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2017年2月22日 (水)

ミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」はどうして日本で大ヒットしたのか?(あるいは、GAGAに物申す)

この記事を書いている時点で、ミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」は日本で上映されていない(2月24日より)。でもね、蓋を開けてから分析したって、そんなのは所詮コロンブスの卵。誰にだって出来る。「君の名は。」を見てごらん。公開前は誰一人これだけの爆発的ヒットを予想出来なかったくせに、したり顔の「識者」たちが後から後から蛆のように湧いてきて、得意気に語り始めた。それまで新海誠の名前すら知らなかったくせに。みっともない。だから僕は未来予想図で語る。

僕が一番恐れるのは「ラ・ラ・ランド」がアカデミー賞を総なめにしたから大ヒットしたんだという論調。これを認めてしまうと今後も日本で外国映画の公開がどんどん遅れてしまう。

「ラ・ラ・ランド」の公開は世界で日本が一番遅い。配給したGAGA株式会社映画宣伝部の頭が古いからだ。実にけしからん。台湾や韓国、タイ、インドでは既に昨年の12月から公開されており、フィリピンでは1月11日、中国では2月14日に封切られた。どうして日本だけこんなに遅いのか?それは未だに「オスカー効果」があると宣伝部の連中が頑なに信じているからだ。因みに今年のアカデミー賞授賞式は現地時間で2月26日、日本では27日である。

「クレイマー、クレイマー」(1979)の頃、「オスカー効果」は確かにあった。スピルバーグの「シンドラーのリスト」(94)を僕はアカデミー賞授賞式の前日に映画館で観たが、その日は余裕で座れた。ところがアカデミー作品賞や監督賞を受賞するやいなや映画館は人混みで溢れかえり、立ち見したとか入場出来ずにすごすご帰ってきたとかいった話を沢山耳にしたものだ。だからアカデミー賞に絡みそうな映画は公開日を2月下旬以降に延ばすという手法が日本では定着し、未だに顧みられていない。ではその法則は2017年でも通用するのだろうか?

まずこちらの資料を御覧頂きたい→アカデミー作品賞の「神通力」、日本では風前の灯か(Yahoo ! ニュース)。

  • 2011年 アーティスト 4.8億円
  • 2012年 アルゴ 3.2億円
  • 2013年 それでも夜は明ける 4億円
  • 2014年 バードマン 5億円

これが作品賞を受賞した映画の日本での興行収入である。昨年の「スポットライト 世紀のスクープ」といい、全くヒットしていないと言って良い。これなら授賞式と関係なく早々に公開していたとしても大きく変わりはしなかったろう。逆に映画「タイタニック」(1997)の日本公開日は12月20日であり(日米同時)、アカデミー賞とは無関係に大ヒットしている(興行収入262億円)。

昨年公開された話題作「シン・ゴジラ」「君の名は。」「この世界の片隅に」が当たった主な原因はSNSによる口コミである。公開初週よりも2週目、3週目の方が成績が伸びていることに特徴がある。今は作品が良ければヒットする時代なのだ。

だから「ラ・ラ・ランド」も必ず当たるが、それは「オスカー効果」とは無関係だ。SNSで評判がどんどん拡散されていった結果である。

「ラ・ラ・ランド」の大ヒットは映画「レ・ミゼラブル」(興収59.3億円)や「アナと雪の女王」(興収254億円)のそれに似ている。つまりミュージカルであり、何より楽曲がいいのだ。ミュージカルには中毒性があり、熱心なリピーターを生みやすい。「あの高揚感に何度でも浸りたい!」、グルーヴ(groove)を多くの観客と分かち合いたいという気持ちになるんだよね。それは舞台ミュージカル版「レ・ミゼラブル」も同じだ。「君の名は。」だってRADWIMPSによる4つの歌がなければ、これだけ大爆発することはなかっただろう。グルーヴ(groove)&没入感こそがキーワードなのである。

今年のアカデミー作品賞は9作品ノミネートされているが、2月22日現在、日本では1本も公開されていない。これは異常事態である。映画配給会社の皆さん、どうか態度を改め、もっと柔軟で速やかな対応をお願いします。目を覚ましてください。時代は変わったのです。

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コメント

「ラ・ラ・ランド」は、今日から公開ですね。楽しみです。
他の公開作品は5月とか6月とか…
「Hidden Figures」は、アメリカでは「ラ・ラ・ランド」よりも当たっているらしいのに、日本では公開の予定すら立ってないらしいですね。
それに比べたら「ラ・ラ・ランド」はマシなのかもしれません。

投稿: ものび | 2017年2月24日 (金) 15時08分

ものびさん、コメントありがとうございます。

アカデミー賞の作品賞でノミネートされている9作品のうち、今日公開の「ラ・ラ・ランド」以外で日本で観れるのはNetflixが製作した「最後の追跡」だけです。つい最近、僕はNetflixに加入したので、近々我が家のテレビ(〈ブラビア〉ネットチャンネル)で愉しみたいと想います。

投稿: 雅哉 | 2017年2月24日 (金) 15時52分

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