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笑福亭鶴笑 IN ナカノシマ大学寄席「奇想天外の落語 ーあたま山 VS 理論物理学ー」

7月12日(木)大阪大学中之島センターへ。

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  • 笑福亭鶴笑:落語「あたま山」
  • 高島幸次大阪天満宮文化研究所員、大阪大学招聘教授):講演
  • 橋本幸士(大阪大学教授、理論物理学者):講義
  • 鶴笑・橋本・高島:鼎談

落語「頭山」はシュールな江戸落語である。上方では小佐田定雄が脚色し、桂枝雀が「さくらんぼ」として演じた。現在ではその弟子の雀々が受け継いでいる。また山村浩二がこれを基に短編アニメを作成し、アヌシー国際アニメーション映画祭で最高グランプリを受賞、ザグレブ・広島のアニメーション映画祭でもグランプリを受賞し三冠を達成した。米アカデミー賞にもノミネートされている。

まず司会の高島招聘教授から挨拶があり、「鶴笑師匠は奇想天外なパペット落語を演る奇人です。橋本教授は天才。二人の対決をお楽しみに」と。

鶴笑登場。師匠の笑福亭松鶴は「芸は人に教わるもんやない。盗むもんや」と言っていた。そして入門当初に習った「平林(たいらばやし)」が如何にへんてこりんな落語かを語った。

続いて枝雀のショート落語(SR)「スビバセンおじさん」から、

おじさんが大きな穴を掘っているので訊ねると、誰かがここに深い大きな穴があると言ったので、それを一生懸命探しているという。

日に一本ずつ煙突が増える工場。何の工場かと訊けば、煙突の工場でないかとの答え。

プラグをコンセントに差し込んだり抜いたりしても、電灯が点かない。「見てみ。あのおっちゃん、さっきから頭がピカッと光ったり消えたりしとるで」

などを披露。

「あたま山」はまず物語を一通り演じ、続けて森山直太朗の歌「さくら」に乗せ、サイレント(パントマイム)のパペット落語に移行した。秀逸。場内爆笑。

高島教授は【死を考える】落語として「胴斬り」「首提灯」「粗忽長屋」を挙げた。一人称の死・二人称の死・三人称の死があるが、いつも我々が体験するのは二人称の死。「されど死ぬのはいつも他人」(マルセル・デュシャン)。一方、【異国を訪ねる】落語があり、その代表格が「一眼国」「地獄八景亡者戯」「松山鏡」。江戸時代には見世物小屋で七面鏡(詳しくはこちら)が話題となっており、「松山鏡」にはその影響が伺える。そしてその源流は恐らくスウィフトの「ガリヴァー旅行記」だろう(「ガリヴァー旅行記」には日本が登場する)。また「あたま山」の原話は吉田兼好「徒然草」〜”堀池の僧正”のエピソードではないかと。

橋本教授はサンダル履き、半袖半ズボン姿で登場。「これが理論物理学者の普通の恰好です」と。全宇宙は17の素粒子のみで構成されていると説明し、「宇宙を支配する数式」を示した。

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音も素粒子で構成されているという。

続いて「物理学の手法」を解説。

  1. 問題の抽出
  2. 定義の明確化
  3. 理論による演繹

「頭山」の場合、1.自分の頭の上に出来た池に溺れるとはどういう状況か? 2.「溺れる」の定義は頭の周囲が水に覆われる状態である。3.重力が下向きに作用するという状態が、問題解決を困難にしている。→ならば、「宇宙に逃げた」ならどうか?無重力なら水は球体になる。→数式により顔の表面が1cm幅ですっぽり水に覆われた状態になり得る。Q.E.D.証明終了。

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座談会ではまず平田オリザ作「素粒子の世界」という落語があることが話題に。そして鶴笑の「パペット落語」が生まれた背景について司会者から質問あり。落語ブームが到来するまで(「タイガー&ドラゴン」「ちりとてちん」放送以前)は落語会に来る客が5−6人なんてことはザラだった。吉本興業に所属する鶴笑は「心斎橋筋2丁目劇場」(1986年開業 - 99年閉館)に出演していた。ダウンタウンの絶頂期だった。マネージャーから「落語はいらんねん」と言われた。自分がステージに上がると客はトイレ休憩するために出ていった。そんな中で格闘しながら思いついたのが人形を使うことだった。「膝小僧」という言葉もあるし、膝も活用しよう。そして現在、「パペット落語」のネタは30に達した。イラクやアフガニスタンの難民キャンプでも公演した。「笑いは世界の共通語」。しかし、人が安心しないと笑いは生まれない。機関銃を持った兵士に守られている場所ではなかなか難しいなどといったことを語った。

ここで司会者が呼びかけ、会場で聴いていた精神科医のMr.X(事情があって名は明かせない)が加わった。「粗忽長屋」などは統合失調症の患者に典型的な自我障害であると。「私を飛び越える」行為と言える。理論物理学者を見ていると、そういう自我からポーンと遠くに飛び越えることを普段からやっているのではないか?しかし学者は自在に元の場所に戻ってこれる。患者はコントロールが効かない(戻れない)。そこに違いがあるのだろうと。橋本教授は「そういえば理論物理学者は車の運転をしちゃいけないと言われています」と答えた。ふと我に返ると赤信号を通り過ぎちゃったということがあるそう。

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最後に。 橋本教授が着ているのは【反り牛=そりゅうし】Tシャツだって!

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