Film Musicへの扉を開いてくれたスタンリー・ブラックのことを語ろう。
僕が映画音楽に目覚めたのは小学校5年生の頃。ズービン・メータ/ロサンゼルス・フィルの演奏する「スター・ウォーズ」組曲をFMで聴いた時だった。第一作「エピソード4」公開前の話である。
高校生の頃購入したLPレコードに「フィルム・スペクタキュラー(FILM SPECTACULAR)」シリーズがあった。廉価版で確か1枚1,500円くらいだったと記憶している。
スタンリー・ブラック/ロンドン祝祭管弦楽団・合唱団(London Festival Orchestra & Chorus)の演奏で、効果音も入り、なにより録音が抜群に良かった。
【フェイズ(phase)4】という1963年にデッカ・アメリカが開発した録音方式で、20チャンネルのマルチ・マイク・システムで収録した音を特別なミキサーを通してアンペックスの4トラック・レコーダーで録音、2チャンネルのステレオにミックスダウンするというものだった。ストコフスキーの一連の録音(シェエラザード、チャイコフスキー5番、J.S.バッハ編曲集)やバーナード・ハーマンの自作自演(北北西に進路を取れ、サイコ、めまい)、フィードラー/ボストン・ポップスのアルバムなどに採用されている。
ロンドン・フェスティバル管弦楽団は録音のために特別編成されたオーケストラらしい(似た例としてコロンビア交響楽団やRCAビクター交響楽団がある)。実力は折り紙付きで、ロンドン交響楽団やロンドン・フィルと同等。恐らくそれら楽員たちが参加していたのだと想われる。少なくともハレ管弦楽団、フルハーモニア管弦楽団より上。
編曲も見事で、格調高いシンフォニックな映画音楽を堪能した。
特に鮮烈な印象を受けたのがエーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルトが作曲した「シー・ホーク」組曲。兎に角冒頭トランペット・ソロが勇壮で格好いい!「スター・ウォーズ」の作曲に際し、ジョン・ウィリアムズがコルンゴルトの多大な影響を受けていることをそれで知った(後に聴いたコルンゴルト「嵐の青春(King's Row)」のテーマは「スター・ウォーズ」と瓜二つだった)。
他にフィルム・スペクタキュラー・シリーズで大のお気に入りになった映画音楽は、
- ハインツ・プロヴォスト:「間奏曲」←独奏ヴァイオリンとピアノのみ。
I・バーグマン主演のスウェーデン映画及びハリウッド・リメイク版「別離」に流れた。 - マックス・スタイナー:「風と共に去りぬ」「カサブランカ」
- ウィリアム・ウォルトン:「スピットファイア」〜前奏曲とフーガ
- アーネスト・ゴールド:「栄光への脱出」
- ジェローム・モロス:「大いなる西部」
- ディミトリー・ティオムキン:「アラモ」←合唱が素晴らしい!
- ロン・グッドウィン:「633爆撃隊 」←スカッとする!
このフィルム・スペクタキュラー・シリーズのごく一部は現在、ナクソス・ミュージック・ライブラリー NML でも聴くことが出来る。→こちら!
大学生になりCD時代となり、そこで出会ったのがRCAレコードからリリースされていたチャールズ・ゲルハルト/ナショナル・フィルハーモニック管弦楽団の"Classic Film Scores"シリーズである。ナショナル・フィルも録音専用の臨時編成で、ロンドン5大オーケストラの首席奏者らが集められた。こちらの録音も優れものだった(ドルビー・サラウンド)。
衝撃的だったのがエーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト作品集(「シー・ホーク」含む)。プロデューサーはジョージ・コルンゴルトで1928年ウィーン生まれ。言うまでもなくエーリヒの息子である。ジョージは晩年にジョン・ウィリアムズ/ボストン・ポップス・オーケストラの録音プロデューサーも務めている。
スタンリー・ブラックもチャールズ・ゲルハルトも棒捌きが巧みで、いずれもスマートでシャープ。洗練されている。彼ら以上の解釈に今までお目にかかったことはない。またゲルハルト/ナショナル・フィルにはハワード・ハンソン:交響曲第2番「ロマンティック」の超名演もある。是非機会があれば彼らの演奏を耳にして頂きたいものである。
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