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(増補改訂版)「ラ・ラ・ランド」がオマージュを捧げた過去のミュージカル映画たち

ゴールデン・グローブ賞で史上最多となる7部門を制覇し、アカデミー賞でも最多ノミネート及び、作品賞・監督賞を「ムーンライト」と競うこと(一騎討ち)が確実なミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」は過去の様々な作品に影響を受けている。まずは公式サイト(→こちら)の本予告、及びショート予告を観てください。

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一見して明白なのはジャック・ドゥミ監督のフランス映画「シェルブールの雨傘」(1964)と「ロシュフォールの恋人たち」(1967)への憧れ。それはセットや衣装の色彩感(キャンディー・カラー/レインボー・カラー)などコンセプトアート(concept art)に如実に現れている。

映画冒頭のナンバー"Another Day of Sun"(歌詞付き試聴はこちら)はイントロを聴いただけでミシェル・ルグランが作曲した「ロシュフォールの恋人たち」(キャラバンの到着)への讃歌だと判る→動画はこちら。これぞルグラン・ジャズ!そしてご丁寧なことにこのシーンにはキャラバンまで登場する。

さらに「ラ・ラ・ランド」フィナーレに於ける歌詞のない合唱(ヴォカリーズ)は「シェルブールの雨傘」のラストとそっくりだ→動画。ミア(エマ・ストーン)がする一人芝居の主人公の名前がジュヌヴィエーブ。「シェルブールの雨傘」におけるカトリーヌ・ドヌーヴの役名と同じ。また5年後のエピローグでミアは娘を産んでいるが、このシチュエーションも「シェルブール」に酷似している。

さてロサンゼルスの街並みを見下ろす展望所でエマ・ストーンとライアン・ゴズリングが踊る"Lovely Night Dance"のFilm Clipをご覧あれ→こちら。喧嘩腰の男女が踊りを通して心を通じ合うというコンセプトはアステア&ロジャーズの「トップ・ハット」(35)から"Isn't This a Lovely Day"であり→動画、映像のルックは「バンド・ワゴン」(53)からアステア&シド・チャリシーが踊る"Dancing in the Dark"へのオマージュとなっている→動画。またこのシーンの直前にゴズリングが街灯に片手をかけて、くるりと一周するのは、言うまでもなく「雨に唄えば」(52)のジーン・ケリーを真似ている。

ふたりがグリフィス天文台(映画「理由なき反抗」でジェームズ・ディーンがチキンレースをするロケ地)のプラネタリウムで空中浮遊ダンスを披露する場面はウディ・アレン監督「世界中がアイ・ラヴ・ユー」(96)と"Lovely To Look At"(52)からガワー・チャンピオン夫妻が踊る「煙が目にしみる」の融合と言えるだろう→動画(3分過ぎから)

また床に沢山の星が映っている屋内でデュエット・ダンスするのはフレッド・アステアとエレノア・パウエルが踊る「踊るニュウ・ヨーク」(1940)からビギン・ザ・ビギンの引用である→動画はこちら

「ラ・ラ・ランド」の女4人で踊る場面(Someone in the Crowd)、

Emma

はボブ・フォッシー振付・監督「スウィート・チャリティ」(69)からシャーリー・マクレーン、チタ・リヴェラらが踊る"There's Gotta Be Something Better Than This"→動画(3分15秒あたりから)と3つの共通点がある。①スカートを指で持ち上げる仕草 ②腕を真直ぐ前に伸ばし、手首を支点に手掌を(鶴の首みたいに)下向きに屈曲させる振付 ③衣装の色

壮大なセットで繰り広げられるダンス・シーンは「巴里のアメリカ人」(51)のクライマックスや、「雨に唄えば」(52)の"Broadway Melody(Gotta Dance)"を彷彿とさせる。特にシルエットで踊るのは「巴里のアメリカ人」におけるヴィンセント・ミネリ監督(ライザ・ミネリのお父さん)お得意の演出法だ→動画。おまけにマネキン人形も登場する→動画。そもそも映画撮影所の舞台裏を描く(Backstage musical)という意味で「ラ・ラ・ランド」と「雨に唄えば」は共通しているしね。

Jazzman(ジャズ演奏家)と女優志願の女性との恋という「ラ・ラ・ランド」の基本プロットはマーティン・スコセッシ監督、ライザ・ミネリ&ロバート・デ・ニーロ主演「ニューヨーク・ニューヨーク」(77)を踏襲している。またダイナミックなクレーン撮影や夜間の照明はフランシス・フォード・コッポラ監督が製作費80億円をかけ、興行収入が2億円しか回収出来なかった壮大な失敗作(でも僕は案外好き)「ワン・フロム・ザ・ハート」(82)を意識しているのではないだろうか?因みにコッポラはこの作品で多額の負債を抱え、アメリカン・ゾートロープ(ゾエトロープ)・スタジオを手放す羽目になる。

ミュージカル映画は撮影前に歌を録音し、役者はそれに合わせて口パクで演技するのが従来の撮影方法であった。 しかし「ラ・ラ・ランド」の"Audition"や"City of Stars"でエマ・ストーンは撮影現場で実際に歌い、同時録音するというSinging Liveの手法が採られている。実はこれ、映画「レ・ミゼラブル」(2012)でトビー・フーパー監督が生み出した手法なのだ。

このように約80年に及ぶ、ミュージカル映画という夢の記憶が集積し、びっしり詰まっているのが「ラ・ラ・ランド」という作品の正体である。

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