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宝塚歌劇団演出家のエース、小池修一郎のライフワーク「ポーの一族」遂に始動!(主演:明日海りお)

2008年、僕は「蒼いくちづけ」と小池修一郎論の中で、こう書いた。

小池さんのドラキュラへの偏愛は今回よく分かった。是非お次は、萩尾望都の漫画「ポーの一族」をミュージカル化してください。

そしてその願いは遂に叶ったのである!宝塚歌劇団は2018年1月に花組で、小池修一郎作・演出によるミュージカル「ポーの一族」を上演すると発表した。

小池は以前より吸血鬼ものに並々ならぬ執着を示していた。バウホールの「蒼いくちづけ」、大劇場の「薔薇の封印」、そして「ローン・ウルフ」@バウは狼男の物語であり、そのバリエーションと言える。

今回の一連の報道で初めて知ったのだが、小池が萩尾望都に「ポーの一族」舞台化を初めて持ちかけたのは1985年だったという。彼の演出家デビュー作「ヴァレンチノ 〜愛の彷徨〜」バウ初演が1986年。つまりデビュー前から執念を燃やしていたことになる。いや、そりゃあ全く実績がなく、海の物とも山の物ともつかぬ若造から「ポーの一族」を手がけたいと言われても萩尾が断るのは当然だよな。それでも小池は諦めなかった。しつこく32年間も交渉を続けたのである。

漫画「ポーの一族」(小学館文庫)第1巻のあとがきを小池が書いていて(「バンパネラの封印」)、次のような一文から始まる。

私を宝塚歌劇団に送り込んだのは萩尾望都である。

激烈である。そして胸熱だ。しかし考えてみれば確かにヨーロッパを舞台にした「ポーの一族」を脚色・演出するチャンスがあるのは宝塚歌劇団しかない。劇団四季や大人計画では無理。正に彼のライフワークと言えるだろう。

僕が日本の漫画史上に燦然と輝く不朽の名作「ポーの一族」を読む切っ掛けを作ってくれたのは金子修介監督(平成ガメラシリーズ、「デスノート」)の「1999年の夏休み」だった。

1999_2

1988年に公開された映画で、深津絵里のデビュー作である(当時は水原里絵と名乗っていた)。山と森に囲まれ、世間から隔絶された全寮制の学校を舞台に、14、15歳の少年たちが織りなす愛憎劇。その4人の少年を少女が演じるというコンセプトが宝塚的であった。「1999年の夏休み」の原案が萩尾望都の「トーマの心臓」(映画にはクレジットされていない)。これで興味を持ち「トーマの心臓」を読んだらすこぶる面白かったので、続けて「ポーの一族」や「半神」に手を伸ばし、打ちのめされた

萩尾は今まで「ポーの一族」舞台化を拒んできたわけだが、「トーマの心臓」は劇団スタジオライフが繰り返し上演している(1996年初演)。「半神」は萩尾と劇作家・野田秀樹が台本を書き、夢の遊眠社が1986年に初演。劇団解散後、99年野田地図(NODA MAP)公演では深津絵里が出演している。2014年には韓国人キャストでも上演された。また宝塚歌劇団は萩尾の漫画「アメリカン・パイ」を原作に、バウ・ミュージカルとして上演している。

「ポーの一族」については粘り強い交渉の結果、遂に萩尾が折れたわけだが、それだけ待った甲斐はあった。小池は演出家として成熟し、エドガー役に明日海りおという、これ以上ない理想のキャスティングを得た。あとは肝心要の音楽だけだ(未発表)。もうここまで来たら世界を目指すしかない。その為にも僕の希望を述べておく。

  1. ジェラール・プレスギュルヴィック:小池演出「ロミオとジュリエット」の作曲家。宝塚歌劇オリジナル作品として小池の台本・演出「眠らない男 ナポレオン」も手掛けている。フランスの作曲家らしく、どんどん転調していく作風が耽美な「ポーの一族」の雰囲気にピッタリ。一押し!
  2. シルヴェスター・リーヴァイ:ハンガリーの作曲家。泣く子も黙る「エリザベート」「モーツァルト!」で余りにも有名。日本発のミュージカルでは遠藤周作原作「マリー・アントワネット M.A.」や「王家の紋章」を作曲。「マリー・アントワネット」はドイツのブレーメン、韓国、ハンガリーのブタペストでも上演された。
  3. フランク・ワイルドホーン:ブロードウェイ・ミュージカル「ジキル&ハイド」「スカーレット・ピンパーネル」で知られる。小池の台本・演出で「NEVER SAY GOODBY」「MITSUKO 〜愛は国境を超えて〜」を作曲。「NEVER SAY GOODBY」で出会った和央ようかと結婚。「デスノート THE MUSICAL」も傑作。
  4. リチャード・オベラッカー:小池台本・演出「グレート・ギャツビー」リニューアル版を作曲。"BANDSTAND"というミュージカルでブロードウェイ・デビューを果たした。

Bandstand

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コメント

僕も小池修一郎が「ポーの一族」を宝塚歌劇にすると知って興味津々です。
ただ、不安が・・・
彼の台本は出来不出来の差が激しい、その上に、やりすぎると言う悪い癖があります。そのやり過ぎが良い方に向かえば良いのですけど、悪くすると客席であきれかえると言う事になります。
作曲は、リーバイ、ワイルドホーン、プレスギュルビックの誰でも良いと思います。

投稿: 最後のダンス | 2017年5月27日 (土) 09時32分

最後のダンスさん

仰るとおり、彼の台本はピンからキリまでですよね。しかし駄作しかない石田昌也や谷 正純よりよっぽどマシ。ライフワーク「ポーの一族」は絶対too muchはありません。そこは大船に乗った気持ちでいきましょう。

作曲家の選定は慎重にして欲しいものです。しょーもない座付き作曲家(例えば「薔薇の封印」の吉田優子や「銀河英雄伝説」「るろうに剣心」の太田健)だけは勘弁して貰いたいですね。

それから「ポーの一族」は永遠の命を有する者が時代を超越する話ですから「ベルばら」の”オスカル編”や”フェルゼンとマリー・アントワネット編”みたいに、ヒットすれば様々なバージョンを創って増殖させることも可能です。そういう展開も今後期待しています。

投稿: 雅哉 | 2017年5月27日 (土) 09時51分

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