石丸幹二&堀内敬子(久々の)共演、そして衝撃的傑作!〜ミュージカル「パレード」
6月8日(木)最近はテレビ朝日「題名のない音楽会」で司会を務める石丸幹二と、堀内敬子が出演する舞台「パレード」を梅田芸術劇場で観劇した。
ふたりの共演を観るのは1999年5月〜7月に四季劇場[秋]@東京で上演されたロイド=ウェバーのミュージカル「アスペクツ・オブ・ラブ」以来。この時の主な出演者は石丸幹二(アレックス)、保坂知寿(ローズ)、光枝明彦(ジョージ)、井料瑠美(ジュリエッタ)、堀内敬子(ジェニー)だった。考えてみればこの5人は全員、既に劇団四季を退団している。
ミュージカル「パレード」は1913年アメリカ南部のアトランタを舞台にユダヤ人差別を背景にした冤罪事件(実話)を描いているが、非常に似た話で映画「死刑台のメロディ」(1971)がある。これは1920年アメリカ北部マサチューセッツ州で実際に起こったイタリア移民サッコとヴァンゼッティ冤罪事件を扱っている。
救いのない、陰惨な物語で、よくぞこれをミュージカルにしたな!と。トニー賞で最優秀台本賞、楽曲(作詞・作曲)賞を受賞したのが1999年だから、日本初演までに18年も掛かったんだね。石丸幹二は以前より、本作への出演を熱望していたという。
楽曲のほうは2015年12月「プリンス・オブ・ブロードウェイ」で既に聴いていて、素敵だなと想っていた。
ブロードウェイの公演は12月17日に開幕し、翌年2月28日に公演終了となっているので、2ヶ月半。決してヒットしたとは言えないだろう。
演出は新進気鋭の森新太郎40歳、若い。ミュージカルを手がけるのは初めてだそうだが、盆(回転舞台)を駆使し、スピード感ある演出で舌を巻いた。ボタボタと塊で落ちてくる紙吹雪の量も半端ない(暴力的とすら言える)。コイツは天才だ!冒頭と最後は真っ赤な夕日を背景に一本の木が聳え立っているのだが、夕日は血の色であり、木はビリー・ホリデイの歌で有名な「奇妙な果実」(木にぶら下がる黒人の死体のこと/集団リンチ殺人・私刑)を彷彿とさせる。その象徴性が上手いなと感心した。ちょっと「風と共に去りぬ」的でもある(やはり舞台はアトランタ)。
ジェイソン・ロバート・ブラウンの音楽は喋るように歌うのがスティーヴン・ソンドハイムに似ている(調べてみると初演を演出したハロルド・プリンスは当初、ソンドハイムにこの企画を持ち込んだが、断られたそう)。他に有名なのは映画化もされた「ラスト5イヤーズ」だろう。でも「パレード」の方が断然良かった。ディキシーランド・ジャズやブルースなどのエッセンスも加味されている。
ブロードウェイの新作でこれだけインパクトがあり、鳥肌が立ったのは「春のめざめ」以来かも知れない。
- 「春のめざめ」と現代ブロードウェイ・ミュージカル論
(2009年9月@東京)
再演があれば是非また観たい。
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