「キングコング:髑髏島の巨神」IMAX 3D
評価:A+
怪獣映画としては史上最高レベルの作品ではないだろうか?「ゴジラ」1954年版に匹敵する。
公式サイトはこちら。
ジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督は現在32歳。「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼルと同い年である。本作の前に「キングス・オブ・サマー」という長編が一本あるだけ。兎に角、キングコング✕フランシス・フォード・コッポラ監督「地獄の黙示録」というコンセプトにぶっ飛んだ!!映画会社のレジェンダリーやワーナー・ブラザースは「それはクレイジーだ。オッケー、そのバージョンで作ろう」と言ったそう。サミュエル・L・ジャクソン演じるパッカード大佐は「地獄の黙示録」のキルゴア中佐(ロバート・デュバル)そのものだし、ヘリコプター隊は『ワルキューレの騎行』の代わりにハードロック(ブラック・サバスの『パラノイド』)をスピーカーから大音量で流す。主人公コンラッドの名前は「地獄〜」の原作小説「闇の奥」を書いたジョセフ・コンラッドから来ており、ジャングルで待ち受けているマーロウは「闇の奥」に登場する船乗りの名前だ。また水爆の恐怖を描くスタンリー・キューブリック監督の「博士の異常な愛情」のエンディングでヴェラ・リンが歌った『また会いましょう』が「髑髏島の巨神」でも最後に流される。
日本兵グンペイ・イカリの名前は『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジとゲームクリエイター横井軍平(任天堂でゲームボーイを開発)から採られている。映画序盤、ヘリコプターで嵐の雲の中に突入する場面は「天空の城ラピュタ」竜の巣を彷彿とさせるし、「エヴァ」の使徒サキエルと「千と千尋の神隠し」のカオナシをモチーフにしたクリーチャーが登場。さらに東宝の「キングコング対ゴジラ」(1962)でコングが大ダコと闘う場面も再現される。兎に角、監督のオタクっぷりが凄い。経験のない若いクリエイターにこれだけの大作(a big budget movie)を任せ見事成功した、肝が据わった製作陣を讃えたい。考えてみれば同じレジェンダリーの「GODZILLA ゴジラ」(2014)でギャレス・エドワーズに託したケースも同様だった(ギャレスはその前に「モンスターズ/地球外生命体」2010しか撮っていない)。
1933年の「キングコング」から【髑髏島でのコングと美女の心の交流→コングの捕獲→船でニューヨークへ→コングが暴れエンパイヤ・ステート・ビルへ→飛行機で銃撃し、コング転落】という基本プロットは1976年のジョン・ギラーミン監督版、2005年のピーター・ジャクソン監督版でも踏襲された。しかし今回は慣習に縛られず舞台は髑髏島のみ。ただしコングが美女を手のひらに乗せる場面や鎖でがんじがらめになる場面により、オリジナルへの敬意が払われている。
かっけーサミュエル叔父貴がタランティーノの「パルプ・フィクション」で26回、「ジャッキー・ブラウン」では37回言った決め台詞 "Motherfucker" (英語圏における全てのメディアで禁止用語となっている)をこの映画で言えるのか?にも注目!
なおエンドクレジットの後で明らかにされるのだが、2019年に公開予定の"Godzilla: King of Monsters"にはゴジラ、ラドン、モスラ、キングギドラが登場するようだ。愉しみだね。
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