ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち
評価:B+
映画公式サイトはこちら。
決してティム・バートン監督の最高傑作だとは想わないが、彼らしい作品だなぁと観ていて心地良かった。ディズニーで撮った「アリス・イン・ワンダーランド」の窮屈な制約から開放されて、伸び伸びとワンダーランドで戯れている印象。
ティム・バートンは短編アニメのデビュー作「ヴィンセント」から、異形の者への偏愛を吐露し続けてきた。それは英語で形容するならばまさに今回のタイトルに入っているpeculiar people(or animals/monsters/ghosts)への執着・傾倒である。本作でもやはり異形の子どもたちが魅力的。またペレグリンを演じたエヴァ・グリーン(36歳)が大変美しい。
エマを演じたエラ・パーネルは丸顔で目がぱっちりしていて、
クリスチーナ・リッチに凄く似ているな!と感じた。
よくよく考えてみればクリスティーナは「スリーピー・ホロウ」に出演していたわけで、つまりティム・バートンの好みの顔なんだね。
テレンス・スタンプが演じたお祖父さんエイブ(エイブラハム)はヘブライ語アブラハムの英語読み。アブラハムは旧約聖書の中でノアの箱舟の後に登場する初の預言者、始祖である。そして主人公ジェイコブはヘブライ語でヤコブとなる。「創世記」によると彼の父はイサク、祖父はアブラハム。イスラエルの民つまりユダヤ人はみなヤコブの子孫とされる。劇中エイブが「ポーランドにいた時、モンスターがやって来た」と言うが、それは当然ナチス・ドイツのポーランド侵攻とアウシュヴィッツ強制収容所建設のことを示唆している。
第二次世界大戦が始まる直前、ナチスの手で強制収容所送りになろうとしていたチェコのユダヤの子どもたち669人を救出し、イギリスに疎開されたイギリス人がいた。名をニコラス・ウィントンという。彼の活動はキンダートランスポート(Kindertransport)と呼ばれ、映画にもなった→公式サイト。つまりミス・ペレグリンによって保護されている「奇妙なこどもたち」とは、ウィントンの手で救われたユダヤのこどもたちの暗喩である。
また同じ一日を永遠に繰り返す(ループ)というのは日本のアニメーションでお馴染みの設定である。直ぐに想い出すだけでも押井守監督「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」や、京アニ「涼宮ハルヒの憂鬱」の第12話-19話【エンドレスエイト】、新房昭之監督「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語」がある。「ミス・ペルグリンと奇妙なこどもたち」の原作者ランサム・リグズ(写真はこちら)は38歳男性。もしかしたらジャパニメーション・ヲタクなのかもしれないなと想った。
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