《宝塚便り》サヨナラ公演と白装束
5月29日(月)朝6時45分頃、宝塚大劇場正門前の光景である。
この日は宝塚雪組公演「幕末太陽傳」の千秋楽で、トップスター:早霧せいなと、トップ娘役:咲妃みゆのサヨナラ公演でもある。
白い服(会服)に身を包んでいるのは、スターの私設ファンクラブの人たちだ。デイリースポーツの報道によると、元トップスターの榛名由梨が1988年(昭和63年)12月31日付で卒業した時にはこのような風習はなかったという。つまり白装束一色に染まるようになったのは元号が平成になって以降ということになる。面白いのは上・下お揃いの白を着ているのがトップのファンだけではないということ。2番手・3番手・4番手などの男役のファンも追従している。
正に日本独特の風景であり、良く言えば「協調性がある」、悪く言えば「同調圧力(または仲間集団圧力)」ということになるだろう。すべてを包み込む、あるいは飲み込むという特徴がある母性社会日本に於いては、場の平衡を保つことが重要視される(参考文献:臨床心理学者・河合隼雄著「母性社会日本の病理」)。異端者は排除される。出る杭は打たれるのだ。ヅカファンが大劇場のことを「ムラ」と表現するのはむべなるかな。
公演は13時から。ではどうして皆こんなに朝早くから来ているのかというと、スターの(楽屋への)入り待ちをしているのだ。整列して「今日も1日舞台頑張って、行ってらっしゃい」などと全員で唱和して送り出す儀式が日々行われている。勿論、出待ちもある。
この白装束一色と同様に、日本的だなぁと感じるのはパフォーマーの群舞である。これは宝塚歌劇に限らず劇団四季や東宝もそうなのだが、日本のダンサーたちの群舞はピタッと揃っている。ところがブロードウェイでミュージカルを観たり(例えば「フォッシー」)、英国ロイヤル・バレエ団の公演を観たりすると、これが意外とバラバラなのである。ひとりひとりが個性を出そう、他者を出し抜いて目立とうと必死にもがいている。つまり欧米人はあくまで個人主義なのだ。しかしこれにも例外はあり、ロシアのマリインスキー・バレエの群舞は一糸乱れず完璧に統一されている。お国柄の違いがあって面白い。
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