今井信子✕波多野睦美/ヴィオラ・声・ピアノで綴る「歌」
1月19日(木)ザ・フェニックスホールへ。今井信子(ヴィオラ)、波多野睦美(メゾソプラノ)、高橋優介(ピアノ)で、
- シューベルト:ソナチネ ニ長調 作品137
- ヘンデル:歌劇「ジューリオ・チェザーレ」より
「涙のために生まれ」 - スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第2番「幻想」
- マスネ:エレジー
- フランク:シルフ(空気の精)
- ウォルトン:歌曲集「3つの歌」
「ダフネ」「金メッキの格子を透かして」「老フォーク卿」 - ブリッジ:アルトとヴィオラのための3つの歌
「遠く、遠く、離れ離れに」「どこに行くの、魂は?」
「歌は、声が静かに死に、消えても」 - ブラームス:ヴィオラとピアノのための2つの歌
「しずめられた願い」「聖なる子守唄」 - ブラームス:子守唄(アンコール)
今井は言わずと知れたヴィオラの名手だが、シューベルトのソナチネでは珍しくヴァイオリンを弾いた。音は擦れ、滋味あふれる。
スクリャービンのソナタは幻夢。サイケデリックでカラフル。
プログラム後半はフランス語、英語、ドイツ語の歌曲を堪能した。
マスネに感じるのは侘しさ。フランクに宿るのは仄かな甘さ。ブリッジには深い悲しみと虚無があった。ブラームスは秋の夕映えの美しさ。子守唄には愛情に満ちた優しい眼差しがあった。
生涯を独身で通したヨハネス・ブラームスにどうしてこんな素敵な子守唄が書けたのだろう?そう疑問に思い、ハタと気が付いた。そうか、彼の視線の先にあったのはクララ・シューマンの子どもたちであったに違いない!
ロベルト・シューマンとクララは8人の子供を儲けた。ブラームスが初めてデュッセルドルフにあるシューマン家を訪ねたのは1853年のことである。この時長女マリエは12歳、末娘オイゲーニエは2歳だった。そして翌年の54年に最後の子供フェリックスが生まれる。彼には詩の才能があり、そのうち3つにブラームスが音楽を付けた(「わが恋はライラックの茂みのように緑」 Op. 63-5、「ニワトコの木に夕風が」 Op. 63-6、「うち沈んで」 Op. 86-5)。しかしフェリックスは肺結核を患い、25歳の若さで亡くなった。なんだか切ないね、ヨハネス。
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