チョン・キョンファ/J.S.バッハ無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲演奏会
1月25日(水)ザ・シンフォニホールへ。チョン・キョンファによるJ.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲演奏会を聴いた。
1月23日(月)に福岡で公演が予定されていた「熊本復興支援チャリティーコンサート」は体調不良によりキャンセルとなった。どうなることかと心配したのだが、大阪公演は無事開催された。
冒頭で彼女はマイクを持って登場。「1969年から私のマネージャーを勤めてくれたTerry Harrison (UK)が亡くなったと昨日電話で知らされました。今日の演奏は彼に捧げます」と英語でアナウンスした。会場は「そんなこと言われても、その人知らんし……」と微妙な空気に包まれた。
イザベル・ファウストなどが日本で全曲演奏会をするときは大概、2日に分ける。アリーナ・イブラギモヴァが1日で演ったときも、第1部 14:00~ 、第2部 17:00〜と2部構成で別料金だった。それが一気に聴けるというのはかなりお得。
2回の休憩(15分・20分)を挟み、全6曲が演奏された。19時開演で4曲終了時点で既に20時50分、終演は21時54分と約3時間に及ぶ長丁場だった。終電の関係もあり、途中で帰る客もチラホラ。
ここ30年位でバッハの演奏様式はガラッと様変わりした。それを象徴するのがギドン・クレーメルのCD。彼は無伴奏ソナタとパルティータ全曲を1980年と2001-2年に2回録音している。21年間で全く異なる演奏となった。旧盤はふつーにヴィブラートをかけているのだが、新盤は装飾音以外、ヴィブラートを極力排している。これは古楽奏法(ピリオド・アプローチ)の隆盛と無関係ではない。つまりバロック・ヴァイオリン奏者シギスヴァルト・クイケン、サイモン・スタンデイジ、寺神戸亮らの登場が大きい。彼らに倣いヴィクトリア・ムローヴァも大変身を遂げたし、最近ソナタ&パルティータ全曲を録音した五嶋みどりやチョン・キョンファも例外ではない。
今回の演奏会では昨年発売されたCDよりもゆっくりと開始された。哀しみが滲み、諸行無常の趣き。しかし一方で凛とした佇まいがあり、若き日の彼女の鋭さやバッハの厳しさも垣間見られた。
パルティータ第1番の途中で弾き間違いがあり、その後動揺したのかテンポが千々に乱れた。先行きが危ぶまれハラハラしたが、次の曲からなんとか持ち直した。またソナタの第3番を弾き始めて気に入らなかったのか数小節して中断、最初から演り直す場面も。なんだかボロボロだったのだが、なんとか最後まで持ち堪えた。満身創痍、でも聴き応えのある演奏会だった。不思議な体験をさせてもらった。
東京公演は1月28日(土)@サントリーホール。さてどうなりますやら。
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