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2017年1月22日 (日)

大阪桐蔭高等学校吹奏楽部✕劇団ひまわり/ミュージカル「銀河鉄道の夜」

2016年に全日本吹奏楽コンクールで金賞(自由曲はガーシュウィンのオペラ「ポーギーとベス」より)を受賞した大阪桐蔭高等学校吹奏楽部の定期演奏会は2月19(日)、20(月)に開催される。

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チケットはe+で購入できる(こちら)。e+はシステム利用料や発券手数料などが掛かる。だから嫌だな〜困ったな、どうしよう?と思案していたのだが、今回携帯電話に直接ダウンロードするスマチケを試してみてしてびっくりした。なんと一切中間搾取なし、正規入場料金2,000円ポッキリで購入出来た。これは便利!

さて定演のチラシには第1部でミュージカル「銀河鉄道の夜」が上演されるとある。2年前に大阪桐蔭が上演した創作ミュージカル「河内湖」はハッとするくらい完成度が高かった(その時のレビューはこちらに書いた)。今度の作品はどんなだろうと早速調査を開始、詳細が判明した。元々は劇団ひまわりが2008年に上演したミュージカルで、劇団のオンラインショップで4,000円+送料を支払えばDVDを購入出来るらしい。早速注文した。

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作詞・脚本・演出は中島透、作曲・指揮は西村友が担当。オリジナル版はピアノ・ヴァイオリン・チェロ・ホルン・クラリネット・ハープ・パーカッションという7人編成による室内オーケストラである。

西村友は2016年度吹奏楽コンクール課題曲III 《ある英雄の記憶~「虹の国と氷の国」より》を作曲している。そして大阪桐蔭はこの課題曲で全国大会に臨み、を獲った。

劇団ひまわり「銀河鉄道の夜」(Bキャスト)の配役は以下の通り。

ジョバンニ:石川由依 カムパネルラ:熊本野映 カオル:宮原理子 タダシ:野本ほたる ザネリ:松村理子 カトウ:鈴木愛吏 マルソ:田中瞳佳

石川由依って何だか聞き覚えのある名前だな、と調べて仰天した。なんとアニメ「進撃の巨人」でミカサ・アッカーマンの声を担当している人じゃないですか!歌も上手い。石川は兵庫県生まれで6歳の時から劇団ひまわりの大阪俳優養成所に所属し、後に上京したという。

透明感があってpure、大変出来のよいミュージカルである。特に音楽は、例えば劇団四季のオリジナル・ミュージカル(李香蘭、異国の丘、夢から醒めた夢、ドリーミング)と比べても、断然「銀河鉄道の夜」の方が優れている。これは是非生の舞台を観たいと想った。

因みにアニメーション映画「君の名は。」で国民的作家となった新海誠監督(本名・新津誠)の娘・新津ちせは劇団ひまわりに所属しており、神木隆之介くん主演の実写映画「3月のライオン」に川本モモ(三女)役で出演する(詳細はこちら)。

僕の「銀河鉄道の夜」の原体験は杉井ギサブロー監督によるアニメーション映画(1985年、毎日映画コンクール・大藤信郎賞受賞、文部省特選)である。登場人物の大半が猫に仕立てられている(但し、タイタニック号の犠牲となった姉弟とその家庭教師は人間の姿)。静謐で質の高い作品なので僕は好きだが、「なんで猫やねん!」と非難の声が上がっていることも事実だ。そこが映像化の難しさで、ジョバンニとカムパネルラという名前の少年を果たして日本人として描くのか?という問題が生じる。かといって名前から想定してイタリア人にする?それでいいのかという話である。なお、このアニメで音楽を担当した細野晴臣の祖父(細野正文)は日本人唯一のタイタニック号乗船者で、無事生還した。

宮沢賢治が書いたこの童話は非常に多くの信奉者/追随者を産んだ。その代表例が「銀河鉄道999」だろう。

上記事にも書いたが「銀河鉄道の夜」のジョバンニとカンパネルラの関係は、賢治と亡くなった妹・トシのそれを彷彿とさせる。宮沢賢治はシスター・コンプレックスの作家だと言うことが出来る。それを松本零士は換骨奪胎してマザー(エディプス)・コンプレックスの作品に創り変えた。

臨床心理学者・河合隼雄は中沢新一との対談本「ブッダの夢」の中で次のように語っている。

 『銀河鉄道の夜』を読んで面白いのは、はじめ、母と息子の物語として出発するんですね。だから、ある意味では、ずっと母性が底流にあるんです。あるんだけれども、チェロのような声をした男の声が聞こえてくるって。最後はしかも、お父さんの帰ることをお母さんに知らせなくちやっていうところで終わります。つまり、非常に厳しい父性もあの中にずっと入ってるんですね。銀河を書いたりする時に、非常に科学的な言葉や客観的な描写が出てきたり、同時に、また母性的なものもあるわけでしょう。
 ところがね、『銀河鉄道999』という漫画は完全におかあちゃんの話になっています。

作曲家・吉松隆と「銀河鉄道の夜」の関係については以前言及した。

この後、吉松は『オホーツク挽歌』『星めぐりの歌』『銀河鉄道の夜』『手紙』をモチーフにした、(左手の)ピアノとチェロと朗読による「KENJI・・・宮澤賢治によせる」を作曲している。吉松は2歳年下の妹をガンで亡くした。彼女の病床で作曲したのがサイバーバード協奏曲である。その想いが賢治とトシの関係に繋がっているのだろう。

シンセサイザーによる「惑星」で一世風靡した故・冨田勲が初音ミクとタッグを組んだ「イーハトーヴ交響曲」は第4楽章が『銀河鉄道の夜』である。因みに冨田は映画「風の又三郎」(1989)でも音楽を担当している。

またももいろクローバーZ主演で本広克行が監督した映画「幕が上がる」には高校演劇部が上演する劇中劇として「銀河鉄道の夜」が登場する。

さらに岩井俊二監督「リップヴァンウィンクルの花嫁」と「銀河鉄道の夜」の関係性については下記事に書いた。

ここまでお読みになった方には「銀河鉄道の夜」の影響力の大きさが少しはお判り頂けたのではないかと想う。大阪桐蔭のパフォーマンスが今から愉しみで仕方がない。

最後に、梅田隆司先生にお願いを2つしたい。

  1. 定演で大阪桐蔭の演奏する「前前前世」をどうしても聴きたいので、不確実要素のある【リクエスト・コーナー】ではなく、是非正規プログラム(あるいはアンコール)に入れてください。
  2. 全日本吹奏楽コンクールの「ポーギーとベス」を聴いて、大阪桐蔭がミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」の音楽を演奏したら最高にクールなパフォーマンスになると確信しました。お忙しいのは存じておりますが、まずは騙されたと思って映画をご覧になってみてください。絶対に後悔はさせません。

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コメント

はじめまして。
私も大阪桐蔭の演奏が大好きで、このブログもたまに覗かせてもらってます。
幅広い知識や考察、勉強にもなってます。
ですが、今回の記事には賛同しかねる部分がありましたので、失礼ながらコメントさせていただきます。
「前前前世を定期演奏会で」という部分です。
私個人の好みではありますが、定期演奏会は日常の演奏会よりも違うものであってほしいと思います。
大阪桐蔭さんは日常の演奏会では幅広い客層の方に楽しんでもらえるような楽しいプログラムを組まれていますが、だからこそ定期演奏会のプログラムに流行曲は並べてほしくないな、と思います。
J-POPを否定するわけではありませんし、むしろ大阪桐蔭さんのポップス曲も大好きですが、それは日常の演奏会でたくさん聞いてきました。
(前前前世もたくさんリクエストされてますよ)
だからこそ、定期演奏会では大阪桐蔭のシンフォニックサウンドを然るべき曲で堪能したい、と思うわけです。
かといって、がっつりお固い演奏会になるのは梅田先生も望まれていないと思いますし、リクエストコーナーを設けておられるのですから、前前前世はそのコーナーで選ばれればラッキーくらいでいいのではないかと思います。
私の個人的考えを押し付けるような文章になってしまいましたが、梅田先生もこのブログを目にされているようですので、あえて伝えさせていただきました。

投稿: やきいも | 2017年1月24日 (火) 19時44分

やきいもさん、コメントありがとうございます。文章の内容から察するに保護者の方とお見受けしました(違っていたらごめんなさい)。

僕自身は今までに一度も大阪桐蔭の「前前前世」を聴いたことがありません。そして「あまちゃん」同様、この曲はいわば流行ものですから、多分今回の定演の機会を逃したら一生聴けない気がするのですね。そういう理由でこう書きました。あとは梅田先生のご意向におまかせします。

ついでですので、2018年定期演奏会でのリクエストもここでしちゃいます!アカデミー歌曲賞にノミネートされたディズニー映画「モアナと伝説の海」から”どこまでも~How Far I’ll Go”です。作曲はブロードウェイ・ミュージカル「ハミルトン」で2016年のトニー賞を席巻したリン・マヌエル・ミランダ。こちらで試聴出来ますので、よろしくご検討の程お願い致します。

投稿: 雅哉 | 2017年1月24日 (火) 20時11分

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