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2017年2月28日 (火)

前代未聞の大失態!波乱のアカデミー賞授賞式 2017

アカデミー作品賞のプレゼンターとして「俺たちに明日はない(ボニー&クライド)」公開50周年を記念してウォーレン・ベイティとフェイ・ダナウェイがステージに登場した。封筒を開封し、「受賞作品は『ラ・ラ・ランド』!」と読み上げるダナウェイ。喜びに湧く映画の出演者やスタッフが壇上に上がり、スピーチが始まった。ところがその途中でステージ後方がザワザワし始め、漸く事態を掌握した『ラ・ラ・ランド』のプロデューサー、ジョーダン・ホロウィッツが「間違いがありました。これは冗談ではありません。作品賞は『ムーンライト』です」と発表し直した。

実はプレゼンターに手渡されたのはセキュリティ上、2つずつ用意されていた主演女優賞の封筒で、「ラ・ラ・ランド」 エマ・ストーンと書かれていたのである。考えられないミス、前代未聞の大惨事。恥をかかされたベイティ&ダナウェイも実に気の毒であった。因みに今やアメリカン・ニューシネマの代表作と賞賛される「俺たちに明日はない」がアカデミー賞で受賞したのは助演女優賞・撮影賞の2部門のみ。作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞はノミネートされるも落選している。

立派だったのは間違いを知らされた「ラ・ラ・ランド」関係者たち。怒りを露わにすることなく「ムーンライト」組を祝福した。授賞式後の記者会見でもエマ・ストーンは「私は『ムーンライト』が大好きよ。作品賞が受賞できて良かったわ」とコメントした。寛容(Tolerance)とは正にこのことだなと思った(余談だが対義語はIntolerance - リリアン・ギッシュ主演、D・W・グリフィス監督の映画のタイトルである)。 

【夢を見ていた。】まるでオスカー・ナイトそのものが「ラ・ラ・ランド」そのままの展開であった。

今年の僕の予想が当たったのは14部門。18部門以上的中が5年間続き、昨年は17部門だったので、ここ7年間で最低だった。それにしても作品賞「ムーンライト」、監督賞「ラ・ラ・ランド」という組み合わせを言い当てた人は少ないのではないだろうか?因みに有名サイトオスカーノユクエの的中が15、映画評論家・清水節氏も15部門だったようだ。

今年目立ったのは司会者もプレゼンターも、受賞者もドナルド・トランプ大統領へ集中砲火を浴びせたこと。僕は別にトランプが嫌いじゃないけれど(嘘つきのジョージ・W・ブッシュより余程マシ)、それはそれで面白かった。メキシコ国境に建設が予定されている壁や(イラン、イラク、シリアなど)イスラム7カ国の人々の入国禁止令に関して「私たちは分断されている」という言葉が繰り返されたが、実はハリウッドのセレブ(お金持ち)やジャーナリストなど知識人はこぞって民主党支持者であり、貧しい労働者・ブルーカラー(=サイレントマジョリティー)は共和党支持者なんだよね。合衆国国内こそ分断されており、彼らの意見と世論とに温度差がある。この二重構造が見えていないと、いまアメリカに起こっていることが理解し辛いだろう。今年の授賞式の視聴率は史上最低だったそうだ。執拗なトランプ批判に視聴者がうんざりしたんだね。むべなるかな。

ハリウッドの大スターで共和党支持者はアーノルド・シュワルツェネッガーとシルベスター・スタローン、クリント・イーストウッド、ブルース・ウィリス、アダム・サンドラーくらい。後は大抵、民主党支持者だと思って間違いない。映画人の多くが共和党を憎むのは赤狩り(マッカーシズム)の影響も大きいだろう。先頭に立って指揮したジョセフ・マッカーシーは共和党の上院議員で、赤狩り時代に未だ三流役者をやっていたロナルド・レーガン(後に共和党に入り大統領となる)はFBIのスパイとして暗躍した。根は深いのだ。詳しくは映画「トランボ」をご覧あれ。

あと興味深かったのはインターネット・SNSの映画産業への侵食が顕著になって来たこと。司会を務めたコメディアンのジミー・キンメルは壇上からスマホでトランプ大統領にツイートを送った。またAmazon傘下のAmazon Studiosは脚本賞・主演男優賞(ケイシー・アフレック)を獲得した「マンチェスター・バイ・ザ・シー」と外国語映画賞を受賞したイラン映画「セールスマン」の北米配給を担っているし、Netflixが製作した「ホワイト・ヘルメット シリアの民間防衛隊」は短編ドキュメンタリー賞を受賞した(日本でも視聴可能)。やはり短編ドキュメンタリー賞にノミネートされた「最後の祈り」や、作品賞にノミネートされた「最後の追跡」もNetflixの作品だ。時代はダイナミックに動いている。

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