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2017年1月

今井信子✕波多野睦美/ヴィオラ・声・ピアノで綴る「歌」

1月19日(木)ザ・フェニックスホールへ。今井信子(ヴィオラ)、波多野睦美(メゾソプラノ)、高橋優介(ピアノ)で、

  • シューベルト:ソナチネ ニ長調 作品137
  • ヘンデル:歌劇「ジューリオ・チェザーレ」より
    「涙のために生まれ」
  • スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第2番「幻想」
  • マスネ:エレジー
  • フランク:シルフ(空気の精)
  • ウォルトン:歌曲集「3つの歌」
    「ダフネ」「金メッキの格子を透かして」「老フォーク卿」
  • ブリッジ:アルトとヴィオラのための3つの歌
    「遠く、遠く、離れ離れに」「どこに行くの、魂は?」
    「歌は、声が静かに死に、消えても」
  • ブラームス:ヴィオラとピアノのための2つの歌
    「しずめられた願い」「聖なる子守唄」
  • ブラームス:子守唄(アンコール)

今井は言わずと知れたヴィオラの名手だが、シューベルトのソナチネでは珍しくヴァイオリンを弾いた。音は擦れ、滋味あふれる。

スクリャービンのソナタは幻夢。サイケデリックでカラフル。

プログラム後半はフランス語、英語、ドイツ語の歌曲を堪能した。

マスネに感じるのは侘しさ。フランクに宿るのは仄かな甘さ。ブリッジには深い悲しみと虚無があった。ブラームスは秋の夕映えの美しさ。子守唄には愛情に満ちた優しい眼差しがあった。

生涯を独身で通したヨハネス・ブラームスにどうしてこんな素敵な子守唄が書けたのだろう?そう疑問に思い、ハタと気が付いた。そうか、彼の視線の先にあったのはクララ・シューマンの子どもたちであったに違いない!

ロベルト・シューマンとクララは8人の子供を儲けた。ブラームスが初めてデュッセルドルフにあるシューマン家を訪ねたのは1853年のことである。この時長女マリエは12歳、末娘オイゲーニエは2歳だった。そして翌年の54年に最後の子供フェリックスが生まれる。彼には詩の才能があり、そのうち3つにブラームスが音楽を付けた(「わが恋はライラックの茂みのように緑」 Op. 63-5、「ニワトコの木に夕風が」 Op. 63-6、「うち沈んで」 Op. 86-5)。しかしフェリックスは肺結核を患い、25歳の若さで亡くなった。なんだか切ないね、ヨハネス。

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チョン・キョンファ/J.S.バッハ無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲演奏会

1月25日(水)ザ・シンフォニホールへ。チョン・キョンファによるJ.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲演奏会を聴いた。

1月23日(月)に福岡で公演が予定されていた「熊本復興支援チャリティーコンサート」は体調不良によりキャンセルとなった。どうなることかと心配したのだが、大阪公演は無事開催された。

冒頭で彼女はマイクを持って登場。「1969年から私のマネージャーを勤めてくれたTerry Harrison (UK)が亡くなったと昨日電話で知らされました。今日の演奏は彼に捧げます」と英語でアナウンスした。会場は「そんなこと言われても、その人知らんし……」と微妙な空気に包まれた。

Terry Harrison
Terry Harrison

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イザベル・ファウストなどが日本で全曲演奏会をするときは大概、2日に分ける。アリーナ・イブラギモヴァが1日で演ったときも、第1部 14:00~ 、第2部 17:00〜と2部構成で別料金だった。それが一気に聴けるというのはかなりお得。

2回の休憩(15分・20分)を挟み、全6曲が演奏された。19時開演で4曲終了時点で既に20時50分、終演は21時54分と約3時間に及ぶ長丁場だった。終電の関係もあり、途中で帰る客もチラホラ。

ここ30年位でバッハの演奏様式はガラッと様変わりした。それを象徴するのがギドン・クレーメルのCD。彼は無伴奏ソナタとパルティータ全曲を1980年と2001-2年に2回録音している。21年間で全く異なる演奏となった。旧盤はふつーにヴィブラートをかけているのだが、新盤は装飾音以外、ヴィブラートを極力排している。これは古楽奏法(ピリオド・アプローチ)の隆盛と無関係ではない。つまりバロック・ヴァイオリン奏者シギスヴァルト・クイケン、サイモン・スタンデイジ、寺神戸亮らの登場が大きい。彼らに倣いヴィクトリア・ムローヴァも大変身を遂げたし、最近ソナタ&パルティータ全曲を録音した五嶋みどりやチョン・キョンファも例外ではない。

今回の演奏会では昨年発売されたCDよりもゆっくりと開始された。哀しみが滲み、諸行無常の趣き。しかし一方で凛とした佇まいがあり、若き日の彼女の鋭さやバッハの厳しさも垣間見られた。

パルティータ第1番の途中で弾き間違いがあり、その後動揺したのかテンポが千々に乱れた。先行きが危ぶまれハラハラしたが、次の曲からなんとか持ち直した。またソナタの第3番を弾き始めて気に入らなかったのか数小節して中断、最初から演り直す場面も。なんだかボロボロだったのだが、なんとか最後まで持ち堪えた。満身創痍、でも聴き応えのある演奏会だった。不思議な体験をさせてもらった。

東京公演は1月28日(土)@サントリーホール。さてどうなりますやら。

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大阪桐蔭高等学校吹奏楽部✕劇団ひまわり/ミュージカル「銀河鉄道の夜」

2016年に全日本吹奏楽コンクールで金賞(自由曲はガーシュウィンのオペラ「ポーギーとベス」より)を受賞した大阪桐蔭高等学校吹奏楽部の定期演奏会は2月19(日)、20(月)に開催される。

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チケットはe+で購入できる(こちら)。e+はシステム利用料や発券手数料などが掛かる。だから嫌だな〜困ったな、どうしよう?と思案していたのだが、今回携帯電話に直接ダウンロードするスマチケを試してみてしてびっくりした。なんと一切中間搾取なし、正規入場料金2,000円ポッキリで購入出来た。これは便利!

さて定演のチラシには第1部でミュージカル「銀河鉄道の夜」が上演されるとある。2年前に大阪桐蔭が上演した創作ミュージカル「河内湖」はハッとするくらい完成度が高かった(その時のレビューはこちらに書いた)。今度の作品はどんなだろうと早速調査を開始、詳細が判明した。元々は劇団ひまわりが2008年に上演したミュージカルで、劇団のオンラインショップで4,000円+送料を支払えばDVDを購入出来るらしい。早速注文した。

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作詞・脚本・演出は中島透、作曲・指揮は西村友が担当。オリジナル版はピアノ・ヴァイオリン・チェロ・ホルン・クラリネット・ハープ・パーカッションという7人編成による室内オーケストラである。

西村友は2016年度吹奏楽コンクール課題曲III 《ある英雄の記憶~「虹の国と氷の国」より》を作曲している。そして大阪桐蔭はこの課題曲で全国大会に臨み、を獲った。

劇団ひまわり「銀河鉄道の夜」(Bキャスト)の配役は以下の通り。

ジョバンニ:石川由依 カムパネルラ:熊本野映 カオル:宮原理子 タダシ:野本ほたる ザネリ:松村理子 カトウ:鈴木愛吏 マルソ:田中瞳佳

石川由依って何だか聞き覚えのある名前だな、と調べて仰天した。なんとアニメ「進撃の巨人」でミカサ・アッカーマンの声を担当している人じゃないですか!歌も上手い。石川は兵庫県生まれで6歳の時から劇団ひまわりの大阪俳優養成所に所属し、後に上京したという。

透明感があってpure、大変出来のよいミュージカルである。特に音楽は、例えば劇団四季のオリジナル・ミュージカル(李香蘭、異国の丘、夢から醒めた夢、ドリーミング)と比べても、断然「銀河鉄道の夜」の方が優れている。これは是非生の舞台を観たいと想った。

因みにアニメーション映画「君の名は。」で国民的作家となった新海誠監督(本名・新津誠)の娘・新津ちせは劇団ひまわりに所属しており、神木隆之介くん主演の実写映画「3月のライオン」に川本モモ(三女)役で出演する(詳細はこちら)。

僕の「銀河鉄道の夜」の原体験は杉井ギサブロー監督によるアニメーション映画(1985年、毎日映画コンクール・大藤信郎賞受賞、文部省特選)である。登場人物の大半が猫に仕立てられている(但し、タイタニック号の犠牲となった姉弟とその家庭教師は人間の姿)。静謐で質の高い作品なので僕は好きだが、「なんで猫やねん!」と非難の声が上がっていることも事実だ。そこが映像化の難しさで、ジョバンニとカムパネルラという名前の少年を果たして日本人として描くのか?という問題が生じる。かといって名前から想定してイタリア人にする?それでいいのかという話である。なお、このアニメで音楽を担当した細野晴臣の祖父(細野正文)は日本人唯一のタイタニック号乗船者で、無事生還した。

宮沢賢治が書いたこの童話は非常に多くの信奉者/追随者を産んだ。その代表例が「銀河鉄道999」だろう。

上記事にも書いたが「銀河鉄道の夜」のジョバンニとカンパネルラの関係は、賢治と亡くなった妹・トシのそれを彷彿とさせる。宮沢賢治はシスター・コンプレックスの作家だと言うことが出来る。それを松本零士は換骨奪胎してマザー(エディプス)・コンプレックスの作品に創り変えた。

臨床心理学者・河合隼雄は中沢新一との対談本「ブッダの夢」の中で次のように語っている。

 『銀河鉄道の夜』を読んで面白いのは、はじめ、母と息子の物語として出発するんですね。だから、ある意味では、ずっと母性が底流にあるんです。あるんだけれども、チェロのような声をした男の声が聞こえてくるって。最後はしかも、お父さんの帰ることをお母さんに知らせなくちやっていうところで終わります。つまり、非常に厳しい父性もあの中にずっと入ってるんですね。銀河を書いたりする時に、非常に科学的な言葉や客観的な描写が出てきたり、同時に、また母性的なものもあるわけでしょう。
 ところがね、『銀河鉄道999』という漫画は完全におかあちゃんの話になっています。

作曲家・吉松隆と「銀河鉄道の夜」の関係については以前言及した。

この後、吉松は『オホーツク挽歌』『星めぐりの歌』『銀河鉄道の夜』『手紙』をモチーフにした、(左手の)ピアノとチェロと朗読による「KENJI・・・宮澤賢治によせる」を作曲している。吉松は2歳年下の妹をガンで亡くした。彼女の病床で作曲したのがサイバーバード協奏曲である。その想いが賢治とトシの関係に繋がっているのだろう。

シンセサイザーによる「惑星」で一世風靡した故・冨田勲が初音ミクとタッグを組んだ「イーハトーヴ交響曲」は第4楽章が『銀河鉄道の夜』である。因みに冨田は映画「風の又三郎」(1989)でも音楽を担当している。

またももいろクローバーZ主演で本広克行が監督した映画「幕が上がる」には高校演劇部が上演する劇中劇として「銀河鉄道の夜」が登場する。

さらに岩井俊二監督「リップヴァンウィンクルの花嫁」と「銀河鉄道の夜」の関係性については下記事に書いた。

ここまでお読みになった方には「銀河鉄道の夜」の影響力の大きさが少しはお判り頂けたのではないかと想う。大阪桐蔭のパフォーマンスが今から愉しみで仕方がない。

最後に、梅田隆司先生にお願いを2つしたい。

  1. 定演で大阪桐蔭の演奏する「前前前世」をどうしても聴きたいので、不確実要素のある【リクエスト・コーナー】ではなく、是非正規プログラム(あるいはアンコール)に入れてください。
  2. 全日本吹奏楽コンクールの「ポーギーとベス」を聴いて、大阪桐蔭がミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」の音楽を演奏したら最高にクールなパフォーマンスになると確信しました。お忙しいのは存じておりますが、まずは騙されたと思って映画をご覧になってみてください。絶対に後悔はさせません。

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(増補改訂版)「ラ・ラ・ランド」がオマージュを捧げた過去のミュージカル映画たち

ゴールデン・グローブ賞で史上最多となる7部門を制覇し、アカデミー賞でも最多ノミネート及び、作品賞・監督賞を「ムーンライト」と競うこと(一騎討ち)が確実なミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」は過去の様々な作品に影響を受けている。まずは公式サイト(→こちら)の本予告、及びショート予告を観てください。

China  Imax

一見して明白なのはジャック・ドゥミ監督のフランス映画「シェルブールの雨傘」(1964)と「ロシュフォールの恋人たち」(1967)への憧れ。それはセットや衣装の色彩感(キャンディー・カラー/レインボー・カラー)などコンセプトアート(concept art)に如実に現れている。

映画冒頭のナンバー"Another Day of Sun"(歌詞付き試聴はこちら)はイントロを聴いただけでミシェル・ルグランが作曲した「ロシュフォールの恋人たち」(キャラバンの到着)への讃歌だと判る→動画はこちら。これぞルグラン・ジャズ!そしてご丁寧なことにこのシーンにはキャラバンまで登場する。

さらに「ラ・ラ・ランド」フィナーレに於ける歌詞のない合唱(ヴォカリーズ)は「シェルブールの雨傘」のラストとそっくりだ→動画。ミア(エマ・ストーン)がする一人芝居の主人公の名前がジュヌヴィエーブ。「シェルブールの雨傘」におけるカトリーヌ・ドヌーヴの役名と同じ。また5年後のエピローグでミアは娘を産んでいるが、このシチュエーションも「シェルブール」に酷似している。

さてロサンゼルスの街並みを見下ろす展望所でエマ・ストーンとライアン・ゴズリングが踊る"Lovely Night Dance"のFilm Clipをご覧あれ→こちら。喧嘩腰の男女が踊りを通して心を通じ合うというコンセプトはアステア&ロジャーズの「トップ・ハット」(35)から"Isn't This a Lovely Day"であり→動画、映像のルックは「バンド・ワゴン」(53)からアステア&シド・チャリシーが踊る"Dancing in the Dark"へのオマージュとなっている→動画。またこのシーンの直前にゴズリングが街灯に片手をかけて、くるりと一周するのは、言うまでもなく「雨に唄えば」(52)のジーン・ケリーを真似ている。

ふたりがグリフィス天文台(映画「理由なき反抗」でジェームズ・ディーンがチキンレースをするロケ地)のプラネタリウムで空中浮遊ダンスを披露する場面はウディ・アレン監督「世界中がアイ・ラヴ・ユー」(96)と"Lovely To Look At"(52)からガワー・チャンピオン夫妻が踊る「煙が目にしみる」の融合と言えるだろう→動画(3分過ぎから)

また床に沢山の星が映っている屋内でデュエット・ダンスするのはフレッド・アステアとエレノア・パウエルが踊る「踊るニュウ・ヨーク」(1940)からビギン・ザ・ビギンの引用である→動画はこちら

「ラ・ラ・ランド」の女4人で踊る場面(Someone in the Crowd)、

Emma

はボブ・フォッシー振付・監督「スウィート・チャリティ」(69)からシャーリー・マクレーン、チタ・リヴェラらが踊る"There's Gotta Be Something Better Than This"→動画(3分15秒あたりから)と3つの共通点がある。①スカートを指で持ち上げる仕草 ②腕を真直ぐ前に伸ばし、手首を支点に手掌を(鶴の首みたいに)下向きに屈曲させる振付 ③衣装の色

壮大なセットで繰り広げられるダンス・シーンは「巴里のアメリカ人」(51)のクライマックスや、「雨に唄えば」(52)の"Broadway Melody(Gotta Dance)"を彷彿とさせる。特にシルエットで踊るのは「巴里のアメリカ人」におけるヴィンセント・ミネリ監督(ライザ・ミネリのお父さん)お得意の演出法だ→動画。おまけにマネキン人形も登場する→動画。そもそも映画撮影所の舞台裏を描く(Backstage musical)という意味で「ラ・ラ・ランド」と「雨に唄えば」は共通しているしね。

Jazzman(ジャズ演奏家)と女優志願の女性との恋という「ラ・ラ・ランド」の基本プロットはマーティン・スコセッシ監督、ライザ・ミネリ&ロバート・デ・ニーロ主演「ニューヨーク・ニューヨーク」(77)を踏襲している。またダイナミックなクレーン撮影や夜間の照明はフランシス・フォード・コッポラ監督が製作費80億円をかけ、興行収入が2億円しか回収出来なかった壮大な失敗作(でも僕は案外好き)「ワン・フロム・ザ・ハート」(82)を意識しているのではないだろうか?因みにコッポラはこの作品で多額の負債を抱え、アメリカン・ゾートロープ(ゾエトロープ)・スタジオを手放す羽目になる。

ミュージカル映画は撮影前に歌を録音し、役者はそれに合わせて口パクで演技するのが従来の撮影方法であった。 しかし「ラ・ラ・ランド」の"Audition"や"City of Stars"でエマ・ストーンは撮影現場で実際に歌い、同時録音するというSinging Liveの手法が採られている。実はこれ、映画「レ・ミゼラブル」(2012)でトビー・フーパー監督が生み出した手法なのだ。

このように約80年に及ぶ、ミュージカル映画という夢の記憶が集積し、びっしり詰まっているのが「ラ・ラ・ランド」という作品の正体である。

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「君の名は。」IMAX(次世代レーザー)体験記

新海誠監督「君の名は。」が2週間限定でIMAX上映されることになり、その初日に109シネマズ大阪エキスポシティに観に行った。

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予告編で「ラ・ラ・ランド」が流れた。日本でもIMAXシアターで上映するんだ!ときめいた。

横幅26m、高さ18mという巨大スクリーンに4Kで映し出される「君の名は。」の映像は、とにかく没入感がヤバかった!特に圧倒されたのはユキちゃん先生(花澤香菜)が古文の授業で万葉集を教える場面。チョークを黒板に押し当てた時に粉が飛び散るのが鮮明に見えたのだ。びっくりした。

12.1chサラウンドの音響も極上。今まで聞こえなかった効果音(虫の声 etc.)もバッチリ。

ただちょっと残念だったのは今回のIMAX版で彗星の軌道の作画ミス(2回目のニュース映像から)が修正されているかも?と期待したのだが、そのままだった。以前プロデューサーの古澤佳寛さんにツイッターで質問したら、修正予定ですとご返事を頂いたのだが、DVD/Blu-ray発売時などまだ先の話みたい。

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クレメンス・ハーゲン&河村尚子/デュオ

1月8日(日)兵庫県立芸術文化センター小ホールへ。

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ハーゲン・クァルテットのメンバーであるクレメンス・ハーゲン(チェロ)と河村尚子(ピアノ)のデュオ・リサイタルを聴く。因みに河村は兵庫県西宮市生まれ。地元でのコンサートだ。

  • シューマン:5つの民族風の小品集
  • ベートーヴェン:チェロ・ソナタ 第2番
  • ラフマニノフ:チェロ・ソナタ
  • フランク:チェロ・ソナタ 第1楽章(アンコール)

ベートーヴェンとラフマニノフのソナタはどちらもト短調で調性が同じ。

ハーゲンのチェロは伸びやかに歌い、雄弁であると同時にキレがある。

ベートーヴェンでふたりは生を謳歌する。第1楽章の序奏は厳格な雰囲気で開始されるが、主部に入るやいなや感情が迸る。ピアノは力強く弾け、だが軽過ぎない。いい塩梅だ。

ラフマニノフのソナタは霧が立ち込めて視界が効かない、あるいは粉雪が舞う情景を連想させる。何とも幻想的な雰囲気だ。僕はトルストイの小説「アンナ・カレーニナ」(1877年出版)のことを想い出した(駅での轢死場面)。

因みにラフマニノフは交響曲第1番の初演が惨憺たる失敗で大ブーイングを浴び、神経衰弱に陥る。そこで友人の仲介もあり、1899年に敬愛するトルストイの自宅を訪ね自作の歌曲「運命」を披露した(しかしここでも「誰がこんな曲を聴きたいと思うかね?」と老作家の不興を買い、5日間寝込むことになる)。

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夢と狂気のミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」

ミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」(公式サイト→こちら)はゴールデン・グローブ受賞で史上最多の7部門(ミュージカル作品賞・主演男優賞・主演女優賞・監督賞・脚本賞・作曲賞・歌曲賞)を受賞した。アカデミー賞でも作品・監督賞で「ムーンライト」と一騎打ちの模様となっている(作曲・歌曲賞受賞は300%確実)。

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ミシェル・ルグランが作曲した映画「ロシュフォールの恋人たち」(ジャック・ドゥミ監督)の音楽を彷彿とさせる冒頭のナンバー"Another Day of Sun"(歌詞付き試聴はこちら)にはinsaneという言葉が用いられ、後半の"Audition"(歌詞付き試聴はこちら)ではmadnesscrazyが登場する。これらはすべて日本語で狂気を意味する。ついでながら最高に可笑しかったゴールデン・グローブ賞授賞式オープニングに於ける「ラ・ラ・ランド」のパロディをご紹介しよう→こちら

映画スターを目指してオーディションに落ちまくりながら映画スタジオのカフェで働くミア(エマ・ストーン)は"Audition"で「些かの狂気が新たな色彩を見出すための重要な鍵よ。それは私達をどこへ連れて行ってくれるか判らないけれど、でもだからこそ必要なものなの」と歌う。夢と狂気ーこれが「ラ・ラ・ランド」の肝(きも)である。

そもそもLa La LandのLAはハリウッドのあるロサンゼルス(Los Angeles)のことを指し、【あっちの世界/あの世/我を忘れた陶酔境】を意味する言葉である(こちらのブログを参照のこと)。

"Another Day of Sun"の最後は何かに取り憑かれたように「たとえ(オーディションに落ちて)失望させられたとしても、次の朝には必ずまた日が昇る」と合唱が執拗に繰り返す。正に狂気が疾走するのだ!

僕はこの歌を聴きながら、あるアイドルの発言を想い出した。

高橋みなみはAKB48選抜総選挙のスピーチで「努力は必ず報われる。私の人生を持って証明してみせます!」と言い、物議を醸した。

AKB48のオープニングメンバーオーディションの応募総数は7924名、最終合格者は20名だった。競争倍率は396倍。つまり高橋みなみにとって「努力は必ず報われる」は真実であったが、彼女1人に対してその影で395人が涙をのんだことになり、この金言が当てはまるのはたった0.25%に過ぎない。さらに最終合格者のうち、シングルの選抜メンバーに選ばれたのはごく一握りであり、「努力が報われた」女の子はさらにさらに少なくなる。

オリンピックの金メダリストも同じようなことを言ったりするが、それこそオリンピックで金メダルを受賞できる確率は天文学的に少ないだろう。では日本代表に選ばれなかったアスリートたちは努力を怠っていたのか?そんな筈はない。

つまり「努力は必ず報われる」のは勝者の理論であり、生まれ持った資質や運を持たぬ我々大半の人間にとって、決して真理ではないのである。

脚本家・山田太一がいいことを言っている→「頑張れば夢はかなう」というのは幻想、傲慢(日経ビジネス アソシエ)

を持つことは自由であり、誰しも有する権利である。しかしの実現に向けてその光(Stars)を追い続けるには狂気が必要であり、凡人は諦めが肝心だ。そのことを「ラ・ラ・ランド」は私たちに語りかけてくるのである。

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ミュージカル「ミス・サイゴン」 2017

1月1日(元旦)と7日(土)に梅田芸術劇場で「ミス・サイゴン」を観劇した。過去の観劇歴や作品紹介、新旧演出の違いについては下記事に詳しく書いたのでご参照あれ。

結局1992年帝劇初演以降、トータルでこのミュージカルを9回観たことになる。長年の付き合いなので、亡くなった関係者たちのことを観劇中に想うことが多くなった。キム役で渾身の演技を見せた本田美奈子、そして美しい日本語訳を紡いだ岩谷時子……。

さて元旦のキャストは、

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7日のキャストは、

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初演以来エンジニアを演じ続けてきた市村正親が今回でファイナルと銘打たれているのだが、ファンは誰も信じていない。宮﨑駿みたいな「引退詐欺」だと皆知っている。非難じゃないよ、許容して「またか」と温かい目で見守っているのだ。

市村には前科がある。2009年の「ラ・カージュ・オ・フォール」は【市村ザザ、ファイナルステージ!】とポスターに銘打たれていた→証拠写真はこちら。しかしその後も市村は「ラ・カージュ」の舞台に立ち続けている。

案の定、元旦公演で市村は「今回が最後ということになっているのですが(客席から笑い)、演ってみるとまだまだ行けそうだなと感じました(客席拍手)。再び皆様の前にエンジニアとして舞台に立つことが私の夢となりました」と挨拶した。お約束の展開である。

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いやもう、いっちゃん以外のエンジニアは考えられないから。命の続く限り演ってください。

キムは笹本玲奈が一番好き。彼女は強い感情を歌に乗せることが出来る。凄みがある。

キム・スハは初めて。彼女の日本語は問題なかった。感情表現では笹本が一枚上手だが、非常に弱音が美しい歌い方をする。どんなプロフィールなのか調べてみて仰天した。なんと本場ロンドンの「ミス・サイゴン」でもキム役を演じたそうである。韓国人としてウエストエンドで主役(ファーストカバー)を務めるのは史上初なのだとか(彼女のインタビュー記事はこちら)。2015年2月に日本で「ミス・サイゴン」のオーディションを受けた後、韓国に戻るとイギリス側から「ウェストエンドの同役に挑戦してみないか」との誘いがあったのだそう。

ジジ役の中野加奈子もウエストエンドで同役を務めたということで、圧巻の歌唱だった。

久しぶりにこの作品に接して、エンジニアはトリックスターの役割を担っているんだなと初めて理解した。トリックスターとは神話や伝説などで語られるいたずら者。その思いがけない働きによって旧秩序が破壊され、新しい創造が生じるきっかけとなることがある。しかし単なる破壊者として終わることもある。ギリシャ神話のプロメテウス、古事記のスサノオ、シェイクスピア「夏の夜の夢」の妖精パックがその代表例である。エンジニアはベトナム(アジア/仏教徒)とアメリカ(欧米諸国/キリスト教徒)を繋ぐ役割を果たす。そもそも彼はフランス人とベトナム人の混血であり、考えてみればキムとクリスの息子タムと似たような境遇であることは興味深い。一方、ミュージカル「エビータ」のチェや「エリザベート」のルキーニ、「キャバレー」のM.C.はあくまで司会進行役/狂言回しであり、トリックスターではない。しかし「ジーザス・クライスト・スーパースター」に登場するイスカリオテのユダはトリックスターだよね。だって彼の裏切りがあって初めて物語は完結し、キリスト教が創造されるのだから。

元旦公演は出演者によるステージ上での鏡開きと、その後ロビーでの振舞い酒があった。

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珠城りょう主演 宝塚月組「グランドホテル」「カルーセル輪舞曲(ロンド)」

1月2日、宝塚大劇場へ。ブロードウェイ・ミュージカル「グランドホテル」は実に24年ぶりの再演である。

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1993年月組版/2017年月組版の主要キャストを下記に示す。

  • オットー:涼風真世/美弥るりか
  • フラムシェン:麻乃佳世/早乙女 わかば(役替わり)
  • ラファエラ:天海祐希/暁 千星(役替わり)
  • フェリックス男爵:久世星佳/珠城りょう
  • グルーシンスカヤ:羽根知里/愛希れいか

太字が当時/現在のトップ男役&娘役である。

涼風真世のサヨナラ公演がどうして不評だったのかは下記事に解説した。

本作は後世に「グランドホテル形式」というジャンルを形成した元祖であり、その本質は「主役不在の群像劇」である。それを宝塚歌劇バージョンとしてトップ男役と娘役を目立たせようというのはそもそも無理がある。しかし初演版の「余命幾ばくもないユダヤ人会計士」オットーよりは、「借金まみれのジゴロ」フェリックス男爵を主役に据える方がよほどしっくり来る。故に今回の潤色/改変は大成功と言えるだろう。

また昨年観たトム・サザーランド演出版は舞台装置が地味で、「ベルリンの超一流ホテル」というゴージャスな雰囲気が皆無だった。ところが宝塚版は人数が多いし華やかで申し分なし。オリジナル演出・振付のトミー・チューンは今回、「特別監修」ということでどこまでが彼の功績か不明だが(宝塚版の演出は岡田敬二、生田大和)時にギリシャ古代劇場の観客のような役割も果たす群舞の扱いが卓越していた。映画も何回も観たし十分知っているお話なのに、最後はジーンと感動した。是非また観たい!

出演者で突出して良かったのが愛希れいか。兎に角、踊れる娘役なのでロシアのバレリーナという設定がピッタリ。正にはまり役である。

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レビューの「カルーセル輪舞曲(ロンド)」についてだが、【モン・パリ誕生90周年】と銘打ちながら、「どこがパリやねん!」とズッコケた。フランスの雰囲気が皆無。ニューヨーク、メキシコ、ブラジル、砂漠(シルクロード)と巡り、「80日間世界一周」というタイトルこそ相応しいのではないかと想った(実際にビクター・ヤングが作曲した同名曲が使用されている)。特に娘役にブラジルの国旗を振らせるダサい演出は一体何事??トップ・スターが背負う緑色の蛾みたいな羽も気持ち悪い。あと冒頭から登場する回転木馬が全く生かされていない。「回るよ回る、世界は回る」という意味だけ?それじゃあ幼稚園のお遊戯会レベルだ。稲葉大地、全然ダメやん!もっとロジャース&ハマースタイン IIのコンビが「回転木馬(Carousel)」に込めた寓意を真剣に勉強すべきだ。

宝塚史上、下から数えた方が早いお粗末なショーだった。こんなもの観せられるくらいなら、「グランドホテル」初演の時にトミー・チューンが演出した「BROADWAY BOYS」の再演を観たかった。

珠城りょうについて。ファンの人には申し訳ないのだが、僕には「おばさん顔」に見える。格好いいとも想わないし好みじゃない。歌については龍真咲レベル?つまり大したことない。現在の月組の問題点は「オッ、これは!」と耳をそばだてるような美声の男役が(2,3,4番手にも)いないということだ。結局、一番光り輝いているのは娘役の愛希れいかであり、歌劇団としてはそんなんでええのん?

最後に。ブロードウェイ・ミュージカルということもあり1993年月組版は一切映像記録が残っていないのだが、2017年版はDVD/Blu-rayがちゃんと発売できるよう、ややこしい版権問題をクリアしたのだろうか?

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