映画「3月のライオン」前編
評価:B+
映画公式サイトはこちら。
羽海野チカの漫画「3月のライオン」はまずNHKでアニメ版が放送された。監督・シリーズ構成は「魔法少女まどか☆マギカ」で一世を風靡した鬼才・新房昭之。2017年夏には劇場版アニメ「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」(原作:岩井俊二)が控えている。そちらの公式サイトはこれ。
「3月のライオン」実写映画化は「るろうに剣心」の大友啓史監督、神木隆之介主演(桐山零)で実現した。神木くんは「るろ剣」にも出演している。今回は死んだ魚のような目が素晴らしい!
兎に角、キャストが適材適所で目を瞠った。主人公の義理の姉・香子(きょうこ)を演じる有村架純、美人三姉妹を演じる倉科カナ、清原果耶、新津ちせ(「君の名は」新海誠監督の娘)、プロ棋士を演じる加瀬亮、佐々木蔵之介、伊藤英明らがマンガのイメージを些かも損なうことなく、生き生きとスクリーンに息づいている。「男はつらいよ」の前田吟も東京の下町がよく似合う。ただ特殊メイクで肥満体に変身した染谷将太には些か違和感があった。
アニメでは20話分が、実写版は2時間18分の上演時間内で一気に進行するのだが、駆け足感は微塵もない。むしろじっくりと人物が描かれている印象を受ける。アニメ版も確かに傑作なのだが、気になったのは主人公のモノローグが非常に多いことと、盤上の展開が事細かに描写されること。将棋を知らない者にとってはチンプンカンプンで退屈だ。しかし映画の方は試合の場面でも殆ど盤上を写さない。むしろ棋士の表情をアップで捉え、凝視する。そこに底知れないスリリングな人間ドラマが生まれるのだ。モノローグがバッサリ、カットされているのもいい。
映画で次女ひなたを演じた清原果耶は素晴らしかったが、アニメ版で声を当てたのが映画「君の名は」「言の葉の庭」の”ユキちゃん先生(雪野百香里)”こと花澤香菜。こっちの声もとっても可愛くて甲乙つけ難い。あと三女モモ役の新津ちせだが、劇団ひまわりのプロフィール写真を見たときは如何なものか?と首を傾げたが、スクリーンで動いている姿を見ると違和感なく、川本家にしっくり溶け込んでいた。親(新海誠)の七光りなんか関係なく、申し分ないキャスティングである。
桐山零が一人暮らしするマンション@六月町は隅田川の直ぐ側で、水の底にいるような青い照明が基調となっている。そこに将棋盤がぽつんと暖色で浮かび上がる。そして川向うの川本家三姉妹が住む家@三月町は完全に暖色(茶色〜褐色=肌色)の世界として描かれる。つまり一人ぼっちの零にとって将棋と三姉妹だけが救いなのだろう。
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