100パーセントのミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」@IMAX!!
評価:AAA
掛け値なし、パーフェクトな映画。文句のつけようがない。公式サイトはこちら。
ロサンゼルスのフリーウェイを通行止めにし、ワンシーン・ワンカットの長回しで撮った冒頭のナンバー♪Another Day of Sun♪(歌詞付き試聴はこちら)は最初、交通渋滞のカーステレオからチャイコフスキー(ロシア)が作曲した序曲「1812年」やヴェルディ(イタリア)のオペラ「椿姫」第1幕の合唱曲が聴こえてくる。カメラがずーっと横にパンしていくとそれがジャスティン・ハーウィッツが作曲した躍動感溢れるJAZZに変わってゆく。そして皆が車を降りて歌って踊り出すわけだが、ヒップホップ・ダンスあり、フラメンコありと世界中からロスに集ってくる人々の多様性を示している。なんという高揚感だろう!また主人公セブが車の中で繰り返し聴いているカセット・テープはセロニアス・モンクがピアノを弾く「荒城の月」(Japanese Folk Song)だ。
ジャスティン・ハーウィッツは次のように語っている。
“One of our favorite movies is The Young Girls of Rochefort. After The Umbrellas of Cherbourg, it was the next Jacques Demy/Michel Legrand musical, and that movie opens with — in that case it’s just dance. There’s no singing but it’s this big world-establishing number with great dancing and big orchestration. That’s always been one of the favorite scores for me and Damien in the way that Legrand was able to marry a jazz rhythm section, and in some cases a jazz big band, with a full blown romantic orchestra and do it in such a danceable way. — Justin Hurwitz in Variety
要約すると「僕と監督のデイミアンはジャック・ドゥミが『シェルブールの雨傘』の後、ミッシェル・ルグランとの再コラボレーションで撮ったミュージカル『ロシュフォールの恋人たち』が大好きで、♪Another Day of Sun♪は『ロシュフォール』冒頭♪キャラバンの到着♪へのオマージュなんだ」ということ。なお、「ロシュフォールの恋人たち」にはハリウッドからジーン・ケリーも参加している。
また♪キャラバンの到着♪は日本でも三菱・ランサーエボリューションのCMでお馴染みだ→動画。
デイミアン・チャゼル監督は「ラ・ラ・ランド」撮影開始前にジーン・ケリーの未亡人と会い、ジーン・ケリーのオフィスで「雨に唄えば」の撮影台本など貴重な資料を見せてもらったと語っている→詳しくはこちら。
ワンシーン・ワンカットの手法は、マジックアワー(カタワレ時)に街を見下ろす展望台で展開される♪Lovely Night Dance♪や、♪Audition♪でも用いられている。また、やはりマジックアワーに港で撮られた♪City of Stars♪も美しい。
ピアノ演奏も含めて、セブを演じたライアン・ゴズリングが素晴らしい。滅びつつある音楽ジャンル=JAZZへの滾る情熱。ヲタク・堅物・変人なんだけれど、憎めない愛すべき男である。ゴズリングはディズニー実写版「美女と野獣」の野獣役のオファーを蹴ってこの役に没頭したという。一方、最終的にエマ・ストーンが演じたヒロイン・ミアは当初、「ハリー・ポッター」シリーズのエマ・ワトソン(ハーマイオニー)に決まっていたそう。ところが結局彼女はこの役を降り、「美女と野獣」のベルを選んだ。関係者の証言によると我儘放題言った挙句、ロンドンでのリハーサルまで要求したとか(真偽の程は判らない)。どっちが結局、賢かっただろう?映画を観ながら、エマ・ワトソンがもし演じていたらと想像しようと試みたが、全くイメージが沸かなかった。エマ・ストーンで大正解だった。
彼女が着る50着を超える衣装は最初、鮮やかなレインボー/キャンディー・カラーなのだが、物語が進行するとともに次第にシックになり、最後の最後には黒のモノトーンに落ち着く。その色彩の変化がミアの心の成長を象徴している。
あと可笑しかったのがパーティの場面でミアがセブに車のキーを渡して欲しいと頼んだ時、トヨタ プリウスのキーがズラーッと並んでいたこと。ハリウッドの人たちはエコカーが大好きで、環境保護に熱心なレオナルド・ディカプリオもプリウスを複数台所有しており、アカデミー賞授賞式に自ら運転して登場したこともあった。
IMAXシアターで鑑賞。音は確かに抜群に良いのだが、この映画はシネマスコープであり、折角の巨大スクリーンをフルに活用せず、画面の上下が未使用のままで勿体なかった。通常のスクリーンで十分だと感じた。
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