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インバル/大フィルのマーラー交響曲第6番「悲劇的」とダンテ「神曲」

7月27日(木)フェスティバルホールへ。

エリアフ・インバル/大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏で、

  • マーラー:交響曲第6番「悲劇的」

を聴く。インバルによる同曲の演奏は1989年11月12日(日曜日)に手兵フランクフルトフランクフルト放送交響楽団との来日公演で聴いている。場所はザ・シンフォニーホール。あれから28年経った。僕が第6番の実演に接するのはこれが5回目。内訳はインバル2回、佐渡裕、大植英次、サロネンである。

まずは下記事をお読み頂きたい。

しばしば第2楽章、第3楽章の曲順が問題になるのだが、インバルは従来通りスケルツォ→アンダンテを採用。終楽章のハンマーは2回振り下ろされた。

今回聴きながら強く感じたのは、この曲にはダンテが書いた「神曲」の影響があるのではないか?ということ。第4楽章はどう考えても「地獄篇Inferno」だろう。その序奏(アレグロ・モデラート)は世界が天国と地獄に分離される前の混沌chaosのようにも聴こえるし、「神曲」に即すなら小説の冒頭、地獄の門をくぐる前の暗い森とも言える。因みに西洋の物語における森とは無意識(夢)のメタファーだ。

「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」

そして第3楽章(アンダンテ・モデラート)は「天国篇Paradiso」。マーラーにとってのベアトリーチェ(永遠の淑女)は言うまでもなく妻アルマのことである。余談だが宮﨑駿監督のアニメーション映画「風立ちぬ」の物語も「神曲」に基づいている。ラストシーンで堀越二郎(=ダンテ)とカプローニ(=案内人・古代ローマの詩人ウェルギリウス)が立っているのは煉獄であり、そこに亡くなった菜穂子(=ベアトリーチェ)が天国から迎えに来る。

閑話休題。ここでどうして「神曲」を持ち出したかというと、ちゃんと根拠がある。マーラー未完の交響曲第10番 第3楽章のスケッチには「煉獄Purgatorio(または地獄Inferno)」と書かれており、(または地獄Inferno)の部分に消された跡があるのだ。

さて、インバル/大フィルの演奏について語ろう。第1楽章は指揮者の冷徹な眼差しが光る。行進曲のリズムは明快で、低弦は殺伐とした雰囲気があり、目の前のものをバッサバッサと容赦なく切断しながら前進する。第2主題(アルマのテーマ)は決して甘美にならず、決然と鳴り響く。空恐ろしい世界。第2楽章スケルツォも力強く律動し、鋭いアクセントで誇張された音楽。第3楽章アンダンテ・モデラートは速めのテンポで流れ、決して粘らない。そしてやって来ました終楽章の地獄篇。僕は円谷プロが制作しTBSで放送された「怪奇大作戦」(1968-9)の主題歌「恐怖の町」(作詞:金城哲夫、作曲:山本直純)の歌詞を想い出した。

闇をひきさく あやしい悲鳴
誰だ 誰だ 誰だ
悪魔が 今夜もさわぐのか

迫力満点、聴き応えたっぷりのコンサートだった。

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