もTV放送された!また「魔法少女まどか☆マギカ」も同ジャンルと言えるだろう。

そして「ループもの」の原点に遡ると、哲学者フリードリヒ・ニーチェが「ツァラトゥストラはかく語りき」で提示した永劫回帰(えいごうかいき)の思想に辿り着くというのが僕の考えである。永劫回帰するには超人的な意思を要するが、「打ち上げ花火」で意思する者は言うまでもなく典道である(「まどマギ」の場合は暁美ほむら)。

今回新機軸だなと想ったのは、「ループもの」は基本的にいつも同じ時刻に戻るのだが、「打ち上げ花火」はだんだん戻る時刻がズレていく。「三百六十五歩のマーチ」みたいに《三歩進んで 二歩さがる》感じ。つまり厳密に言えば「ループ」ではなく「らせん」構造に近い。それを典道が通う中学校の螺旋階段が象徴している。(ところで途中から風力発電の風車が逆回転してる??)

あと「モテキ」「バクマン。」の大根仁監督が書いたシナリオが優れているなと感心したのはオリジナル版で典道なずなが乗れなかった電車に、ふたりを乗せてあげたこと。それにより、元から裏設定としてあった宮沢賢治「銀河鉄道の夜」との関係がより鮮明になった。

映画前半はオリジナル版を忠実になぞり、特に駆け落ちしようとしたなずなを母親が無理やり連れ戻す場面はアングルもカット割りも完璧に一致している。ところが後半から本作は大胆にジャンプし、全く違った世界に辿り着くのだ。そこが賛否の別れるところだろう(僕は○)。

新房監督は相変わらずスタイリッシュ。画面を横断・縦断する直線、斜線、円・楕円・長方形・菱形など幾何学模様が横溢している(そもそも花火や灯台の光源、そして「もしも玉」は球体だしね)。またなずなの目をクローズアップした演出がアニメ独特の表現法で、ミステリアスな雰囲気を醸し出すことに成功している(目も球体だ)。

最後に、

上記事で僕はアニメーション映画が大ヒットする(化ける)か否かを決めるのは観客の女性率が3割を超えるラインにあると自説を披露した。では「打ち上げ花火、横から見るか?下から見るか?」公開初日はどうだったか?僕の目算では男性率9割5部!劇場版「まどマギ」と同じ水準。女子の支持を全く得られていない。う〜ん、これはちょっと厳しいかも……。

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