「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」(IMAX 3D)あるいは、イノさんとクロさんのこと。
評価:A+
これはフォースという特別な力を持つ「選ばれし者」(=スカイウォーカー一家)ではなく、「ならず者」「ごろつき」( =rogue )たちが希望を繋ぐ物語である。正に最後は希望(=設計図という名のバトン)を次から次へと手渡ししていく。ゴール地点は言うまでもなくエピソード4/新たなる希望(New Hope)だ。そこで初めて「スター・ウォーズ」のテーマが鳴り響き、未曾有の感動へと観客を誘う。実に鮮やか!
「スターウォーズ エピソード5/帝国の逆襲」惑星ホスでの戦いで【ローグ中隊】というのが登場するが、その名前のいわれが本作であるとも言える。
ドニー・イェンが座頭市(またはドン・キホーテ)、チアン・ウェンがその相棒(サンチョ・パンサ)役で、中国の役者を起用しているのは今や米国に次ぐ巨大な市場となった中国の観客への目配せだろう(エピソード4でジョージ・ルーカスはオビ=ワン・ケノービ役を三船敏郎にオファーしたが、断られている)。それにしてもドニー・イェンの殺陣は凄い!因みにマット・デイモン主演、リドリー・スコット監督「オデッセイ」では唐突に現れた中国人が主人公救出に貢献している。
「エピソード4」が黒澤明監督(クロさん)の「隠し砦の三悪人」をベースにしていることは誰もが知っているが、一方ローグ・ワンの主要メンバーはドロイドのK-2SOを含め六人。さらに反乱軍戦士ソウ・ゲレラを加えると「七人の侍」になる。
ヒロイン・ジンの父ゲイレン・アーソはデス・スターという強力な破壊兵器を開発したことを悔いている。彼の人物像は明らかに原子力爆弾を開発したロバート・オッペンハイマーに重ねられている。そして原爆や水爆を彷彿とさせる描写があるのだが、考えてみたら水爆実験から生まれるのがゴジラで、ギャレス・エドワーズ監督はハリウッド版「GODZILLA ゴジラ」(2014)年を撮っているんだよね。で初代「ゴジラ」の監督が本多猪四郎(イノさん)。イノさんとクロさんは朋友で、イノさんはクロさんの「影武者」で監督部チーフ、「乱」「夢」「八月の狂詩曲」「まあだだよ」で演出補佐を務めている。そして奇しくも初代「ゴジラ」と「七人の侍」の公開年はどちらも1954年。全てが繋がっている。
「ローグ・ワン」を一言で評すなら第二次世界大戦映画だ。ナチス・ドイツ占領下のフランスにおけるレジスタンス(「パリは燃えているか?」)に始まり、オッペンハイマーの苦悩となり、最後ビーチでのバトルはノルマンディー上陸作戦(「史上最大の作戦」「プライベート・ライアン」)だ。
デス・スターの指揮官を務めたターキン総督が出てきて、亡くなったピーター・カッシングそっくりだな!とびっくりしたのだが、どうやらガイ・ヘンリーという役者が演じ、後で顔をCGで合成したらしい。現在のテクノロジー、恐るべし(ただ声は明らかに別人だった)。最後のカットにも度肝を抜かれた(ネタバレになるからここには書かない)。
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