珠城りょう主演 宝塚月組「グランドホテル」「カルーセル輪舞曲(ロンド)」
1月2日、宝塚大劇場へ。ブロードウェイ・ミュージカル「グランドホテル」は実に24年ぶりの再演である。
1993年月組版/2017年月組版の主要キャストを下記に示す。
- オットー:涼風真世/美弥るりか
- フラムシェン:麻乃佳世/早乙女 わかば(役替わり)
- ラファエラ:天海祐希/暁 千星(役替わり)
- フェリックス男爵:久世星佳/珠城りょう
- グルーシンスカヤ:羽根知里/愛希れいか
太字が当時/現在のトップ男役&娘役である。
涼風真世のサヨナラ公演がどうして不評だったのかは下記事に解説した。
本作は後世に「グランドホテル形式」というジャンルを形成した元祖であり、その本質は「主役不在の群像劇」である。それを宝塚歌劇バージョンとしてトップ男役と娘役を目立たせようというのはそもそも無理がある。しかし初演版の「余命幾ばくもないユダヤ人会計士」オットーよりは、「借金まみれのジゴロ」フェリックス男爵を主役に据える方がよほどしっくり来る。故に今回の潤色/改変は大成功と言えるだろう。
また昨年観たトム・サザーランド演出版は舞台装置が地味で、「ベルリンの超一流ホテル」というゴージャスな雰囲気が皆無だった。ところが宝塚版は人数が多いし華やかで申し分なし。オリジナル演出・振付のトミー・チューンは今回、「特別監修」ということでどこまでが彼の功績か不明だが(宝塚版の演出は岡田敬二、生田大和)時にギリシャ古代劇場の観客のような役割も果たす群舞の扱いが卓越していた。映画も何回も観たし十分知っているお話なのに、最後はジーンと感動した。是非また観たい!
出演者で突出して良かったのが愛希れいか。兎に角、踊れる娘役なのでロシアのバレリーナという設定がピッタリ。正にはまり役である。
レビューの「カルーセル輪舞曲(ロンド)」についてだが、【モン・パリ誕生90周年】と銘打ちながら、「どこがパリやねん!」とズッコケた。フランスの雰囲気が皆無。ニューヨーク、メキシコ、ブラジル、砂漠(シルクロード)と巡り、「80日間世界一周」というタイトルこそ相応しいのではないかと想った(実際にビクター・ヤングが作曲した同名曲が使用されている)。特に娘役にブラジルの国旗を振らせるダサい演出は一体何事??トップ・スターが背負う緑色の蛾みたいな羽も気持ち悪い。あと冒頭から登場する回転木馬が全く生かされていない。「回るよ回る、世界は回る」という意味だけ?それじゃあ幼稚園のお遊戯会レベルだ。稲葉大地、全然ダメやん!もっとロジャース&ハマースタイン IIのコンビが「回転木馬(Carousel)」に込めた寓意を真剣に勉強すべきだ。
宝塚史上、下から数えた方が早いお粗末なショーだった。こんなもの観せられるくらいなら、「グランドホテル」初演の時にトミー・チューンが演出した「BROADWAY BOYS」の再演を観たかった。
珠城りょうについて。ファンの人には申し訳ないのだが、僕には「おばさん顔」に見える。格好いいとも想わないし好みじゃない。歌については龍真咲レベル?つまり大したことない。現在の月組の問題点は「オッ、これは!」と耳をそばだてるような美声の男役が(2,3,4番手にも)いないということだ。結局、一番光り輝いているのは娘役の愛希れいかであり、歌劇団としてはそんなんでええのん?
最後に。ブロードウェイ・ミュージカルということもあり1993年月組版は一切映像記録が残っていないのだが、2017年版はDVD/Blu-rayがちゃんと発売できるよう、ややこしい版権問題をクリアしたのだろうか?
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コメント
僕も「グランド・ホテル」見てきました。僕はなにも主役を変えなくても、と言う意見です。男爵を主役にしてもオットー・クリンゲラインが良い役である事は変わりません。結果として、トップより良い役を貰った美弥るりかが一番得した、と言う感じです。レビューに関しては全く同じ意見です。眠かった(^0^;)
投稿: 最後のダンス | 2017年1月 9日 (月) 20時14分
最後のダンスさん、コメントありがとうございます。
そもそも【グランド・ホテル形式】の作品に主役を創るということ自体が土台無理なんですよね。涼風真世の場合はサヨナラ公演だったから【年老いて死にかけたユダヤ人会計士】でも良かったけれど、今回はトップのお披露目です。やはりそういうわけにはいかなかったのでしょう。男爵ならタキシードを格好よく着こなす(男役の美学を追求する)ことが出来ますから。
レビューは宝塚史上最低レベルと言ってもいい代物でした。稲葉大地は大劇場公演の演出から今後外すべきでしょう。
投稿: 雅哉 | 2017年1月 9日 (月) 20時30分